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【婚姻平等訴訟】高裁での3連続違憲判決を受けてメディアはどう報じているか
3月の札幌高裁、10月の東京高裁、そして先週の福岡高裁と3件連続で違憲判決が出ています。一連の訴訟でこれだけ違憲判決が続くのは日本の司法界において極めて異例なことです。新聞社などのメディアも、これまで以上にさらに強く、国会に対し同性婚の法制化を求める論調になってきています。有識者コメントや社説・論説を中心にご紹介します。
毎日新聞は判決が出た日の夜に配信した「同性婚訴訟、高裁で3連続「違憲」判決の衝撃 司法の流れ固まった?」というニュースで、早稲田大の棚村政行名誉教授(家族法)のコメントを紹介しています。これまでなかった憲法13条での違憲判決という点について「同性カップルに婚姻の自由や平等の道を開くべきだとする積極的な判断で画期的だ。高裁では3例目の違憲で、司法の流れはほぼ固まった。先行した控訴審判決とは異なる法的構成で、今後の判決にも大きな影響を与えるだろう」と評価し、また、判決のなかで現行制度を改廃しなければ国に賠償責任も生じ得るとの言及があった点について「警告しつつ、国会での議論を強く促している。国会は一刻の猶予もおいてはならない」と述べていました。長きにわたって婚姻平等(同性婚)を支持する立場から発言してきた有識者の方から、さすがとも言うべき的確なコメントが発せられた感があります。
15日の朝日新聞の「婚姻の捉え方に違い 「幸福追求権」違反認めた高裁判決 同性婚訴訟」という記事では、慶應義塾大の駒村圭吾教授(憲法学)の「今回の判決は、一見、回りくどい解釈をこらして違憲判断を導いてきたこれまでの判決と違い、憲法13条が定める幸福追求権から婚姻の自由が直接的に保障されると初めて認めた。同性愛者と異性愛者に同じ婚姻制度を認めない限り、差別的な状態が解消されないとまで明言した。国会に早急な立法を迫る司法側からの強いメッセージだ」とのコメントが紹介されています。駒村教授は今年3月の札幌高裁判決を受けてのMarriage For All Japanの院内集会でも「みんなが家庭を築いて、社会全体の生産性を向上させるなら、そのほうがいいに決まっている」「立法府はプライドと意地を見せてくれ」という素晴らしいスピーチをしてくださっています。
日経新聞は判決の翌日に早速、社説を掲載し、「一連の訴訟で13条違反が認定されたのは初めてだ。国に強く対応を迫ったものといえる」「現状を放置してよいはずはない。司法からのメッセージを受けとめ国会や政府の場で議論を求めたい」と述べました。多くのビジネスパーソンに影響を与える日経新聞がこのように書いてくれるのは本当に心強いです。
同様に信濃毎日新聞も社説を掲載し、「法制化をしないことは、もはや政府と国会の怠慢である。早急に法改正を進めることを求める」と厳しく追及しつつ、海外のシビルユニオンのような別制度を設けるのではなく「異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ「法の下の平等」違反の状態は解消しないと強調した」点を高く評価しました。
沖縄タイムスも、「新たな論点からの「異議」を重く受け止め、国会に早期の法制化を求める」「同性婚は「公共の福祉」に反せず、「法制度として認めない理由はもはや存在しない」との判断も明快である」「機は熟しているにもかかわらず、政府のコメントはいまだに「他の同種訴訟の判断も注視したい」だ」「判決は同制度の拡充などで「不平等は解消されない」と国に苦言を呈する。世界の潮流からも、人権の観点からも、これ以上放置できない問題である」と述べて「最高裁の結論を待つことなく、法制化へ動かなければならない」と結ぶ、強い論調の社説を掲載していました。
中国新聞の社説も「今回の判決は、婚姻について「血縁集団の維持・存続目的や宗教的立場からの介入は許されない」と指摘した。同性婚を法制度として認めない理由は「もはや存在しない」と断じた。政治は重く受け止めなければならない」とし、ずっと国会での議論に後ろ向きだった政府に対して「注視する段階はとっくに過ぎた」と釘を刺し、「法整備の実現に向けて直ちに議論を始めなければならない」と結ぶものでした。
(この後も、続々と同様の社説が掲載されると予想しますが)いずれも、同性婚法制化の議論に消極的な政府に対してこれまでになく強い論調で直ちに議論を始めよと求めるものでした。
福岡高裁判決が出た13日、KKT熊本県民テレビとYahoo!ニュースの共同連携企画で「日本移住で「他人」に逆戻り 台湾の同性“ふうふ”が直面した困難「何も隠さない生活ができたら」という、台湾で2020年に結婚し、法的にも夫夫(ふうふ)と認められているハオさん&ミンさんカップルが、仕事の都合で昨年、熊本に移住したものの、日本では法律上“他人”でしかないため、異性婚夫婦には与えられる「家族滞在ビザ」がもらえなかったり、市役所の窓口で「夫です」と言っても「弟ですか?」と何度も聞き返されるなど、困難の連続だった…という、生々しいほどにリアルなストーリーが掲載されました。
長崎放送も13日、同じ九州に暮らす松浦慶太さん&藤山裕太郎さんカップルをフィーチャーし、住民票続柄のことを取り上げる番組を放送。当日、裁判を傍聴したお二人の「最高の気分。当事者に寄り添った判決文だと感じた。本当に嬉しい。何も文句はありません」とのコメントも伝えています。
同様に13日、毎日新聞がフランスのジャンマルク・ベルトンLGBT+権利担当大使へのインタビューを掲載し、同性婚が法制化されてから10年が経過したフランスで“社会が崩壊”したりせず、国会で同性婚法撤回を叫ぶ議員も一人もいないといった話や、そもそもなぜLGBT+権利担当大使という役職が設けられているのか、フランスではどのように差別に抗し、LGBTQコミュニティを保護しているのか、といった興味深いお話が語られていました。
毎日新聞は同日、衆議院議員の過半数が同性婚法制化に賛成していることが明らかになったというニュースも配信しています。
これらのニュースは、明らかに福岡高裁判決の日に向けて用意されたものです。世間の方たちに同性婚法制化実現へのいっそうの理解や支援を促し、また国会に法制化に向けた議論を促すために企画された記事でしょうし、たとえ期待したほど前向きではない判決が出たとしてもそれをフォローしようという気持ちや、同性婚関連のニュースが同じようなことの繰り返し(裁判所でこういう画期的な判決が出た、当事者はこのようにコメントしている、一方、政府は同じような答弁を繰り返し、国会では一向に議論が進まないというようなパターン)になりがちなところに新しい視点や切り口のニュースを入れて少しでも関心を持ってもらおうとする意図も感じられます。
参考記事:
同性婚訴訟、高裁で3連続「違憲」判決の衝撃 司法の流れ固まった?(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241213/k00/00m/040/310000c
婚姻の捉え方に違い 「幸福追求権」違反認めた高裁判決 同性婚訴訟(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASSDG3JD9SDGTIPE029M.html
[社説]同性婚訴訟の「違憲」判断は重い(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD136450T11C24A2000000/
〈社説〉同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024121301557
[社説]同性婚訴訟「違憲」続く 注視ではなく道開く時(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1490692
同性婚二審 違憲3例目 直ちに法整備の議論始めよ(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/571536
日本移住で「他人」に逆戻り 台湾の同性“ふうふ”が直面した困難「何も隠さない生活ができたら」(熊本県民テレビ+Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6ad5193010765109d6d6eba56431e6e4f3733cce
同性婚、法整備の必要性にも踏み込んだ福岡高裁「同性婚認めないのは違憲」長崎のLGBTQ当事者松浦慶太さん「最高の気分」(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1615931
「社会は崩壊しなかった」 同性婚を進めたフランスの現在(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241212/k00/00m/040/162000c
衆院議員の過半数、同性婚制度化に「賛成」 毎日新聞調査(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241213/k00/00m/010/163000c