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マレーシア政府が押収したレインボーカラーの腕時計が返還へ
マレーシア政府は昨年8月、Swatchのレインボーカラーの腕時計をしている人に対して3年以下の禁錮刑や罰金刑が科すと発表しました(詳細はこちら)。政府は、LGBTQの象徴であるレインボーカラーを「道徳を損なう」恐れがあると非難し、好ましくない出版物の禁止法に基づき、処罰することにしたのです。内務省の法執行部門はこの発表の前の5月、クアラルンプールなど国内11ヵ所のショッピングモールに入るSwatchの店舗を「強制捜索」し、レインボーカラーのプライドコレクションを押収していました。
Swatch社は昨年6月、自社製品が「公序良俗の乱れや法律違反を引き起こすものではまったくない」「製品が押収されたことで企業の評判が落ち、ビジネスに悪影響が及んだ」として異議を申し立て、裁判で争っていました。
裁判所は25日、押収の際に政府は令状を取っておらず、それらの製品の販売を禁じる法律も事後に成立したことから、押収は違法だと判断し、14日以内に時計を同社に返すよう国側に命じました。総額1万4000ドル(約215万円)相当の時計が返還されることになります。
サイフディン・ナスション・イスマイル内相は、政府の法務チームが「判決の根拠を検討」したうえで、上訴するか決めるとしました。同時に、政府は「判決を尊重しなければならない。さもないと法廷侮辱とみなされる」と述べました。
マレーシアでは植民地時代のソドミー法(同性間の性行為を違法とする法)が残っており、最大で20年の禁固刑が科されますが、野党・人民正義党の指導者アンワル・イブラヒム元副首相が1998年、当時のマハティール首相と対立し、副首相解任と同時にソドミー法違反で起訴され、その後も野党指導者として人気を集めるたびに起訴され、2015年に有罪が確定し、服役までするという悲劇に見舞われました(政敵のいやがらせだとの見方も強いです)。2017年には、同性愛「防止」を啓発する動画に賞金を出す、2018年には車の中で愛し合おうとしていた女性二人を公開杖打ち刑に処すなど、ひどいニュースが伝えられていました。同性愛描写のある映画を上映禁止にしたり改ざんしたりなどの報道も度々ありました。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ・アジア副代表のフィル・ロバートソン氏は、マレーシアでLGBTQコミュニティに対する不寛容が増大しており、「政治的なサンドバッグにされてきただけでなく、政府から度重なる虐待を受けている」と述べています。「この状況で、シンプルに腕時計をしていただけで投獄されるというのは虐待でしかない。馬鹿げている」
参考記事:
LGBTを理由にスウォッチ没収は「違法」 マレーシア当局が敗訴(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASSCV2HKZSCVUHBI00YM.html
マレーシア政府、押収したLGBT腕時計の返還を命じられる 裁判所が違法と判断(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/articles/ce8y79q9dm1o