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【東京五輪】LGBTの交流や情報発信の拠点「プライドハウス」設置へ

 work with Prideの運営団体でもある認定NPO法人グッド・エイジング・エールズが、2020年東京オリンピック・パラリンピックの期間中に、性的マイノリティの交流や情報発信の拠点となる「プライドハウス」を設置する計画であることがニュースになりました。

 「プライドハウス」とは、オリンピックをはじめとする国際的なスポーツ大会の期間中に、性的マイノリティに関する理解を広げるための情報を提供したり、LGBT+アライの選手や家族、大会観戦のために訪れたLGBTの観光客などが安心して過ごすことのできる空間を提供するための施設(コミュニティスペース)です。
 
 2010年バンクーバー五輪で初めて設置され、以降も、2012年UEFAワルシャワ大会、2012年ロンドン五輪、2014年FIFAブラジル大会(W杯)、2014年グラスゴーでのコモンウェルス(イギリス連邦に属する国々のスポーツ大会)、2014FIFA女子W杯カナダ、2015年トロントでのパンナム・ゲームズ(南北アメリカ大陸の国々のスポーツ大会)、昨年のリオ五輪など、大型の国際スポーツ大会の開催にあわせて、地元のNGOやNPOが主体となり「プライドハウス」の設立・運営がなされています。(お気づきの方もいらっしゃると思いますが、2014年ソチ五輪では「プライドハウス」が設けられませんでした…)
 
 グッド・エイジング・エールズは、過去および今後の「プライドハウス」設立運営団体から成るネットワーク「プライドハウス・インターナショナル」が2014年パンナム・ゲームズinトロントに合わせて開催した国際会議に参加し、同ネットワークや加盟団体との協議や意見交換を重ね、今回の設立計画の発表に至りました。

 今回設立が計画されている「プライドハウス東京」では、セクシュアリティを問わずあらゆる人が安心して過ごせる場所を提供すること(施設機能)を中心に、日本のLGBTに関する地域情報や文化情報を提供(情報機能)、LGBTとスポーツという視点での課題やその解決方法を学ぶことができる(教育機能)、地域の住民や来訪者を問わず参加できるスポーツイベント等を実施(参加機能)という4つの機能を提供することを目指しています。
 
 今後は、「プライドハウス東京」の詳細計画の検討に向けた意見を収集するために、2017年夏をめどに有識者によるアドバイザリー・ボードを開催するとともに、「プライドハウス東京」に関する最新情報をFacebookページにて提供していきます。あわせて、グッド・エイジング・エールズとともに2020年に向けてLGBTとスポーツに関する世の中の意識や機運を高めていくことを目指し、様々なイベントやワークショップ等を協力して企画運営する「プライドハウス東京ムーブメント」の賛同団体を募ります。

 なお、「プライドハウス東京」設立準備に向けたプロジェクトの代表は認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんが務めます(松中さんは、「プライドハウス」を大会公認の施設として設置するために、16年間勤務した電通を今春退社しました。当初は二足のわらじでこなすことも考えましたが、「LGBTのことをもっと多くの人に知ってもらいたい」という気持ちで、専任で携わることを決意したそうです)。また、今後、法人内に事務局を設置し、同NPO法人の町野正和さんが事務局長を務めます。現時点で「プライドハウス東京」を設立する場所や期間については未定です。

 オリンピックでLGBTのことが大々的にクローズアップされたのは2014年ソチ冬季大会が初めてでした。ロシアの反同性愛法への抗議として、欧米の首脳がこぞって開会式を欠席するという前代未聞の事態を引き起こし、LGBTを差別するオリンピックなどありえないという認識が広がりました。結果、多様性の尊重を掲げる国際オリンピック委員会(IOC)は五輪憲章に「性的指向による差別の禁止」を明記することを決めました。また、リオ五輪の直前、IOCがトランスジェンダー選手の性別変更に関する基準を緩和する新たなガイドライン(指針)を適用することを決めました。昨年のリオ五輪は、史上最高の53名もの選手がカミングアウトして試合に臨み、金メダルを獲った選手もいました。

 そして東京五輪でも、大会組織委員会が定めた大会ビジョンの基本コンセプトの一つに「多様性と調和」が謳われ(性的指向と明記されています)、大会運営に関わる企業が守るべき指針(持続可能性に配慮した調達コード)にLGBTの権利尊重が明記されました
 松中さんは今年を大会応援プログラムとして公認してもらうための土台作りの年と位置づけ、関係者の理解を広める活動に取り組んでいます。すでに幹部や職員向けの勉強会を4回実施したほか、今後はボランティアの方に配布する啓発冊子を作製する計画です。松中さんは「このポジションは運命。東京五輪をきっかけにスポーツの世界がもっとオープンになってくれたら。後世へのレガシー(遺産)として残したい」と語っています。
 
 
参考記事:
東京五輪 LGBT拠点を設置…NPO計画、国内初の試み(毎日新聞 共同通信)
Moment’17夏 東京五輪まで3年/4 多様性 LGBT交流の場を 公認「ハウス」設置へ脱サラ(毎日新聞)

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