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ストーンウォール国定史跡のサイトから「T」と「Q」が削除され、抗議デモが行なわれました
米国立公園局が14日、ストーンウォール国定史跡の公式サイトの説明文中のLGBTQから「T」と「Q」を削除して「LGB」にしたことから、「ストーンウォール・イン」の前で抗議デモが行なわれました。トランスジェンダーやクィアを抹消し、LGBTQコミュニティを分断しようとする動きに抗し、ストーンウォール暴動とそれに続くゲイ解放運動はトランスの人々がいなかったらありえなかったし、トランスジェンダーやクィアはいつの時代も、今もここにいると訴えるものです。
ストーンウォール国定史跡はオバマ大統領がLGBTQコミュニティへの敬意を表して2016年に指定したもので、ゲイ解放運動の端緒となった1969年の「ストーンウォール暴動」の舞台であるニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」と、その向かいの(暴動後に集会が行なわれ、ゲイ解放戦線の立ち上げのきっかけとなった)クリストファー・パークの周辺が国定史跡(ナショナル・モニュメント)として、自由の女神像やグランドキャニオンなどと並び、国立公園局などが管理・保全していくこととなりました。
トランプ大統領が「性別は男性と女性の二つしかない」とする大統領令を出したことを受けて、米国の連邦政府機関である国定史跡を管理する国立公園局は、そのストーンウォール国定史跡のことを説明する公式サイトのLGBTQの文字を「LGB」に変え、「T」と「Q」を抹消、トランスジェンダーとクィアに関する言及もすべて削除しました。
ストーンウォール暴動においてドラァグクイーンのマーシャ・P・ジョンソンとトランス女性のシルヴィア・リヴェラが最初の抵抗の口火を切った人たちの一人であり、二人がストーンウォールの英雄として讃えられている(それだけでなく、ストーンウォール前夜のコンプトンズ・カフェの反乱などもトランスジェンダーの人たちが起こした反乱でした)という歴史をも改鼠する横暴な出来事に対し、「ストーンウォール・イン」の前で抗議デモが開催され、「沈黙=死※」「Tなくしてストーンウォールなし」などと書かれたプラカードが掲げられました。
ストーンウォール暴動の参加者で、ゲイ解放戦線の創設者の一人で、初のプライドパレードの実行委員でもあったマーク・シーガルは、「事件は圧政への抵抗の象徴だ。文言を消してもトランスジェンダーの人々は消せない」と憤りました。
ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事はソーシャルメディアで「残酷かつ狭量だ」と批判、「トランスジェンダーの人々はLGBTQ+の権利運動で重要な役割を果たしている。こうした人々の貢献を抹消することはニューヨークが許さない」と述べました。
トランスジェンダー活動家のターニャ・アサパンサ=ジョンソン・ウォーカーは、「トランスジェンダーの人々はずっと昔から存在してきた」と語りました。「私たちはあらゆる闘いをしてきました。家族や子どももいます。他の誰とも変わらない、この世界の一部です。私たちはここで存在し続けます。クリストファシスト(キリスト教極右)やネオナチの政権によって抹消されることはありません」「いま私たちが手にしている権利のために闘ってくれた人たちを歴史から消し去るなんて、許せることではありません」「政府は『これがストーンウォールだ』と言うのかもしれません。でも、私たちは『違う、私たちはストーンウォールが何だったかを知っている。その歴史を守るためにここにいる』と声を上げます」
参加者のサミー・ネミル・オリバレスも、「私たちは団結しなければなりません」と訴えました。「今日はLGBTQ+、トランスジェンダーの人々のために、そして明日は移民のため、母親たちのため、教師たちのために闘います。 権威主義のファシスト政権から影響を受けるのは私たち全員です」
デモを組織した一人である「全米LGBTQタスクフォース」広報ディレクターのキャシー・レンナは、「LGBTQ+の人々とアライは街頭で声を上げて、『私たちはここにいる。どこにも行かない』と国に伝え続ける必要がある」と述べました。「ほとんどの人は『トランスジェンダーの知り合いはいない』と言います。それを変えていく必要があると思います。LGBTQ+の当事者を知っている人ほど、このコミュニティをより深く理解し、支援しようとする傾向があるということを私たちは知っています」
「ストーンウォール・イン」と地元の人権団体は共同声明で「露骨な抹消行為は、私たちの歴史の真実をゆがめるのみならず、LGBTQの権利のため闘いの最前線にいたトランスジェンダーの多大な貢献をおとしめる」行為だと批判し、トランスジェンダーの人々への「直接的な攻撃」だとして、公式サイトの表記を元に戻すよう訴えました。
※沈黙=死(SILENCE=DEATH)は、多くのゲイ・バイセクシュアル男性がエイズで命を落としても無視していた政府やメディアに対し1987年に制作されたプロテスト・アートで、エイズ対策を求める人々やクィア・コミュニティの合言葉となりました。
参考記事:
米“LGBTQ運動”象徴の公園HPから トランスジェンダーに関する表記削除(日本テレビ)
https://news.ntv.co.jp/category/international/adb4bf31f4ea422091d01c6f3c3d3d37
国定史跡「トランス」削除 米、「LGB」表記で抗議デモ(共同通信)
https://nordot.app/1263409560900256307?c=302675738515047521
「LGBTQ」→「LGB」 米国定史跡HPから性的少数者の一部記述削除(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250215/k00/00m/030/046000c
LGBTQ権利運動発祥地の公園局サイトから「TQ」削除 米NYでデモ(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/3563113
LGBTQ+を「LGB」に変えたストーンウォールの政府サイト⇒トランスジェンダー当事者らが集結「私たちはここにいる」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_67afe42ee4b053b7510ff83c