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同性カップルの出産を罰則までつけて排除する差別的な法案が通りそうです

 第三者から精子や卵子の提供を受ける不妊治療などのルールを定めた特定生殖補助医療法案の最終案が7日、超党派の国会議員連盟で示され、同性カップルは対象外となったほか、法律婚以外のカップルに医療を提供すれば禁錮や罰金を科す罰則が新たに盛り込まれました。年内に国会に提出される見込みです。
 男女の婚姻だけを“正常”とみなし、事実婚や同性カップルやシングル女性の出産を罰則までつけて排除するのは恐ろしく差別的だと非難の声が上がっています。
 

 国立社会保障・人口問題研究所が2022年に実施した「全国家庭動向調査」で、「女性どうしのカップルも、生殖補助医療を用いて、子どもを持てるようにすべきだ」との意見が6割に上っています。しかし、この議連の国会議員たちは一貫して、同性カップルは対象外だとしてきました。
 2023年11月に行われた会合でも「精子、卵子提供を受けられるのは法律婚の夫婦に限定する」という案が示されており、子育てをする(したい)同性カップルを中心に、反対の声が多く上がっていました。
 子育てをしている(していた)性的マイノリティが242人に上ることを調査で明らかにした一般社団法人こどまっぷの長村さと子さんは、「病院で治療を受ける選択肢が禁止されれば、当事者は安全で適切な医療を国内で受けられなくなる可能性が高い」として11月に「子どものいる未来を持つチャンスをください」との署名を立ち上げました。
 
 しかし、そうした声は国会議員には届きませんでした。
 今回示された最終案では、提供精子や卵子を扱う医療機関の認定制度を作り、あっせんは許可制とする、提供やあっせんに関わる利益の授受は禁止し、違反すれば2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方を科すことになります。代理出産は認められません。特定生殖補助医療の対象は法律婚の夫婦に限られ、事実婚や同性カップル、独身女性などは排除されるとともに、法律婚以外のカップルらに医療を実施した医療機関が中止などの命令に違反した場合、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方を科すという厳しい罰則が設けられました。
 一方、精子提供に関しては、SNSなどで知り合った提供者との間で女性がトラブルに遭うケースも報告されているにも関わらず、医療機関を介さない個人間のやりとりに対する規制は見送られました。
 
 同性カップルが子どもをもうけたいと思ったとき、医療機関を介すると罰せられてしまうため、個人間で精子提供を受けることが必要になりますが、そのような過程がアンダーグラウンド(闇)化してしまい、様々な危険に直面することが危惧されます。
 
 今回の最終案を受けてこどまっぷの長村さんは、「すごくショック」「どうやっても、どうあがいてもこの方向は動かないことはわかってはいるけれども、対象から外れてしまった人たちの今後の苦しみとか、選択肢のなさ、危険なことに遭うという予測はできる状況なので、未来が閉ざされていくという現状がすごく苦しい」と語りました。そして「今まで病院に行けていた人たちは、これからは病院に行けないから個人との取引になります。とても怖い話ですよね。法から外れた人たちの自己責任になるんですよね。これって誰も望んでないんじゃないのかなって思うんですけれども、結局は婚姻夫婦にしか権利はないので“身勝手な私たち”という責任が負わされることになります」と指摘し、「対象者の拡大をとにかく本当に検討してほしい」「この議論をし続けてほしい」と訴えました。

 長村さんは8日、X(旧Twitter)で以下のようなコメントを発表しました。
「私は、制度の枠が必要だと思っています。まったくルールがない状態は無法地帯になり、とても恐ろしいことだと感じているため、法案が作られることに反対しているわけではありません。
 ただ、私はこの数年、本当に多くの妊活希望者を安全な医療につなげてきました。主に同性カップルやシングル女性ですが、長時間にわたる面談を行い、その際には実にたくさんの人生の話を聞いてきました。迷いや悩みの中で、藁をもつかむ思いで立ち向かっている皆さんの姿を、誰よりも応援し、見守ってきた自負があります。
 あらゆる偏見や差別の中で、子どもを産み育てたいという想いは簡単なことではありません。
 どうかこの法案での法律の枠から外された人たちがどうなってしまうのか、もう一度考えて欲しいのです。対象者の拡大をお願いしてきましたが、私はまだしつこくお願いしたいのです。
 たくさんの声があること、そこには現在も治療中の多くの人がいて、さらに未来を担う若者たちの人生の選択肢を奪うようなことはしないでほしいと願ってやみません。
 生まれてきた我が子が、胸を張って生きれる未来を見せてあげたいのです」
 そして、「緊急呼びかけ」として、#安全な生殖医療を全ての女性にというハッシュタグで声を上げるよう呼びかけています。Xでは早速このハッシュタグを使って「罰則規定?ありえない」「性差別だ」「なんで少子化を促進する法案作るのかな?」「気持ち悪くて吐き気がしてきちゃった」といった声が上がっています。

 子を産み育てたいと切実に願う人たちの未来を奪う、この残酷な法案が見直されることを願います。
 

 

参考記事:
特定生殖補助医療法案の最終案、罰則や利益授受禁止など 超党派議連(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241007/k00/00m/040/183000c

衝撃的な法案が固まる。女性&同性カップルの「希望が絶望に変わる」内容に「対象者の拡大を」当事者呼び掛ける(AllAboutニュース)
https://news.allabout.co.jp/articles/o/85717/

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