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同性カップルが特定生殖補助医療法案の修正を要望「私たちを排除しないで」

 同性カップルの出産を罰則までつけて排除する差別的な法案が通りそうです特定生殖補助医療法案の同性カップル排除について問題提起する連載記事が朝日新聞に掲載といったニュースでもお伝えしていた問題含みの特定生殖補助医療法案が2月5日、自民、公明、維新、国民民主の4党によって参院に共同提出されました。これを受けて、提供精子で生まれた当事者や提供を受けた親、精子提供で子をさずかった女性カップルなどが9日夜、法案の修正を求める緊急記者会見を開きました。今国会に提出された法案は、生まれた子が出自を知るための手続きが不十分であることや、医療の対象を法律婚夫婦に限り、違反には罰則もつけられたことへの見直しを訴える声が相次ぎました。


 特定生殖補助医療法案は、第三者の精子や卵子を使った不妊治療などのルールを定めたものですが、精子や卵子を提供したドナーの情報は医療機関から報告を受けた国立成育医療研究センターが100年保管し、成人した子が請求すれば、身長や血液型、年齢など、ドナーが特定されない情報を一律に開示する一方、名前など特定につながる情報の開示にはドナーの同意が必要になります。提供精子で生まれた石塚幸子さんは「生まれた人が(出自を)知りたいと思っても、提供者に決定権があるというところが最も大きな問題だ」と指摘し、「他の人に決定権があることを、どうして“子どもの権利が保障された”と言えるのでしょうか」と訴えました。
 また、事実婚夫婦や同性カップル、独身女性は対象外とされ、ルールに違反した医療機関や個人に対して拘禁刑や罰金などの罰則が設けられています。同性パートナーがいて、精子提供を受けて妊娠中の女性は会見で「法が成立すれば子どもを生涯持てなくなると不安に思い、昨年から妊活を始めた。全ての女性の生殖にまつわる権利を侵害する法案ではないか。生まれてくる子どもたちが偏見や差別の目にさらされないよう願います」と訴えました。
 東京都北区議会議員のうすい愛子さんは、レズビアンであることをカムアウトしたうえで、第三者の精子提供を受けて双子を授かったと、「この法案ができていたら出会えなかった子たちだなと、いま二人と一緒にいてよく考えています」と涙ぐみながら語りました。「自分の生まれてきた子どもたちが、禁止された法案のもとで生まれてきたことをずっと抱えながら生きさせてしまうのかな。いま、この法案が提出されたことに悲しみでいっぱいです」
 闘病しながら妊活中の事実婚女性は「まずは法案を通して、後で修正すればいいと思う人もいるかもしれないが、私は治療の合間のわずかな期間しか妊娠できない。後で法律が修正されたとしても、二度とチャンスは戻ってこない」と訴えました。
 自身が精子提供を受けて出産した戸井田かおりさんは、今の法案が通ってしまうと、女性が妊娠可能な場合でも精子提供を受けられない人も出てくる、「“社会的不妊”とされてしまう」と強く非難し、当事者の声を聞いたうえで法案を作るべきだと訴えました。

 松岡宗嗣さんが会見の模様をダイジェストした動画を上げています。ご覧になってみてください。 

 

 危機感を覚える方たちによって、この特定生殖補助医療法案の修正を求める署名が立ち上げられました。①事実婚や同性カップルなど婚姻状態にない人が安心して特定生殖補助医療を受けることが国内外において実質禁止されるだけでなく、医療機関や患者本人に一部罰則の適用も予定されている点、②子どもの出自を知る権利が著しく制限されており、子どもの福祉の観点から改善が必要である点を重大な問題だとして見直しを求めるものです。
「特定生殖補助医療とは、第三者から提供された精子・卵子を用いて、病院で精子を子宮に注入する「人工授精」や、体外で精子と卵子を受精させた受精卵を子宮に戻す「体外受精」などをさします。現在の法案では、婚姻しているカップル以外の人が特定生殖補助医療を使うことは規制され、医療を提供した病院に刑罰が科せられます。また有料の精子バンクなどを使った場合、医療を利用した女性にも刑罰が科せられる内容となっています。
 私たちはこのような罰則規制は問題であると考えます。子どもがほしいと強く願い、医療機関に助けてもらえなければ、さらに危険な方法(SNSなど)で第三者の精子を入手しようと考え、実行し、トラブルに巻き込まれる人が出てくるのではないかと考えます。産む人や生まれてくる子どもの安全を考える上でも、この法案にある罰則規定は行き過ぎです。
 このような厳しい生殖医療規制が存在する国・地域では、医療のアンダーグラウンド化や、海外への生殖ツーリズムが問題になっています(イタリアの例、香港の例)。
 また、ある属性の人(例えば事実婚)で区切り、子どもを持つべきでないと法律で罰則までつけること自体には倫理的問題があるのではないでしょうか。いつ、誰と、結婚するのかしないのか、子どもを持つならばいつ誰とどのような方法で子どもを持つのかを自分自身で選択できること。これに関して必要な情報や医療サービスを受けられ、差別を受けないことは、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)の一部です。
 日本政府はSRHRの推進を定める1994年のカイロ宣言、1995年の北京行動綱領、持続可能な開発目標(SDGs)など国連で採択された誓約を支持しています。婚姻の有無、性的指向を理由に、性と生殖に関する医療へのアクセスに障壁を設けたり、あまつさえ犯罪化することは、重大なSRHRの侵害です」
 

参考記事:
「出自を知る権利」法案 “保障不十分”当事者ら修正求める(日テレNEWS)
https://news.ntv.co.jp/category/society/eec6f183dc9e4c35a6e9a8ddbc07a139
生殖法案、当事者が修正要望 「出自を知る権利保障を」(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025022501023
「出自知る権利」保障を 特定生殖補助医療、法案修正求めイベント(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250410/k00/00m/040/053000c
出自を知る権利は?法律婚夫婦だけ? 第三者の精子・卵子提供の不妊治療に関する法案、見直しを求める集会(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/397598
「私たちを排除しないで」 特定生殖補助医療法案に反対の声を上げる同性カップルたち(医療記者・岩永直子のニュース)
https://naokoiwanaga.theletter.jp/posts/9a2e57a0-15b1-11f0-add8-459d6d798d13

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