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事実婚カップルには認められる移転費の支給が認められず、大村市の同性カップルが審査請求へ
長崎県大村市在住の同性カップルが申請した雇用保険法に基づく「移転費」について、厚生労働省が同性パートナーには「親族に該当しない」として却下する決定を下しました。異性の事実婚カップルであればパートナー分も支給が認められているのに、同性カップルにはそれを認めないとする決定です。当事者の松浦さんは判断を不服として審査請求を行なうそうです。
「移転費」とは、雇用保険受給者が職業に就くため、または公共職業訓練等を受講するために住居を変更する場合に支給される費用です。結婚している人が親族を伴って住居を変更する場合、その親族分の費用も支給される仕組みで、異性の事実婚カップルも対象に含まれています。
昨年、住民票の続柄について市に相談し、事実婚夫婦と同じ表記にしてもらうことを認められる(その後、全国の10自治体超が同様の対応を実施)という画期的な出来事に貢献した大村市の松浦慶太さん&藤山裕太郎さん。お二人は2024年3月に大村市に引っ越してきた際、再就職先が遠くなるとしてハローワークを通じてこの住民票を添付したうえで移転費を申請しました。しかし、21日に「同性パートナーは親族と認められないため、単身者としての支給を決定する」との連絡を受けました。厚生労働省は「今後、同性婚をめぐる司法の判例の積み重ねで見直しが行われる可能性はある」としながらも「同性カップルは現時点で事実婚に含まれない」との見解を示しています。
松浦さんはこの厚労省の対応について「自分たちの存在を国に否定されたように感じ、打ちひしがれています」「犯罪被害者給付金の判決や福岡高裁で『同性婚を認めないのは違憲』との判決が出る中で、納得できる説明もなく、非常に残念です」と肩を落としました。しかし、ただ泣き寝入りするのではなく、判断を不服として審査請求※を行なうことを決めました。「パートナーは単身だと何度も言われ、国に家族と認められていないと言われているようでショックだった。審査請求でくつがえしたい」
※審査請求は、行政不服審査法に基づいて定められた制度で、行政庁の処分や不作為に不服がある場合に行政庁に対して不服を申し立てる手続です。審査請求の目的は、国民の権利利益を保護し、行政の適正な運営を確保することです。裁判とは異なり、行政庁が処分の違法性や不当性の判断を行ないます。審理員による審理手続、行政不服審査会等への諮問等により公平・中立な審理が行なわれることになっています。書面審理を基本とする手続で、手数料はかかりません。不服のある方は、原則として処分を知った日の翌日から3ヵ月以内であれば、審査庁(各省庁の審査会や自治体の首長など)に対し、審査請求を提起できます。審査請求人は、裁決があった後の処分になお不服がある場合、裁決があったことを知った日の翌日か6ヵ月以内に地方裁判所に、原処分の取消を求めて訴訟を提起することができます。
昨日、政府は24の法令について同性カップルも事実婚相当であると見なし、他の130の法令についても各省庁に対して早期の検討を求めました。昨年3月の最高裁判決を受けて政府も対応を迫られたわけで、各省庁も昨年末までにこの件での法令の見直しの検討が求められていました。にもかかわらず、「現時点で事実婚に含まれない」として申請を却下するとは、なんと無慈悲なことでしょう…今後、移転費の不支給について訴訟が起こされれば、犯罪被害者給付金裁判と同様、同性カップルと事実婚カップルとの間に違いが認められず差別的対応は不当だとの判決が出ることは間違いないでしょうに…。審査請求で処分の取消しが行なわれることが期待されます。
参考記事:
「同性パートナーは親族に該当しない」違憲判決続く中の厚労省判断、松浦さんの失望(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/1681090?display=1
「同性カップル」は事実婚に含まず…大村市の30代男性の雇用保険めぐり厚労省が不支給判断【長崎】(テレビ長崎)
https://www.fnn.jp/articles/-/817790
同性パートナー就労移転費不支給 長崎・大村、「残念な判断」(共同通信)
https://nordot.app/1254372642134426330?c=110564226228225532
事実婚に同性カップル含めず…厚労省が判断 長崎・大村の男性カップルの雇用保険申請巡り(長崎新聞)
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=cfead7dc1e5d4e50b112789fd0acbc5f