NEWS
米下院で公聴会の議長がトランス女性の議員を男性扱いして批判されました
米連邦下院議会の公聴会で、トランスジェンダーのサラ・マクブライド下院議員に対して議長がミスジェンダリングを行ない、他の議員から訂正を求められ、突然公聴会を終了させるという騒動がありました。
サラ・マクブライド氏はデラウェア州選出の下院議員(民主党)で、米国史上初のトランスジェンダーの連邦議会議員となった方です。
3月12日、下院小委員会の公聴会で議長を務めたキース・セルフ下院議員(共和党)は、トランス女性であるマクブライド下院議員に発言を求める際、「ミスター・マクブライド」と呼びました。マクブライド氏はセルフ氏の発言に一瞬顔をしかめたものの、間髪入れずに「ありがとうございます、マダム・チェア(女性の議長)」と返答し、発言を始めました。
議長によるミスジェンダリングを問題に感じたウィリアム・キーティング下院議員(民主党)は即座に「委員長、もう一度紹介をやり直していただけますか?」とセルフ議長に求めました。するとセルフ議長は「下院の議場では基準が定められており、私は単に」と説明を始め、キーティング議員は「その基準とはなんでしょうか?」と尋ねました。セルフ議長は「いいでしょう」と述べて改めてマクブライド議員を紹介したものの、「デラウェア州選出のミスター・マクブライド下院議員」と、ミスジェンダリングを繰り返しました。キーティング議員は「非常に不適切です」と強く非難しました。「あなたには良識がないのですか? 私はあなたのことを多少なりとも理解してきたつもりですが、適切ではありません」
セルフ議長はその後も会議を続ける意向を示したものの、キーティング議員は「正式に選ばれた下院議員を正しく紹介しない限り、私は続けることはできません」と改めて訂正を要求しました。するとセルフ議長は小槌を叩いて公聴会の終了を宣言し、キーティング議員はノートを勢いよく閉じて席から立ち去りました。
セルフ議員は公聴会の後、会議の動画を紹介するXの投稿をリポストして「アメリカ合衆国が公式に認める性別は男性と女性の2つだけだ」と書き込みました。
メアリー・ミラー下院議員(共和党)もこれに同調し、マクブライド氏のデッドネームを使ったうえで「神が定めてトランプ大統領が宣言した通り、性別は2つしかない――男性と女性だ!」と投稿、セルフ議員はこの投稿もリポストしています。
このことからも、セルフ議長の言う「基準」とは、トランプ大統領が就任初日に署名した大統領令に基づいていることが窺えます。先月には、ミラー議員がマクブライド議員に対して「デラウェア州出身の紳士」と呼ぶミスジェンダリングも起きていました。
(なお、セルフ議員とミラー議員が「性別は男性と女性の2つだけだ」と言ってマクブライド氏を攻撃するのは頓珍漢と言わざるをえません。サラ・マクブライド氏の法的な性別は女性だからです)
SNSでは「声を上げたキーティング氏の行動がいいね」「マクブライド氏の『マダム』という切り返しがよかった」「議長がたとえジェンダー政策に反対だとしても、マクブライド氏が自認する呼称で呼ぶのは難しくないはずだ」などの声が上がっています。
委員会での応酬を受け、マクブライド議員も翌12日、自身のXに投稿し、「一部の同僚議員からどのような扱いを受けようとも、デラウェア州を代表する議員になれたことへの畏敬と感謝の念が薄れることはない」「ただ奉仕し、世界をより良い場所にするために努力したい」とコメントしました。
また14日には、マクブライド議員が共和党の議員に向けて「私のことを考えるのに費やす時間があるなら、全国の家庭の負担を減らす方法を考える時間に費やしてほしい」と訴え、称賛を集めました。
共和党は昨年11月、マクブライド氏の議員就任を見越して議事堂でトランスジェンダーが性自認に基づいたトイレを利用することを禁止するといういやがらせも行なっています。
数々のいやがらせにも負けず、一人の国会議員として民のための政治を全うしようとするマクブライド議員の姿勢、実に素晴らしいですね。
参考記事:
トランスジェンダー女性議員に「ミスター」…米議会で一騒動(中央日報)
https://japanese.joins.com/JArticle/331095
トランスジェンダー女性の議員をミスジェンダリング。米議員が批判され、公聴会を突然終了させる(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_67d22716e4b0554ff89b3fa6
トランス女性議員に「ミスター」。議長の言動に“ある人物”が反発。映像が物議(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/mjs538/sarah-mcbride-clapback-