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トランス男性の臼井さんの姿を追った山陽放送のドキュメンタリーが日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞に
RSK山陽放送が岡山県に住むトランスジェンダー男性・臼井崇来人さんの10年を追った番組、RSK地域スペシャルメッセージ「望まれない性を生きて臼井崇来人闘いの十年」が日本医学ジャーナリスト協会賞の優秀賞に選ばれました。
日本医学ジャーナリスト協会は質の高い医学・医療ジャーナリズムが日本に根付くことを願って2012年に「日本医学ジャーナリスト協会賞」を創設しました。「オリジナリティ」「社会へのインパクト」「科学性」「表現力」を選考基準に、協会内に設けた選考委員会で慎重に審議し、受賞作品を毎年選んでいます。
今年は大賞1作品、優秀賞3作品が選ばれ、RSK地域スペシャルメッセージ「望まれない性を生きて臼井崇来人闘いの十年」は優秀賞を受賞しました。
臼井さんは、「体に著しいダメージを伴う手術を求めるのは自己決定権を保障した憲法に違反する」として2016年、手術をしないまま性別を男性に変更できるよう岡山家庭裁判所に申立てを行ないました。2017年、岡山家裁津山支部は「不合理な規定であるとはいえない」として訴えを退け、2018年、広島高等裁判所岡山支部もこの判断を支持し、臼井さんは最高裁判所に特別抗告しましたが、2019年1月、最高裁は「現時点では憲法に違反しない」として申立てを退けました(詳細はこちら)
その後、別の方が同様の裁判を起こし、2023年10月、最高裁は性同一性障害特例法の手術要件(不妊化要件)を違憲とした判決の際も、多くのメディアが臼井さんにコメントを求めました。同年12月、臼井さんは「希望を持って」再び申立てを行ないました。そして今年2月、めでたく戸籍の性別の変更を認められました。
RSK山陽放送は、岡山県の小さな村で農園を営み、妻や息子とつつましく暮らす臼井さんが、奥さんの励ましで裁判を闘い、敗訴し、それでも昨年、最高裁が違憲判決を出してくれて、再び立ち上がることができた、その姿を10年もかけて追い続け、ドキュメンタリー作品としました。
今回の受賞理由は、「女性として生まれ、男性の心をもつ臼井崇来人さんは、初め、現状のまま静かにしていたかったそうですが、妻の支えで裁判を起こし、「社会の壁」を打ち破る姿勢に変わっていきます。その過程を丁寧に描いている点が、ドキュメンタリー作品として素晴らしいと評価されました」「岡山の大学病院にはジェンダー関連疾患の診断や治療をするジェンダーセンターがあり、取材班は、国際的な動きや医学的側面も丁寧に報道しています。性的マイノリティの受け入れが遅れている日本での様々な問題が、ぎっしり詰め込まれています。偏見にさらされる可能性のある人々を10年にわたって撮り続けることができたのは、取材者への深い信頼なしには不可能だったことでしょう。そのリアル感は、今の時代に強いインパクトがあり、新しい時代が見えてくる作品になっていると評価されました」とのことでした。
18日に日本医学ジャーナリスト協会賞の授賞式が東京で行なわれ、制作班を代表して古川豪太記者に賞状とトロフィーが渡されました。
式典後には、受賞者らによるシンポジウムも行なわれ、社会的な弱者に寄り添ったジャーナリズムの必要性などが訴えられたそうです。
参考記事:
RSK地域スペシャルメッセージ「望まれない性を生きて臼井崇来人闘いの十年」 日本医学ジャーナリスト協会賞の優秀賞に選ばれる【岡山】(RSK山陽放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rsk/1562204
RSK山陽放送『望まれない性を生きて』が優秀賞に 医学ジャーナリスト協会賞(民放オンライン)
https://minpo.online/article/rsk.html