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LGBTQの児童生徒から相談を受けた養護教諭の半数近くが、本人の承諾を得ずに校内で情報を共有

 小中高などに勤務する養護教諭の半数近くが、児童生徒からSOGIに関する相談を受けた際、本人の承諾を得ずに校内で情報を共有した経験があることがわかりました。5日、宝塚大の日高庸晴教授(社会疫学)はプライドハウス東京レガシーで調査結果を報告する会見を開き、「教員間の情報共有だとしても同意なく他者に話すのは本人を傷つけ、追い詰めることにもなりかねない。共有する必要性を説明し、本人の意向を確認した上で承諾を取るのが前提だ」と述べました。
 

 調査は、LGBTQ+(性的マイノリティ)の支援や権利回復などに取り組むNPO法人プライドハウス東京の委託で今年1~3月、9自治体の養護教諭を対象に実施されました。20~70代の2172人から有効回答を得たそうです。
 性別違和を抱える(トランスジェンダーなどの)児童生徒と直接関わったことがあると答えた養護教諭は42.4%、同性に惹かれる児童生徒と関わったことがあるとの回答は22.3%に上りました。
 LGBTQに関する知識については、9割以上が「同性愛は精神的な病気だと思わない」とするなど、基本的な知識は浸透していましたが、一方で、自ら変えられないとされる性的指向について、約4割が「同性愛者になるか異性愛者になるか、本人の希望によって選択できると思う」と答えるなど、誤解も一定程度あったそうです。
 また、トランスジェンダーの子どもにとって学校生活上の支障となりやすい制服について、「性別ごとにアイテムが決められている従来型の制服で問題はないと思うか」という設問に対し、85%が「そう思わない」と回答、96%が「スラックス、スカート、ネクタイ、リボンなど、いずれの組み合わせもOKとする選択制の制服がいいと思う」と答えました。
 そして、性的マイノリティの生徒から相談を受けたという方の約9割が、相談内容を学級担任や管理職らと共有していましたが、本人の承諾を必ず取っていた方は54.3%にとどまり、半数近くがアウティングをしていたことがわかりました。
 
 日高教授は組織内での情報共有について、「学校には本人の意向を聞かずに情報共有をするような文化があると思う。本人に丁寧に説明して意向を確認することが大事だとわかってほしい」「学校の中に当事者がいる前提で、保健室にとどまらず学校全体で取り組むべきだ」と語りました。
(ちなみに、日高教授は、1990年代からゲイ・バイセクシュアル男性のメンタルヘルスとHIV感染の関連や、LGBTQの自殺未遂率の高さなど、数々の意義ある調査・研究を行なってきた方です)
 
 
 2020年施行のパワハラ防止法によって、職場でのSOGIハラとアウティングの防止を講じることが企業に義務づけられましたが、小中高の養護教諭の間では、アウティングの問題はまだまだ周知されていないようです。約4割の方が性的指向は選択的である(自分の意思で変えられる)と思っていたことも、衝撃的な結果ではないでしょうか。(一方で、制服について96%の方が選択性を支持し、サポーティブな姿勢を見せているのは素晴らしいと言えます)
 悩み多く傷つきやすい小中高の性的マイノリティに直に接し、相談に乗ったりする養護教諭の方たちが、性の多様性についてきちんと理解し、子どもたちが傷ついたりせず安心して相談できる体制になることを祈ります。自治体や教育委員会、保護者のみなさんなどもこの問題について考え、養護教諭の方たちが学べるような支援をしていくような体制が整えられるといいですね。
 


参考記事:
半数が承諾得ず、校内で情報共有 性自認巡る相談で養護教諭(共同通信)
https://nordot.app/1237336779342398255?c=302675738515047521
養護教諭の8割超が「男女別の制服は問題」 LGBTQ意識調査(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241205/k00/00m/040/254000c
「保健室の先生」の4割、性別への違和感のある子に関与 2千人調査(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASSD520FMSD5UTIL006M.html

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