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【住民票続柄】犬山市で第1号カップルが手続き、大村市長が修正しない方針を表明

 愛知県犬山市で10月1日から同性カップルの住民票の続柄欄に男女の事実婚と同じ「夫(未届)」「妻(未届)」の表記が選べるようになったことを受け、早速、戸籍上女性どうしのカップルが手続きを行ないました。

 この日市役所を訪れたのは清水真由美さんと美里さん。「妻(未届)」と記載された住民票を受け取った美里さんは「うれしい。この人生で、公の住民票に『妻』と表記されるとは思っていなかった」と喜びを語りました。
 お二人は23年前からパートナーシップを築いています。今年4月には、犬山市の「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」で第1号カップルとして宣誓を行ない、続柄を「同居人」から「縁故者」に変更しました。その後、長崎県大村市が「妻/夫(未届)」の表記を認めたことを知り、犬山市に対応を要望、市も「周囲の理解が得られない方の、自分たちらしい生き方に寄りそう」として導入を決めました
 9月の報道では、市に要望を上げたのは「同性カップル」だとされていましたが、今回の中日新聞の記事によると、清水さんが夫(自認するジェンダーは男性)、美里さんが妻として暮らしているとのことで、お二人は周囲には理解しやすいよう「パートナー」と説明することが多いそうです。美里さんは「ずっと『妻』になりたかった。小さな声を拾い上げてくれた市に、勇気をもらった」と感謝の言葉を述べました。清水さんも「(性的少数者への)理解が深まる、かなり大きな一歩。続く市町村があればうれしい」と語りました。手に入れた住民票は額装して飾るそうです。
 思わず「おめでとうございます」と言いたくなるような、喜びにあふれるニュースでした。

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 一方、今年5月に初めて「夫(未届)」と記載した住民票を発行した長崎県大村市にも動きがありました。
 大村市の園田市長は今年7月、問い合わせに対して総務省が「実務上の支障をきたすおそれがある」などと回答したことを受けて、「われわれの問いに明確に答えていない」として再度、総務省に問い合わせることを明らかにしていましたが(詳細はこちら)、9月27日、大村市に総務省から改めて文書で回答が寄せられ、そのなかで「できる限り統一的に記録が行われるべき」「総務省からの見解を踏まえ改めてご判断いただきたい」と記されていたことがわかりました。
 園田市長は9月30日、記者会見を開き、「現場レベルでは実務上の支障はなく、社会保障制度の確認は住民票の記載のみで判断しない」「総務省の見解を踏まえたうえで、すでに交付した住民票については修正等は行なわない。今後もしっかりと適切な事務手続きを行なっていきたい」と述べました。また、総務省が今回の回答で再考を促す根拠の一つとして「(住民票は)できる限り統一的に記録が行われるべき」とした1999年の最高裁判決を提示したことに対し、「国民の意識は当時とは大きく変わっている」「同じような記載を検討している自治体も増え、パートナーシップ宣誓制度を導入している自治体も多く、議論になっている」「事務処理要領の中身自体が、時代に合っていないのではないか」「この機会を捉え、事務処理要領を見直す検討をお願いしたい」「国として議論を進めていただきたい」と述べました。「多様性を認める町であるために、理解を広げるために、パートナーシップ宣誓制度を導入した」「(当事者の希望に沿った現場の対応は)間違っていなかった」とも述べました。
 市長の会見を聞いた(初めて「夫(未届)」の住民票を交付された)松浦慶太さんは、「心から安堵している。撤回されるのではないかという心配もあったが、また穏やかに暮らせる。一貫して毅然とした態度で僕たちの権利を守ってくれている大村市に感謝しているし、大村市に引っ越してきて良かった。心強く感じている」と話しています。

 なお、総務省の回答が届いた9月27日、大村市の「みらいの風」会派の市議3人が「住民票の正確かつ統一的な記載を求める決議案」を議長に提出しましたが、賛成少数で否決されました。議会では「大村市より先に『パートナーシップ宣誓制度』を導入した長崎市では、住民票ではこのような記載はしていない」と決議案に賛同する声があった一方、「『正確かつ統一的な記載』は目的ではなく、目的は『住民の福祉』である」「すでに交付されているもの。水をさすことになる」などの反対意見も挙がり、結果、賛成7、反対16で否決されました。
 この動きに対し、松浦慶太さんは「この話題が上がる度に胸が苦しくなる。いつまでそんな議論をするのか」「この議論が市議会で上がる度に不幸せだと感じる。全国的にこの住民票の記載が広がるなか、そういう社会の空気を感知できておらず、とても低いレベルで議論しているように思う」と語っています。

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 もう一つ、世田谷区が11月から対応を始めることについて、日テレNEWSで改めて、少し詳しい報道がなされました。
 こちらのニュースでお伝えしていたように、保坂展人区長は「夫(未届)」「妻(未届)」と記載した住民票を11月から交付する方針を明らかにしていました。
 世田谷区は、「パートナーとしてつながりがあるように」との趣旨で2022年度から、申し出があった場合は続柄を「縁故者」とする運用を始めました。「縁故者」の記載を希望する申し出は、これまでに約10件あったそうです。
 さらに区は、「生きづらさを抱えている人の実態に沿った対応をしていく」として、同性カップルの住民票の記載を事実婚と同様に変更できるようにする対応を11月から始める方針を明らかにしました。
 この住民票をもとに、健康保険や生命保険などの扶養対象の可否などにどのような影響が生じるのかについては、「区から保険会社等に働きかけをすることはない」として、各企業の判断に任せたいとしています。
 区は、先行して実施している長崎県大村市や栃木県鹿沼市、神奈川県横須賀市などに具体的な運用方法について聞き取り調査を行なっているということです。来月から開始できるよう準備を進めていて、本庁を含めた区内10ヵ所の窓口や出張所で手続きができるよう調整しているそうです。

 

参考記事:
ずっとなりたかった「妻」に 同性カップルの住民票表記、犬山市で手続き第1号(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/966137

大村市 同性カップルの住民票 続柄の記載修正しない方針(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20240927/5030022090.html
大村市長 同性カップルの住民票の続柄記載 ”修正行わない”(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20240930/5030022107.html
長崎・大村市同性カップル続柄表記 国から再考求められるも市長「修正行わず 判断根拠が時代に合わない」(テレビ長崎)
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20240930007
同性カップル住民票「修正しない」長崎県大村市長 総務省の助言に従わず(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/1459735
同性カップル住民票、総務省が再考求める 大村市「修正しない」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS9W3HR4S9WTOLB00MM.html
同性カップル住民票の「夫(未届)」修正せぬ 長崎・大村市長(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240930/k00/00m/040/227000c

「慎重さ欠いている」同性カップル住民票《続柄》記載に異論の声→賛成少数で否決 長崎県大村市議会(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/1459766

同性カップル住民票の続き柄「夫・妻(未届)」に来月から 東京・世田谷区(日テレNEWS)
https://news.ntv.co.jp/category/society/45f4f216fd4b476996153fede15ae8ec

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