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IBMの川田篤さんが「WOMEN AWARD 2024」個人部門《インクルージョン賞》を受賞
世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数ランキングで146ヵ国中118位と、G7のなかで最下位に沈み続けている日本ですが、そんな閉塞的な社会に風穴を開ける新たなリーダーを選出するためにForbes JAPANが開催している「WOMEN AWARD 2024」で、IBMの川田篤さんが個人部門で「インクルージョン賞」に選ばれました。「組織や社会全体のしあわせと成長の実現に貢献した人物に贈られる賞」です。
川田篤さんは2015年、全世界で40万人いるIBM社員から業績を認められた500人のみに与えられる「Best of IBM」に選ばれていて、所属部門全体が集まるミーティングで「Best of IBM」受賞のスピーチをしながらカムアウトした方です(詳細はこちら)
Forbes JAPANによると、川田さんは20年にわたってLGBTQ+への理解を促す啓発活動に取り組み、日本の企業では初となる社内同性パートナーシップ制度の実現に貢献し、その「社内外に変革をもたらした行動力は、今や日本企業のDEIをリードするまでに」なったと称されています。
日本IBMが他の企業に先駆けてLGBTQ+に対する理解促進と制度拡充の活動を開始したのは2003年のことで、当時、川田さんは人事部の所属ではなく、自身が当事者であることもオープンにしていなかったといいます。しかし、米国に出張した際、川田さんは米国本社の上司と行動を共にするなかで、その上司がLGBTQ+の活動に携わっていることを知り、「相手が当事者であることを知りながら、自分が何も伝えないのはおかしいのではないか」と感じ、自分もそうだとカムアウトしました。それを機に、全世界のLGBTQ+が200人ほど集まるIBMのリーダーシップ研修に誘われることになりました。ただ、日本ではカムアウトしていなかったので、川田さんは休暇を取って自費で参加したんだそう。その姿が当時のアジア統括社長の目に留まり、日本の人事も知るところとなり、日本IBMにおける活動を担うことになったのです。
2008年、全社としてダイバーシティに積極的に取り組むことが決まり、性的マイノリティ、女性、外国人、障がい者、ワークライフバランスの5つが重点項目に掲げられました。これで活動が大きく前進するかと思いきや、IBMでは社内変革に取り組む場合、目的意識をもった本人が声を上げていくことになっていて、社内では誰もカムアウトしていなかったため、壁にぶつかったそうです。それでも匿名で連絡があり、「同じ志をもつ人が社内にいるとわかって、本当に心強かった」といいます。
やがてその活動は社外へと広がり、2012年、日本IBMはヒューマン・ライツ・ウォッチなどとともに任意団体「work with Pride」を設立し、PRIDE指標で知られる「work with Pride」の礎となり、以降、日本の企業のLGBTQインクルーシブな職場づくりを後押しすることになります。
そして2015年、川田さんは「Best of IBM」賞を受賞し、これを機にカムアウトを決断。その裏には、ずっと抱えてきた自責の念がありました。部門のマネジャーを務めていた川田さんは、以前からメンバーに対し「仕事でもプライベートでも、何かあったら相談してほしい」と言い続けていたにもかかわらず、自分自身のことは何も明かしておらず、罪悪感から、飲み会の席で号泣してしまうこともあったんだそう…心配する周囲の人たちに理由を明かすこともできず、心のかせになっていました。
所属部門約50人が集まる場で、足が震え、不安と緊張のなか、川田さんが10分間のスピーチを終えると、大きな拍手が湧き、握手を求める人までいたそうです。
カミングアウトを果たしてからは「仕事が順調にまわるようになった」といい、川田さんは、あの日のありのままの自分を職場が受け入れてくれた日のことを「第二の成人式」だと振り返ります。同年、川田さんが人事部門とともに取り組んできた、企業における日本初の同性パートナーシップ制度が実現しました。「LGBTQ+であろうが誰であろうが、『あなたはあなた』と認める世の中になってほしい。そのために、これからも社内外に働きかけていきます」
参考記事:
「Best of IBM」受賞社員がカミングアウトした理由:WOMEN AWARD 2024〈個人部門〉受賞者インタビュー
https://forbesjapan.com/articles/detail/76348