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同性愛を理由に家族に殺されかけた北アフリカ男性が再び難民認定
同性愛者であるため家族に殺されかけたという北アフリカ出身の30代男性が日本での難民認定を求めて国を訴えた裁判の控訴審で、大阪高裁は一審に続き請求を認め、難民に該当すると判断しました。三木素子裁判長は判決理由で「帰国すれば同性愛者であることを理由に、拘束や訴追を受ける恐れがあると評価すべきだ」と述べました。
訴状などによると、原告の男性はイスラム教国出身で、刑法でも同性間の性行為が処罰対象とされています。
男性は2018年12月、家族に同性愛者であることを知られて父や弟から暴行を受け、10日間ほど自宅の物置部屋に監禁され、交際相手と逃げた先で家族の車にひかれそうになり、警察署で事情を話すと「刑務所に入れる」と脅されたといいます。「この国にはもういられない」と交際相手とともに日本に逃れ、2020年1月、大阪出入国在留管理局で難民申請したものの、2021年2月に「不認定」とされ、不服を申し立てても退けられました。2022年7月、不認定の決定の取消しを求めて提訴しました。
昨年7月に下された一審の大阪地裁の判決では、「男性の母国では同性による性行為が法律で処罰対象となっていて、警察官などからも差別や暴力を受ける恐れがある」「男性が帰国した場合、家族から危害を受ける現実的な恐れがあり、国の保護を受けられないことが認められるため、難民に該当する」として国の不認定処分が取り消されました。
しかしその後、国側が不服として控訴し、裁判が続くことになりました。
2月27日、大阪高裁は「同性愛者を理由に身柄拘束や訴追を受ける現実的な恐れがある」として、不認定処分を取り消した一審大阪地裁判決を支持し、国側の控訴を棄却しました。三木裁判長は、男性の出身国にはLGBTQを処罰する規定があり、実際に身柄拘束や訴追が行われていると指摘、警察による逮捕者も増加するなどしており、出身国の政府が「迫害を放置しているとの評価を免れない」と判断しました。
男性は高裁判決後、大阪市内で記者会見し「心身ともにしんどかった。普通の生活を送りたい」と語りました。
もし地裁の判決が覆されたら、彼の命はどうなっていたことか…無事に難民認定されて本当によかったです。
日本では2005年、死刑を怖れてイランから日本に逃れ、難民申請し、裁判で闘ったゲイのシェイダさんに対し、「同性愛者であることを黙っていれば生きていけるだろう」として強制送還を言い渡すという残酷な判決が下りました(幸い、シェイダさんは、第三国に出国し、強制送還を逃れました)
その後、2018年になってようやく、同性愛への迫害を理由にした初めての難民認定が出ました。
2023年にはウガンダから日本に逃れてきたレズビアンの30代女性が難民認定されました。
同年、難民認定のガイドラインが初めて策定され、性的マイノリティへの迫害も難民に該当しうると明記されました。日本の難民認定率は1%程度と低く、「審査が厳しすぎる」「手続きの公平性・透明性に問題があるのでは」と批判が強かったため、入管庁が国連難民高等弁務官事務所と意見交換するなどして、審査で考慮するポイントを整理した「難民該当性判断の手引」を策定したものです。難民条約は難民について「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団、政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあって他国に逃れた人」であると定義しています。策定されたガイドラインでは、迫害について「生命、身体、自由の侵害・抑圧、その他の人権の重大な侵害」を意味するとし、認定には「迫害を受ける現実的な危険が必要」だとされています。「特定の社会的集団」には性的マイノリティや、ジェンダーを理由として迫害を受けるおそれがある人も該当しうると記載されています。
参考記事:
同性愛迫害で再び難民認定 大阪高裁、北アフリカ男性(共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF279DU0X20C25A2000000/
高裁も難民不認定取り消し アフリカ北部の男性同性愛者 大阪(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025022701025