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渋谷区が同性パートナーシップ証明制度を発表してから今日で10年
nippon.comの【今日は何の日:2月12日】の記事でも紹介されていましたが、2015(平成27)年2月12日、東京都渋谷区が日本で初めて、同性カップルも結婚に相当する関係であると認め、同性パートナーシップ証明書を発行する制度を盛り込んだ新条例の制定を発表してから今日で10年を迎えました。
10年前のg-lad xxの記事「渋谷区が同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行する条例案を区議会に提出」に書かれていますが、この画期的なニュースは当時、テレビなどのメディアでも一斉に大々的に報道されました。日テレでは早速、都内に住む同性カップルへのインタビューを行ない、レズビアンカップルが顔出しで「本当に率直にすごくうれしくて、思わず涙が出ちゃうくらいだった」「(日常の中の)不安が安心感に変わるという意味で大きいと思う。自分たちが住む場所が渋谷区と同じ条例を設けたらすごくいいなと率直に思う」とコメントしたり、ゲイカップルが「条例案が出されたことでLGBTの人たちが身の回りにいるという認知につながって、認める認めないということが渋谷区をきっかけに全国で議論が盛んに活発になっていけばいいと思う」とコメントしたりしていました。FNNは(2013年に東京ディズニーリゾートで初めて同性結婚式を挙げた)東小雪さんの「とってもうれしいです。朝ニュースを見て、『ついにだな』って感じで、本当にうれしい気持ちでいっぱいです」「日本ではまだ、同性婚が認められていないので。初めて行政が条例をつくって、パートナー証明書を出してくれることで、大きな一歩だと感じています。いろんな人が受け入れられる社会になってほしいと思っています」という声を紹介していました。
『同性パートナーシップ証明、はじまりました。』でも詳しく書かれているように、この条例案は、グリーンバードという街の清掃ボランティアの活動を通じて杉山文野さんと知り合った長谷部健区議をはじめとするアライの区議の方たちが区議会で提案し、実現したものでした。また、この時にはまだ公表されていなかったものの、2014年から世田谷区で上川あや区議が(のちに「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告となる)西川麻美さんと「世田谷ドメスティックパートナーシップ -レジストリー-」という会をつくり、同性パートナーシップ証明制度の設立についてアイデアを出し合い、区にも相談していたそうです。
渋谷区の新制度のニュースはLGBTQコミュニティにとっては青天の霹靂というか、うれしいサプライズとなりました。証明書の発行による法的拘束力はないものの、公に初めて同性カップルのパートナーシップが婚姻に相当する関係であると認められたということ自体が喜ばしく、社会的「承認」の意義が大きかったと言えます。また、このニュースの直後に国会やテレビ番組などで同性婚についての議論が見られたように、(かつては「好き者」とか性倒錯者と見られ、まともに扱われなかった)同性愛者が異性婚と変わらないパートナーシップを築いていて、そのパートナーシップは公的に承認する意味があるし、結婚に相当する関係として扱い、権利を保障すべきなのだということが世間に広く認知されるきっかけとなりました。
3月末には無事に渋谷区で条例が制定され、この年のTRPでは制度を実現した渋谷区の桑原区長も出席して晴れやかな同性結婚式が行なわれ、同年11月には世田谷区と同時に制度がスタートし、その後、少しずつ全国で広がりを見せ、札幌市や大阪市、福岡市などの政令指定都市でも制度が導入され、各地で制度実現を求める運動が活発化し(プライドパレードが全国各地で開催されるようになり)、都道府県として導入するところも増え、10年で人口カバー率は90%を超えました。2020年には明石市が初めて「ファミリーシップ制度」を生み出し、パートナーだけでなく子や親の関係も承認する必要性もまた社会的課題として認知され、承認の動きが広がりました。
事は同性パートナーシップ証明制度の広がりだけにとどまらず、2019年からの「結婚の自由をすべての人に」訴訟においても、全国でこれだけ多くの自治体が同性パートナーシップも婚姻相当であると承認しているということが、同性婚法制化を実現すべき根拠の一つとして挙げられるようになりました。そのことが各地の地裁や高裁で下されている画期的な違憲判決にも決して小さくない影響を与えています。(そんななか、本日の参院本会議で同性婚など多様性を確保する政策について質問を受けた石破首相は、「国民一人一人の家族観とも密接に関わる。国民の意見や国会における議論、訴訟の状況を注視していく必要がある」と、これまでとあまり変わらない答弁を重ねました)
ともあれ、この10年の間にどれだけLGBTQを取り巻く社会状況が変わったかということを噛みしめながら、同性パートナーシップ証明制度に携わったLGBTQやアライの方たちに感謝するとともに、そこに至るまでの数十年の間に当事者の社会的地位の向上に努め、勇気を持ってカミングアウトし、パレードを歩き、様々な活動によって社会を変えてきたたくさんのみなさんにもあらためて敬意を表します。これからも共に手を携え、連帯を強め、LGBTQの権利回復を目指して進んでいきましょう。
参考記事:
【今日は何の日:2月12日】1984年、そのレジェンドは誕生日に世界初の偉業を成し遂げ、消息を絶った(nippon.com)
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/today0212/
同性婚の法制化、国民の意見を注視と首相(共同通信)
https://www.47news.jp/12160376.html