REVIEW
職場のLGBT読本
2015年7月に刊行された、おそらく日本で初めての、企業の人事・ダイバーシティ担当の方向けのLGBT施策の解説書です。
2015年7月に刊行された、おそらく日本で初めての、企業の人事・ダイバーシティ担当の方向けのLGBT施策の解説書です。公務員試験対策書などを手がける実務教育出版が「企業でもLGBTへの取組みを」との趣旨に賛同して出版してくださいました。
2015年といえば渋谷区で同性パートナーシップ証明制度の条例が施行された年で(予想だにしていませんでした)、LGBTインクルーシブな職場環境の整備についての関心が急速に高まったなかで、たくさんの方が手に取って読んでくださったと思います。
正直、社内LGBTQ施策についての解説の部分については、村木真紀さんの新刊『虹色チェンジメーカー』のほうが新しいのですが、この『職場のLGBT読本』の特長は、L、G、B、Tの著名人のリストやLGBTQの歴史、動物界の同性愛や、なぜ人はそのように生まれるのかといったお話など、基礎知識の部分が(私が必要以上に張り切ったおかげで)とても充実しているという点です。LGBTQへの理解を深めるうえで、きっ興味深く読んでいただける部分になっていると思います。
また、渋谷区の条例以前に(また、PRIDE指標誕生以前に)社内LGBT施策に取り組んでいたパイオニア的な企業の方々へのインタビューが盛り込まれているところも読みどころです。世の中的にまださほどLGBTへの取組みの必要性が認知されていなかった時代に、ご担当者の方がどのような思いで取組みを始めたのか、どんな苦労があったのか、といったことが、生き生きとリアルに語られています。
部分的には最新の情報ではなくなっているにせよ、これを読むと基本的なことがよくわかる、「へええ」と思えるような知識がたくさん身に着く一冊ではありますので、もしまだお読みになっていない方は、ぜひ。
(後藤純一)
職場のLGBT読本 「ありのままの自分」で働ける環境を目指して
著者:柳沢正和、村木真紀、後藤純一
実務教育出版
2200円(税込)
目次
まえがき
第1章 LGBTについて理解を深めよう
第2章 LGBT当事者アンケートで見る職場環境の現状
第3章 LGBTが職場で抱える10の課題
第4章 先進的な企業の取り組み事例10選
第5章 職場環境整備における10のポイント
第6章 当事者やアライが語る自分らしく働ける社会
あとがき
- INDEX
- トランスジェンダーやDSDの人たちの包摂について考えるために今こそ読みたい『スポーツとLGBTQ+』
- 『トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら』
- 『トランスジェンダーと性別変更』
- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
- いま最も読まれるべき本:『トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』
- マイノリティを守るためには制度も大切だということを説く本:『差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 書評『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- 愛と差別と友情とLGBTQ+