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賃貸物件の紹介資料に「LGBT不可」の文字…不動産会社が修正対応へ

 本日付の朝日新聞によると、福岡市内の不動産会社が扱う賃貸物件の紹介資料で、入居者の募集条件に「ペット不可」などの項目と並んで「LGBT不可」という項目が表示されたケースが複数あることが確認され、当事者を中心に落胆や戸惑いの声が上がっています。会社側は「不適切だった」として、対応に動いています。
 
 
 昨年2月、福岡市内に住む30代の男性は、住まい探しで訪れた不動産会社の店舗で、賃貸物件の間取り図や賃料などを記した資料に「LGBT不可」と記されているのを見て、言葉を失ったといいます。彼は同性のパートナーとの将来的な同居に向けた相談もできると思い、支援に熱心なこの会社を選びました。「当事者の目に触れたらどう感じるか、考えてほしかった」と語っています。
 この会社は朝日新聞の取材に対し、今年9月に初めて把握したと述べ、「LGBT不可」と物件資料に記載されていたことは「不適切で、誤解を招く事態だった」とコメントしました。同社によると、大手不動産情報サイト(SUUMOのことだと思われます)が2017年ごろに導入した「LGBTフレンドリー」という検索条件に対応するため、数年前に自社の物件管理システムを改修しましたが、担当者がシステムに入力する際、オーナーからLGBTカップルの同居承認を得た物件は「可」とし、オーナーが否定的なところや確認が取れていない物件は「不可」としていた可能性があるそうです。もともと、入力内容が客に提供する資料に記載されることは想定していませんでしたが、「社内で取扱いが十分に徹底されていなかった」ために今回の事態になったと見られています。
 同社は、「人的過誤によるもので、LGBTを差別する意図は一切ない」としたうえで、社内システムの改修を進めているそうです。


 
 2017年のNHKのニュースで、賃貸住宅への入居を拒否される事例として、練馬区に住む鈴木さんのケースが紹介されていました。
 男性二人で入居したいと不動産会社に申し出たところ、「家族ではない」として、相次いで断られ、「部屋を汚されそう」とか「周囲の住民とトラブルになるのではないか」といった、根拠のない理由も挙げられ、下見すらさせてもらえまず、不動産会社を回っては断られる状況が続き、入居可能なマンションを見つけるまで半年かかったそうです。鈴木さんは、物件を貸す側に同性愛者に対する根強い偏見があったと感じています。「何度も断られていらだちを感じましたし、同時に『これが現実なんだ』と痛感させられました。『男性二人だから入居を認められない』と判断するのではなく、私たちがまっとうに生活していることを知った上で、判断してほしいのです」(詳細はこちら

 2020年には沖縄の宜野湾市で、理想的な物件を見つけたものの、同意書に「LGBTの方は入居お断り」と書かれていたのを見て入居をあきらめた方のことがニュースになりました(ほかにも「外国人」「精神疾患のある方」も不可とされていたそうです)
 
 2018年にSUUMO(リクルート住まいカンパニー)が同性カップルの家探しの実状に迫る調査の結果を公表しており、家探しに苦労したという回答が4割に上っていました。また、「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」では、男性カップルの入居を断ったことがあるとの回答が8.3%、女性カップルでは5.7%との結果が出ていました。今後も「入居してほしくない」と答えた回答者も20%に上りました。
 早稲田大学法学部の棚村政行教授は「LGBTの人たちに入居拒否などの差別的な対応をする業者に対しては、行政が指導できると考えられる」と述べています。(ちなみに外国人については、国籍を理由として賃貸借契約を拒否することは違法であるとの判例が出ています)
 
 現代ビジネスの「ゲイカップルは「部屋探し」で一番苦労する…知らないところで行われている「意外な差別」」という記事では、同性カップルが不動産会社や物件オーナーから部屋を貸し渋られるケースが少なくない理由として、「家や不動産」の代表で住宅弱者支援専門家の會田(あいだ)雄一氏が「そもそもルームシェアできる間取りの賃貸の絶対数が少ないこともあり、管理会社や大家サイドが立場的に強く、入居者を選びやすい立場にあることも背景にあります」と指摘しています。「同性カップル、特に男性どうしで入居できるお部屋は難航しますね。「まだ女性どうしだったらよかったんだけど」などと言われてしまうケースも過去にはありました」「女性どうしの賃貸探しのほうがやりやすいというのも、ゲイカップルよりもまだマシというレベル感ですが、ゲイカップルが忌避される具体的な理由があるわけではありません。不動産業界のLGBTQに対する偏見も9割以上は世間の偏見に基づくもので、要するに風評被害を恐れているんです」「メディアでゲイが誇張して取り上げられがちなことも大きいと思います。少なくとも普段の生活では自分のセクシャリティを隠し、ひっそりと暮らしている人が大半で、ご近所さんや大家さんとトラブルに発展するようなこともまずありません。むしろ普通の人より悪目立ちしないように暮らしている人がほとんどだと思います」

 昨年施行されたLGBT理解増進法では「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資すること」が基本理念として示され、(不動産会社も含め)事業者に従業員への研修や普及啓発、就業環境の整備などが求められているため、不動産会社がLGBTQへの理解を深め、そのうえで大家さんにも理解を求めるということも十分ありえますが(あるいは自治体が大家さんや不動産会社に対して啓発を行なったり、不当な差別をやめるよう理解を求めていくことも考えられますが)、現状はなかなかそのようにはなっていないようです。差別をやめさせるという点では、やはりLGBTQ差別解消法を制定しなければ立ち行かないところに来ているのではないでしょうか(G7首脳宣言でもLGBTQが差別や暴力を受けない社会を実現すると謳ってますよね…)
 
【追記】2024.10.3
 LGBT法連合会が3日、「不動産会社の「LGBT不可」記載について」という声明を発表し、「このような表記を用いる商習慣が一般化しているとすれば、それは差別的取扱いそのものであり、強い遺憾の意を表明する」と述べました。
「多くの偏見は、悪意や害意のない思い込みや先入観から生ずるものであり、そのような偏見に基づいて特定の集団に対して他とは異なる対応をとることは、まさに差別的取扱いである。性的指向や性自認によって住宅から排除することに合理的な理由があるとは考えられず、分類自体が、差別的取扱いそのものであることを強く指摘する」
「人間の生活の基本となる「衣食住」の「住」について、平等な対応を実現するためにこそ、当会が創設以来取り組んでいる「SOGI差別禁止法」が不可欠であり、本件はその必要性を改めて浮き彫りにしたと言える」
「近く国の政策に関する活発な議論が行われると聞くが、既存の国土交通省のセーフティネット住宅制度の取り組みや業界団体の指導監督による取組の促進はもとより、抜本的な解決に向け、このような差別的取扱いを禁止する法制度に向けた前向きな議論と実現を強く期待するものである」
 
 
参考記事:
賃貸物件に「LGBT不可」表示 不動産会社「人的過誤」修正対応へ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASSB103WMSB1TIPE013M.html

ゲイカップルは「部屋探し」で一番苦労する…知らないところで行われている「意外な差別」(現代ビジネス)
https://gendai.media/articles/-/138126

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