REVIEW

ドラマ『ファースト・デイ わたしはハナ!』

トランス女子生徒の中学生活を描いたドラマ『ファースト・デイ わたしはハナ!』がEテレで放送スタート

 中学に上がるのを機に、本来の自分のジェンダーである女の子として登校することを決意するハナの中学生活を描いた海外ドラマ『ファースト・デイ わたしはハナ!』が、6/4からEテレで放送されます。全4回なので、ちょうどプライド月間である6月に放送されることになります。
 第1話のレビューをお届けします。(後藤純一)

<あらすじ>
ハナはトランスジェンダー。小学校まではトーマスという名前で男の子として生活していた。日本の中学校にあたる7年生に進学するのを機に、ハナとして生きる決意をした。学校はハナを女の子として受け入れるというけれど「トイレは“だれでもトイレ”を使うこと」などの制約付き。ハナ自身も「同級生に本当のことを知られたらどうしよう?」と不安を抱えながら登校する。友達もできてすべてが順調に進んでいたとき、なんと小学校時代のいじめっ子が同じ学校に! ハナは自分らしい学校生活を送れるだろうか…?

 家族は全面的にサポートしてくれるものの、学校側は女子トイレを使わせてくれず、男子に「なんで“だれでもトイレ”使ってるの?」と聞かれ、おまけに小学校時代にハナをいじめていた生徒が学校に現れ、「トム」という以前の名前を…トランスジェンダーだとバレたらどうしよう…と恐怖におののくハナ。その苦しみが痛いほど伝わってきます。ただトランスジェンダーとして生まれたというだけで、12、13歳のいたいけな少女がどうしてこんな目にあわなければいけないのか…と、胸が苦しくなりました。

 ハナは幸い、いい家族に恵まれていますが(もし家族のサポートがなければ、絶望しかないでしょうね…)、それだけではトランス女子が、女子として安全に学校生活を送ることはできず、家族と学校、保護者など、大人たちみんながトランスジェンダーのことを理解し、支援の体制をつくっていかなければ難しいのだろうな、と思いました。
 そしてこのドラマの物語は、学校を職場に置き換えてみれば、トランス女性がどのような困難に直面し、どんな思いで職場に通っているのか(トイレを使っているのか)ということを、とてもリアルに伝えてくれるものだと思います。
 
 杉山文野さんは5月30日のLGBT差別抗議デモで、「トランス女性を取り巻く状況は深刻です。女性であり、トランスジェンダーであるというダブルマイノリティ。非常に傷つけられやすく、性暴力の被害もあるのに、まるで犯罪者であるかのように扱われてしまっています。この国の、トランスジェンダーに対する理解の低さは、絶望的です。生きる希望がありません」と(怒りで声をふるわせながら)語っていましたが、あのトランスジェンダー差別発言をした議員をはじめ、「"男"なのに「今日から女性です」などと言って女子トイレに入ってくる」などという誤った認識でトランス女性を攻撃している方全員に、このドラマを観てほしい、考え直してほしいと思いました。
 
 このドラマは2019年にオーストラリアで製作されたドラマで、自らもトランス女子であるイーヴィー・マクドナルドさんが主演をつとめています(素晴らしいです)
 日本では吹き替え版として放送されますが、イーヴィー・マクドナルドさんの声を担当するのが、いま話題の井手上漠さんです(声優初挑戦だそうですが、とても自然で、ハナのイメージにぴったりだと思います)

 
ファースト・デイ わたしはハナ!
<全4話>
Eテレ
6月4日(金)から毎週金曜19:25~19:50放送
※再放送はされないようなのですが、第1話も見逃し配信でご覧いただけます
 

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