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同性婚法制化が「日本全体の幸福度にプラスとなる」と首相が答弁、川田龍平議員の質問に

  12月17日午前の参院予算委員会で、川田龍平議員(立憲民主党)の「同性婚を認めることで日本の幸福度が増えるとお考えですか」との質問に対し、石破茂首相が「日本全体の幸福度にとって、肯定的なプラスの影響を与えるものだと考えている」と答弁しました。

 先週13日、福岡高裁が民法などの諸規定が同性婚を認めないのは違憲である、初めて憲法13条(幸福追求権)についても違憲であるとの判決を下し、林官房長官が同日の記者会見でこれに触れましたが、「確定前の判決だ。他の裁判所で同種訴訟が継続しており、その判断も注視していく」「親族の範囲や、どのような権利義務関係を認めるかなど、国民生活の基本に関わる問題で、一人一人の家族観とも密接に関わる。国民の意見、国会議論の状況、訴訟の動向を注視していく」と、これまでと変わらないコメントに終始しました。
 また、3月の札幌高裁、10月の東京高裁、そして先週の福岡高裁と3件連続で違憲判決が出ており(一連の訴訟でこれだけ違憲判決が続くのは日本の司法界において極めて異例なことです)、憲法学者などの有識者や新聞社などのメディアも国会に同性婚の法制化を進めるよう求めていますが、鈴木法相は17日の記者会見で「婚姻に関する規定が憲法に反するものとは考えてはいない。国の主張が受け入れられなかったと受け止めている」「同性婚制度の導入は家族のあり方の根幹に関わる問題で、国民的な理解を得た上でなければ進めることは難しい」と、この10年近く政府が繰り返してきたのと変わらないコメントを発するのみでした。
 そうしたなか、17日午前の参院予算委員会で、川田龍平議員(立憲民主党)が福岡高裁で初めて同性婚を認めないのは憲法13条に照らして違憲であるとの判決が出たことを挙げ、石破首相に対して「同性婚を認めることで日本の幸福度が増えるとお考えですか」と尋ね、首相は「個人的には増えると思う」「その人にとってそれ(同性パートナーと結婚すること)がもうかけがえのない価値なのであると。関係者の話を聞いたことがあるが、一緒にいることが何よりもかけがえのない大切なものなのだと思っておられる。それが実現できない法的な関係というのは、これがまた面倒くさい話になるわけですが、じゃ、それをふうふと言うのかという話になってくるわけで、法的な問題はものすごく惹起するわけです」「そういうことを横に置いても、そのことが本当に生きがいであるという方の思いが法的に実現するというから考えれば、日本全体の(幸福度の)『はかり』があるわけではないが、一人ひとりの熱烈な思いが実現されることは、日本全体の幸福度にとっては肯定的なプラスの影響を与えるものだと考えている」と前向きな答弁をしました。この10年間、国会でも(壊れたテープレコーダーのようだと評する声も上がるくらい)「家族のあり方の根幹に関わる」という消極的な答弁が繰り返されてきたのが、ようやく変わった瞬間でした(なお、4日の参院本会議での打越さく良議員の質問に対しても「同性婚制度の導入は、国民一人ひとりの家族観と密接に関わるもので、国民の意見や国会での議論、同性婚に関する訴訟の状況を注視していく必要がある。苦しむ方、悲しい思いでいる方の気持ちは、十分理解しているつもりだ」という、当事者に少し寄り添いながらも法制化に関しては否定的な、これまで通りの姿勢を見せていました)。3つの高裁判決で違憲だとされたことで、さすがに態度を変えざるをえなくなったということもあるかもしれませんし、また、川田議員が「日本の幸福度が増えると思うか」という個人の考えを訪ねる(答えやすい)質問を投げたから、ということもあるのでしょう。
 今回の答弁でも、同性婚の法制化を進めると明言されたわけではないのですが、今後、「同性婚を認めることで日本全体の幸福度が上がる」とお考えなのであれば、ぜひ「法的な問題」をクリアして法制化を議論しましょう(司法も違憲だと言ってますし)と言いやすくなるのではないでしょうか。


 なお、川田龍平さんがゲイコミュニティにとっての恩人であるということをご存じない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単に補足してお伝えします。
 川田龍平さんは薬害エイズの被害者として1993年に国と製薬会社の責任を問う東京HIV訴訟の原告に加わり、95年(19歳のとき)に初めて実名を公表、同年7月、川田さんらが先頭に立って3500人で厚生省(当時)を取り囲む「人間の鎖」という大規模な抗議活動を行ない、菅直人厚生大臣(当時)が法的な責任を認めて謝罪、96年に裁判が歴史的な和解を見ました。和解の内容として被害者への補償、HIV感染症の研究治療センターの設置、エイズ拠点病院の整備拡充、差額ベッド代の解消、HIV陽性者に対する身体障害者手帳の交付など、恒久対策として国は医療体制や福祉体制について適切な措置をとることになり、その際、川田さんらが薬害の被害者だけでなくHIVに感染した人々すべてが医療体制・福祉体制の恩恵を受けるべきであると主張して国に認めさせたため、ゲイ・バイセクシュアル男性を中心とする性的接触による感染者なども医療や福祉制度の恩恵を受けられるようになったのです(JaNP+「日本におけるHIV/AIDSの歴史「薬害HIV感染」」より)
 川田さんはその後、2007年7月の参院選に出馬し、東京選挙区で42年ぶりとなる完全無所属で参議院議員に当選を果たし、現在は両院議員総会長、厚労委筆頭理事、消費者特委筆頭理事も務めています。
 そんな川田さんが今回、同性婚についての首相に質問し、このように前向きな答弁を引き出してくれたのは決して偶然ではなく、90年代から続くゲイコミュニティとの友情なのです。
 
 

参考記事:
参議院 代表質問 “賃上げや税制改正”などめぐり論戦(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241204/k10014658351000.html

官房長官「動向を注視」 同性婚訴訟、福岡高裁での違憲判決受け(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241213/k00/00m/040/193000c

24年度補正予算、午後に成立 首相「同性婚で幸福度増」(共同通信)
https://nordot.app/1241597895504872009?c=302675738515047521
補正予算、今夕にも成立 同性婚導入「幸福度上がる」 石破首相(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024121700176
同性婚を「幸福度にプラス」と評価も、法制化明言せず 石破茂首相(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASSDK0Q6NSDKUTFK006M.html

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