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小説家51名と映画監督97名がLGBTQ+差別に反対する声明を発表

 トランスジェンダー追悼の日にあたる11月20日、芥川賞作家の李琴峰さんをはじめ50名を超える小説家が「LGBTQ+差別に反対する小説家の声明」を発しました。
 声明は、李琴峰さん、山内マリコさん、柚木麻子さんの文責で、石田衣良さん、桐野夏生さんなど計51名の小説家が賛同者として名を連ねました。トランスジェンダーを含むLGBTQへの差別に反対し、「差別に加担しない文学環境を望みます」として当事者への連帯と支持を表明し、文芸、出版業界や同業者に理解と協力を求める内容です。
 日本の小説家がこのように特定の問題に対して声明を発表することが稀ですし、しかもLGBTQ+差別に関する声明としては史上初だと思われます。
 
LGBTQ+差別に反対する小説家の声明(全文)
「私たち小説家にとって、作品が世の中に流通し人々に読まれることは、喜びであると同時に、大きな責任を伴うものでもあります。
 近年、LGBTQ+、とりわけトランスジェンダーの人々を標的にした差別言説が氾濫していることに、私たちは深く心を痛め、憂慮しています。読者のみなさまをはじめ、文芸・出版業界にも、LGBTQ+当事者の方がいることは言うまでもなく、我々にとって他人事ではありません。
 そこで私たちは、トランスジェンダーを含むLGBTQ+の人々に対する差別に反対し、連帯と支持を表明します。
 文学は、ときに差別や抑圧、排除といった人間の暗い一面を描くこともあります。しかし、すでに社会的に弱い立場に立たされている人々に対し、文学がその生の可能性を狭め、差別や抑圧、排除に加担することはあってはならないと、私たちは信じています。文学がLGBTQ+を含むすべての人に開かれたものになるよう、私たちは文芸業界、出版業界、及び同業者に理解と協力を求めます。
 私たちは差別に加担しない文学環境を望みます。

2024年11月20日 トランスジェンダー追悼の日に」
 
賛同者(敬称略、五十音順、計51名):
逢坂冬馬、朝井まかて、朝比奈あすか、安堂ホセ、池澤春菜、石田衣良、石原燃、市川沙央、一穂ミチ、いとうせいこう、岩川ありさ、王谷晶、大田ステファニー歓人、大前粟生、小山田浩子、角田光代、木村紅美、木村友祐、桐野夏生、倉田タカシ、グレゴリー・ケズナジャット、小林エリカ、近藤史恵、坂木司、坂崎かおる、桜庭一樹、篠田節子、高瀬隼子、高山羽根子、滝口悠生、津村記久子、中沢けい、西加奈子、似鳥鶏、東山彰良、深緑野分、藤井太洋、藤野可織、藤野千夜、古川真人、星野智幸、町田そのこ、町屋良平、松田青子、三浦しをん、山内マリコ、山崎ナオコーラ、柚木麻子、吉川トリコ、吉田恵里香、李琴峰

 今回の声明は、SNSを中心にトランスジェンダーへの攻撃や誹謗中傷が激しさを増しているなか、李琴峰さんが「文芸業界も社会の一部で、他人事ではない。業界の問題としてアクションを起こそう」と山内さんと柚木さんに声明の取りまとめを呼びかけ、実現したものです。
 山内さんと柚木さんは2022年、映画の原作者として映画業界の性暴力の撲滅を求める声明を作家18人の連名で発表し、2人が会員となっている日本ペンクラブの女性作家委員会で呼びかけ、「性加害のない世界を目指して」と題した宣言を今年9月に発表しているそうです。
 李さんは「差別言説を著書とする作家や評論家がいることによって、これまで通りに本を読めなくなり、居場所を失った当事者がいる」「言論や表現の自由を制限するのかという声があるかもしれないが、マイノリティを追いつめる誤った情報を世に出すことは表現の自由とはレベルの違う話だ」と語っています。

【追記】2024.11.20
 李琴峰さんが今日の夕方、自身のnoteに「李琴峰「トランスジェンダー追悼の日」アウティングされ声明」との記事を投稿しました。執拗な誹謗中傷・ヘイト・アウティングに堪えかねてのカミングアウトです。胸が張り裂けそうになります。彼女が生きる選択をしてくれたことに感謝するとともに、私たちは全力で彼女を支援しなくてはいけないと感じます。ぜひご支援をお願いします。
【追記】2024.11.21
 李琴峰さんのnoteの投稿が、何の説明もなく公開停止にされたそうです(ひどい…)。facebookに改めて投稿されたそうですので、そちらからお願いいたします。
 

 
 同日、『片袖の魚』の東海林毅さん(代表)、飯塚花笑さん、今井ミカさん、加藤綾佳さん、住本尚子さん、中村真夕さん、深田晃司さん、矢野ほなみさんが発起人となり、97名を超える映画監督が賛同し、同じ趣旨の声明を発しました。トランスジェンダーを標的とした苛烈な差別言説が社会に溢れていることに対し「強い懸念を抱いています」とし、差別への反対、連帯と支持を表明、「映画作品がLGBTQ+の人たちを社会から排除することに加担してはならない」「安心できる鑑賞環境および、私たち制作者自身の安全な労働環境のためにも、トランスジェンダーを含むLGBTQ+の人たちへの差別、偏見に反対します」「映画に関わる全ての人が誰一人、排除されない社会であることを望みます」としています。
 これは、李さんが声明を発表することを知った東海林毅監督が映画監督に呼びかけて実現しました。結果、97名もの監督が賛同してくれたそうです(本日の発表を知った方から複数、申し出があったそうなので、今後100名を超えてくると思われます)
 声明および賛同者は以下の通りです(見づらい方は公式サイトをご覧ください)

 なお、同日、東海林毅監督と俳優の中村中さん、水越とものりさんが登壇する記者会見も行なわれました。そちらの模様も近く、レポートいたします。


 
参考記事:
LGBTQ+差別に反対 小説家51人が声明 攻撃的言動の増加で(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241120/k00/00m/040/067000c
芥川賞作家らがLGBTQ+差別に反対する声明文を発表、文芸・出版業界に協力求める(FASHIONSNAP)
https://www.fashionsnap.com/article/2024-11-20/novel-writer-lgbtq-statement/
100人超の小説家・映画監督がLGBTQ+差別反対を表明(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/08c03c11b1a785c16173c99bf207980f2cc758b1

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