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海外で日本人と同性婚した方が「定住者」資格を求めた上告が退けられました

 海外で日本人と同性婚をしたのに一定期間の国内居住が認められる「定住者」※1の在留資格が得られなかったのは違法だなどとして、米国人男性のアンドリュー・ハイさんらが国に処分取消しや損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(堺徹裁判長)は20日、アンドリューさん側の上告を退ける決定をしました。「定住者」資格の請求を認めなかった一、二審判決が確定することになります。


 米国人のアンドリュー・ハイさんは、日本人のパートナー・康平さんと米国で結婚し、日本に来て暮らしていたものの、定住者や外国人どうしの同性婚の配偶者に認められる「特定活動」の在留資格が認められなかったため、国に在留資格の許可と賠償を求める訴えを起こしました。2022年9月30日、東京地裁(市原義孝裁判長)は、外国人どうしの同性婚なら配偶者に「特定活動」の在留資格を与えているのに、日本人と結婚した外国人配偶者には与えない国の運用は「憲法14条の平等原則の趣旨に反する」とし、「男性に特定活動の資格を認めなかったのは違法だった」と裁定しました。国の運用の違憲性を指摘した司法判断は初めてでした。一方、特定活動より永住資格に移行しやすい「定住者」資格などを求めた原告の訴えは却下されました。あくまでも「定住者」の資格を求めるハイさんは控訴しました。(詳細はこちら
 2023年3月10日には、東京出入国在留管理局が「特定活動」※2(1年)の在留資格を許可しました。一方が日本人の同性カップルで、パートナー関係を理由に在留を認めた事例は初めてです。ハイさんは「ほんの少しだけど安心した基盤ができた。最初の大きなステップだ」「将来、日本政府が政策として、私たちと同じような立場の人に在留資格を出す第一歩になってほしい」と語りました。(詳細はこちら
 定住者資格を求める訴えについて同年11月2日、二審の東京高裁(梅本圭一郎裁判長)は、「日本では同性カップルが男女の夫婦と同等の地位を社会生活上確立しているとはいえない」として憲法違反にはならないとの判断を示し、同性カップル側の控訴を棄却しました。お二人は上告することにしました。(詳細はこちら
 そして2025年2月20日、最高裁は上告を退ける決定をしました。
 
 
 以前は、日本人と外国人の同性カップルは、二人が結婚していようと、どれだけ長くつきあっていようと、(異性カップルであれば認められる)家族としての在留資格が一切認められませんでした。二人が日本で一緒に暮らすためには、外国籍の方が就労ビザを得て日本に居住できるようにし続けるしかありませんでした(体調を壊したりして働けなくなると、ビザが更新できず、国に帰らなくてはならず、二人が離れ離れに…)。それか、二人で海外に移住するしかありませんでした。
 アンドリューさんと康平さんは、外国人どうしの同性婚カップルには認められる「特定活動」ビザが、日本人と結婚した外国人配偶者に与えられないのは違憲だとの判決を引き出し、初めて「特定活動」での在留を認められたのです。残念ながら「定住者」の在留資格は得られませんでしたが、しかし、お二人は、日本人と外国人の同性カップルの在留資格について、歴史に残る素晴らしい前進を見せたのです。深く敬意を表します。
  

※1「定住者」は、「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」で、日系人やその配偶者、日本人や永住者の連れ子、日本人や永住者・定住者の6歳未満の養子、難民認定を受けた外国人、中国残留邦人やその親族など、人権や人道上の特別な理由がある場合に認められる在留資格です。留学生や就労系の在留資格のような「就労制限」はありません。

※2 外国人どうしで同性婚しているカップルで、片方が長期にわたって生活するための在留資格(ビザ)を保有していれば、配偶者に「特定活動(告示外)」の在留資格が与えられます。他の在留資格と異なり、一定の職種などが決まっていないため、個人の事情に応じて在留許可が認められます。



 
参考記事:
「定住者」認めぬ判断確定=同性婚米国人の上告退ける―最高裁(時事通信)
https://sp.m.jiji.com/article/show/3453724
米で同性婚「定住者」訴訟 敗訴確定(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250222/ddm/041/040/116000c

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