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【同性パートナーシップ証明制度】北海道厚岸町と千葉県鎌ケ谷市が4月から導入へ、その他全国の動きをお伝え
千葉県鎌ケ谷市の『広報かまがや』令和7年1月15日号の「ありのみ便り」というコーナーで、市が4月から新たに「パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度」を導入することが記されていました(素敵なコラムでした)
「この制度は、法的に婚姻が認められていない同性カップルと異性同士の事実婚カップルに対し、その子と親族も含め家族として生活していることを市が認め、証明書や証明カードを交付するものです。法的な効力はありませんが、同制度に対する理解が進めば、行政、民間双方でこれまで受けられなかったサービスが享受できるようになることが期待されます。具体例は、市営住宅の申し込み、被災証明書の発行、病院での付き添い・面会・手術の同意、住宅ローンの共同申し込み、携帯電話の家族割などが考えられます。
そして何より、双方の関係性について周囲が理解を深め尊重することが期待されます。特に、性のあり方は一人ひとり違いますが、違いを尊重することで性的マイノリティだけでなくすべての人が生きやすい社会につながるでしょう。
同様の制度はすでに全国450以上の自治体で導入されています。なぜ、このような制度が求められているのでしょうか。それはすべての人が平等で自分らしく生きられる社会をつくるためで、そのキーワードは「多様性」だと思います。
この社会は多様な人々から成り立っています。性のあり方だけでなく国籍、宗教、文化、習慣などみんな違います。人口約11万人のコンパクトな街、鎌ケ谷市も「多様性」の集まりです。例えば、外国籍の市民の方は約2400人います。市では多文化共生推進センター(かまがやワールドプラザ)を設け、通訳業務や多言語による情報発信などを行い、国籍にとらわれず文化を認め合い地域の一員として生活できるように努めています。
4月から始まる新制度は、主に性自認や性的指向にかかわらず平等に自分らしく生きられる街づくりを目指したものですが、今後も様々な分野で「多様性」の意識を高める施策は必要となるでしょう。
今、世界のあちこちで対立が危機的状況を生じさせています。寛容、柔軟、相互理解などに裏打ちされた「多様性」が忘れ去られているようです。
市では、4月の新制度施行に向け要綱、ガイドブック、ガイドラインの作成作業を進め、対応できる行政サービスを検討しています。
この機会に、改めて「多様性」について考えてみたいと思います。」
2月18日、市長の定例記者会見の場で、「性自認や性的指向にかかわらず誰もが平等に尊重され、自分らしさを発揮し活躍できる地域づくりを更に推進するため」としてあらためて「鎌ケ谷市パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度」の導入が発表されました。
制度の概要としてパートナーシップの定義、届出証明書や届出証明カードの交付について説明され、施行日が4月1日であることや、期待される効果の例と利用可能となる行政サービス(住民票の続柄を「縁故者」に変更できる、犯罪被害者等見舞金(遺族見舞金)の申請ができる、市営住宅の申込みができる、被災証明書を委任状不要で発行できる)、他の自治体との連携、今後の対応(市民への周知啓発、市職員向けガイドラインの作成)のことも発表されました。
千葉県といえば、2020年から「パートナーシップ宣誓制度」を、2023年には「ファミリーシップ制度」も導入している松戸市が、今月から「パートナーシップ制度自治体間連携ネットワーク」に加入し、連携する自治体が現在の県内13市から19府県152市町に飛躍的に増えたと報じられました。2月から「パートナーシップ・ファミリーシップ届け出制度」を開始した我孫子市や、4月に導入する鎌ケ谷市も4月から同ネットワークに加入するそうです。
松戸市の本郷谷健次市長は「制度利用者が転居した場合に生じる負担の軽減や、利便性が向上することで、宣誓制度が利用しやすい環境整備につながることを期待している。多様な生き方を認め合い、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を目指していく」とコメントしています。
なお、松戸市ではこれまでに64組128人(1月末現在)がパートナーシップ宣誓を行なったそうです。
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北海道厚岸町は20日、「パートナーシップ宣誓制度」を4月1日に導入する方針を示しました。法的効力はないものの、宣誓したカップルは町営住宅への入居や新規就農者への奨励金など10項目の行政サービスが利用可能になります。町は3月の定例町議会で関連する条例の改正案を提出することにしています。
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今月から「パートナーシップ宣誓制度」を導入した宮城県栗原市で、1組目となるカップルが宣誓を行なったそうです。
市によると、事前予約したカップルが今月中旬、市役所を訪れ、立ち会った市職員の前で宣誓し、宣誓書受領証とカード(パートナーシップ証明書&カード)を交付されました。プライバシー保護のため個室で行なわれたそうです。
市民協働課の菅原正広課長は「(宣誓者からは)こういう制度ができてありがたかったという話があった。さらに制度を活用してもらえるように広く周知していきたい」と話しました。
また、市の男女共同参画推進団体「くりはらチャレンジL」の千葉まし子会長は、「今まで声を出せなかった人がいたのだと思う。制度ができたことで、栗原市に移住を希望する人も出ている。誰もが住みやすい地域になればいい」と語ったそうです。
宮城県は長らく制度導入自治体ゼロ県でしたが、昨年12月の仙台市に続いてさっそく、県内2例目となる栗原市で導入されました。この勢いで他の市町村でも制度ができていくといいですね。
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茨城県の県広報紙『ひばり』2月号によると、茨城県は2019年に全国で初めて都道府県として「いばらきパートナーシップ宣誓制度」を導入しましたが、制度開始から5年が経ち、これまでに138組(2025年1月20日現在)のカップルが宣誓を行なったそうです。
茨城県は「パートナーシップ制度自治体間連携ネットワーク」に加入しており、171自治体と連携しています(2025年1月20日現在)
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毎日新聞によると、神奈川県の県西地域の2市8町(小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町)が13日、「パートナーシップ宣誓制度に係る相互利用に関する協定」を結びました。2市8町内で転入する際に、改めてパートナーシップ宣誓を行なう必要がなくなり、当事者の精神的・経済的な負担を軽減するねらいです。運用開始は4月1日からです。
小田原市の加藤憲一市長は「広域に連携して課題を解決するという意味で大変意義がある」と述べました。県内では県央地域などでも連携協定が締結されています。なお、「パートナーシップ制度自治体間連携ネットワーク」に加入しているのは相模原市と横須賀市だけのようです。
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2023年に「パートナーシップ宣誓制度」を導入した福井県鯖江市は、カップルの子や親も家族として公的に証明し、行政サービスを受けられるようにする「ファミリーシップ制度」を4月に導入します。税証明書の申請や入園申込み、園児の送迎などができるようになります。「ファミリーシップ制度」の導入は県内自治体で初めてだそうです。
市によると、公立丹南病院(鯖江市)で、家族に限られている面会なども認められるようになります。民間サービスが受けやすくなる利点もあります。
市ダイバーシティ推進・相談課は、婚姻関係にないカップルと家族が緊急時や日常生活での支援を受けづらい現状に触れて「誰もが人生のパートナーや大切な人と、安心して自分らしく暮らせるよう応援していきたい」としています。
なお、鯖江市は、一昨年からダイバーシティパレードを開催してきました。市がプライドイベントを「主催」するのは全国的にも珍しいことです(ピンクドット沖縄や、昨年の岡山のレインボーフェスタは市が「共催」しています)
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朝日新聞によると、和歌山県で「パートナーシップ宣誓制度」が始まって1年が経ちましたが、宣誓第1号となったカップルが9日、和歌山市内でトークイベントに出演し、パートナーシップ宣誓後に変わったこと、変わらないことについて語りました。
パンセクシュアル女性の高瀬和代さんとトランス男性の安西美樹さん(安西さんはレインボーフェスタ和歌山の代表もつとめています)は昨年2月にパートナーシップ宣誓を行ないました。安西さんは「親より密な関係なのに、他人からは『身内』と思われない」といい、パートナーシップ宣誓は「精神的な支えにはなった」と語りました。しかし法的に配偶者とは認められないまま…高瀬さんは「生きているうちに結婚できたらいいのにね。もう私ら初老やから」と語りました。
和歌山県では今年1月末時点で15組がパートナーシップ宣誓を行ないました。2月以降も申請があるそうです。
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2023年10月に「パートナーシップ宣誓制度」を導入した長崎県大村市では、制度が始まってから1年余りが経ちましたが、これまでに宣誓が受理されたカップルは7組になったそうです。大村市男女いきいき推進課の森誠一郎課長補佐は「宣誓したカップルからは公に認められた安心感で暮らしやすくなったという声を聞いている。まだ理解が進んでいないところもあるため、周知や啓発を進めていく」と話しました。
県内では2019年に長崎市で制度が最初に導入され、これまでに13組が宣誓を行なったほか、昨年12月からは時津町でも制度が始まりました。大村市の7組というのは、人口10万人に満たない市であることを考えると(ちなみに長崎市は39万人超)、決して少なくないと言えるでしょう。大村市はご存じのように昨年、全国で初めて同性カップルの住民票の続柄を事実婚と同じ表記(「夫(未届)」「妻(未届)」)に変えることを承認した自治体ですが、その当事者である松浦さん&藤山さんカップルは、本当は藤山さんの実家がある諫早市にUターンしたかったのですが、諫早市には制度がなく、二人の関係を証明する手立てがなくなってしまうということで、近くの大村市に引っ越したと明かしています。もしかしたらそういうふうにして大村市に移住して来られた方たちがほかにもいらっしゃるのかもしれないですね。
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南日本新聞の「性的少数者への理解 地域差くっきり…パートナーシップ制度の導入、鹿児島は全国ワースト6位 32都府県は100%なのに56.5%にとどまる」という記事によると、鹿児島県では指宿、鹿児島、日置、志布志、出水、鹿屋、南さつまの7市で制度が導入されていますが、人口カバー率は56.5%にとどまり全国で6番目に低いそうです。
具体的に導入の検討に至っていない鹿児島県内の自治体は30市町村に上ります。ある自治体の担当者は「制度を必要とする声が行政にまで届いておらず動きづらい」と明かしたそうです。
「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟弁護団共同代表の森あい弁護士(阿蘇法律事務所)は、「パートナーシップに法的拘束力はないものの、行政が存在を認めることが当事者を力づけることになる」「当事者はいないのではなく見えづらいだけ。共に生きる仲間として関心を持ってほしい」と話しています。
なお、同記事によると、最も人口カバー率が低いのは意外にも沖縄県(29.0%)で、次いで長崎県(40.6%)、宮城県(50.3%)、愛媛県(53.7%)、熊本県(55.3%)となっています(沖縄県は3月までに全県で導入する予定ですし、鹿児島県でも来年度中に薩摩川内市、いちき串木野市、屋久島町が制度を導入予定だそうですので、順位が入れ替わることになりそうです)
今年2月5日時点で全国1都1府30県で人口カバー率が100%に達していて、全国の人口カバー率は90.8%となっています。
2月12日には渋谷区が同性パートナーシップ証明書を発行する制度の創設を発表してセンセーションを巻き起こしてから10年を迎えました。これまでに全国の460を超える自治体が同性カップルも婚姻相当であると承認し、それぞれに検討を経て制度を導入してくれて、人口カバー率が9割を超えたということ、本当にありがたいことです。そのことが「結婚の自由をすべての人に」訴訟での素晴らしい判決にもつながっています。あらためて、制度実現のために声を上げてきたみなさんや、首長や議員を含めた自治体のみなさんに、感謝申し上げます。
参考記事:
同性パートナーシップ 県境越えて拡大 松戸市「自治体ネット」参加 我孫子、鎌ケ谷市も4月加入へ(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/385994
厚岸町、パートナー制度4月導入(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1125914/
宮城・栗原市のパートナーシップ制度 カップルが初の宣誓、支援団体歓迎(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20250217khn000081.html
パートナーシップ制度 相互利用 4月から 県西地域2市8町(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250217/ddl/k14/010/084000c
福井県内自治体初のファミリーシップ制度 鯖江市4月導入 性的少数者や事実婚のカップルの子ども、親を家族として証明(福井新聞)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/2241943
和歌山パートナーシップ宣誓の2人「生きているうちに結婚できたら」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/AST2B32Z7T2BPTIL002M.html
性的少数者への理解 地域差くっきり…パートナーシップ制度の導入、鹿児島は全国ワースト6位 32都府県は100%なのに56.5%にとどまる(南日本新聞)
https://373news.com/news/local/detail/208844/