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米国史上初のトランスジェンダーの連邦議会議員が誕生
米大統領選と同時に行なわれた連邦議会議員選挙で、LGBTQコミュニティにとって史上初となる当選がいくつもありました。
まず、連邦下院選でデラウェア州選出のサラ・マクブライド氏が勝利し、史上初のトランスジェンダーの連邦議員が誕生しました。
マクブライド氏は、アメリカ進歩センターでLGBTQ関連の政策立案などに取り組み、米国最大のLGBTQ支援団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンの広報官として活動し、2012年にはオバマ政権下でインターンとしてホワイトハウスで勤務し、2016年の民主党大会でトランスジェンダーとして初めてアンチLGBTQ法案や差別への反対を訴える演説を行なって注目を集め、LGBTQの権利擁護者として全国的な知名度を築き、2020年にはデラウェア州議会の上院議員に当選しました。今回の連邦下院議員選挙では、医療アクセスの拡大やリプロダクティブ・ライツ(生殖に関する権利)の保護などを訴え、300万ドル(4億6千万円)以上の選挙資金を集め(そのほとんどは州外からだったそう)、当選を果たしました。
マクブライド氏は感謝の言葉として「私は歴史に名を残すために出馬したわけではありません。この国とデラウェア州を変えるために出馬したのです。(私の当選は)デラウェア州の住民が公正で、私たちの民主主義は皆を抱くほど大きいという強力なメッセージです」「すべての人の性と生殖に関する自由を守り、すべての家族に有給休暇と育児サポートが保障され、誰もが住宅と医療にアクセスできる国であるべきで、それが民主主義なのだというメッセージを、デラウェア州は大きな声でそしてはっきりと訴えることができました」とコメントしました。これに対し、「大きな勝利だ」「おめでとう」「あなたの勝利は、私にたくさんの希望を与えてくれた」などの祝福の言葉が寄せられています。
米国最大のLGBTQ人権団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」のケリー・ロビンソン会長は、「マクブライド氏の勝利は平等に向かった行進において画期的な成就」と称えました。
テキサス州のジュリー・ジョンソン氏は、南部で初めて連邦議会議員に選ばれたLGBTQの人物となりました。1966年テキサス州生まれのジュリー・ジョンソン氏は25歳のときにカムアウトし、2014年に同性パートナーとサンフランシスコで結婚しています。2019年に同州の下院議員に当選し、今回の連邦下院選で、テキサス州32区で当選を果たしました。
ワシントン州でも、メキシコ系のエミリー・ランドール氏が、中南米系のLGBTQの人物として初の連邦議会議員として当選を確実にしました。
ウィスコンシン州では、タミー・ボールドウィン氏が、連邦上院議員として再選されました。彼女はカムアウトしている唯一の連邦上院議員ということになります。
タミー・ボールドウィン氏はオープンリー・レズビアンとして初めて1993年に同州の州下院議員に当選し、1998年にはLGBTQとして初めて連邦下院議員に当選、2012年にはLGBTQとして初めて連邦上院議員に当選しました。2018年に再選され、今回も再選されています。
そのほか、州議会議員としても、Keturah Herron氏が有色人種のクィア女性として初めてケンタッキー州の上院議員に当選、Aime Wichtendahl氏がアイオワ州初のトランスジェンダーの州下院議員に当選、Zooey Zephyr氏がモンタナ州下院議員に再選、といった喜ばしいニュースが届いています。
今回の米大統領選ではビヨンセやテイラー・スウィフトら多くのセレブがカマラ・ハリス支持を表明し(クロエ・グレース・モレッツは同性愛者であることをカムアウトしてハリス支持を表明し)、レディ・ガガなどは激戦州であるペンシルバニアの集会に駆けつけ、『ゴッド・ブレス・アメリカ』を歌い、応援していました(ガガだけでなくボン・ジョヴィ、ケイティ、アギレラ、リッキー・マーティンなども出演したそうです)。しかし、このような結果となり、今後の4年間は女性やLGBTQコミュニティ、特にトランスジェンダーの人々にとって厳しいものになると見られています。トランプ氏の勝利宣言が報じられるや、SNS上ではトランスジェンダーの人々が絶望で自死を選んだりしないよう呼びかけるメッセージが拡散され、LGBTQ団体は「ショッキングで壊滅的な」後退だとコメントしました。
ビリー・アイリッシュは「これは女性に対する戦争」だと、アリアナ・グランデは「今日、この結果の計り知れない重圧を感じているすべての人の手を握ります」とインスタグラムでコメントしています。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー助演女優賞に輝いたジェイミー・リー・カーティスは「過酷な時代への確実な回帰を意味する」とのコメントを投稿し、ゲイやトランスジェンダーの権利が脅かされ、当然受けるに値する生殖医療を受けることが困難になることを恐れている人が大勢いると語りました。
テキサス州で18歳未満のトランスジェンダーへのホルモン療法を禁じる法律が成立したのをはじめ、米国の少なくとも37の州でトランスジェンダーの権利を抑圧するような州法が制定されたり、バックラッシュが激しくなっています(ヒューマン・ライツ・キャンペーンが昨年「非常事態宣言」を出したほどです)。トランスジェンダーへの暴力、特に黒人のトランス女性への憎悪犯罪(ヘイトクライム)も深刻で、毎年40名以上が命を落としています。
そんななか、トランス女性のサラ・マクブライド氏が国会議員になったことや、テキサス州でジュリー・ジョンソン氏が当選したことは、LGBTQコミュニティに希望を与えるような素晴らしいニュースとなりました。
これまでも米国のLGBTQコミュニティは激しいバックラッシュや絶望的な状況を経験してきましたが、例えばエイズ危機に際しては、ゲイコミュニティの人たちが次々と亡くなっていくなか、レズビアンやトランスの仲間たちが立ち上がり、クィアムーブメントが生まれるなど、その時々で連帯し、あきらめずに闘ってきました。同性婚の運動に際しても、多くのアライの人たちが支援し(企業なども味方につき)、ついには米国全土での婚姻平等を勝ち取りました。いまは残念な、悲しい気持ちになっている方も多いことでしょうが、米国のLGBTQ+Allyコミュニティはあきらめず、さらに結束力を強め、前向きに進んでいこうとするはずです。
参考記事:
トランスジェンダー公表の政治家、米下院に当選 全国から選挙資金(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASSC61Q0FSC6UHBI01FM.html
米議会選・知事選、「史上初」の顔ぶれ誕生の見込み(CNN)
https://www.cnn.co.jp/usa/35225808.html
アメリカ初、トランスジェンダーを公表する連邦下院議員が誕生へ(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_672adabde4b0be8c956b0e3a
トランスジェンダー公表の政治家、米下院選に当選。SNSでは祝福の声「大きな勝利だ」「希望を与えてくれた」(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/bfjapan/sarah-mcbride-delaware-transgender-congress-1
米国初のトランスジェンダー連邦下院議員が誕生…「民主主義はあらゆる人々を包み込む」(中央日報)
https://japanese.joins.com/JArticle/325929
ハリウッドセレブ、大統領選結果に失望絶望 ビリー・アイリッシュ「これは女性に対する戦争」(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202411070000216.html
The LGBTQ+ political wins in an otherwise devastating election(Advocate)
https://www.advocate.com/election/lgbtq-election-victories
Don’t despair, here are seven ‘good news’ LGBTQ+ election stories to lift your spirits(Pink News)
https://www.thepinknews.com/2024/11/06/good-news-for-democrats-election/