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【同性パートナーシップ証明制度】福島県、新潟県、滋賀県、山口県などで制度がスタート
福島県が9月2日、県民一人一人が個人として尊重され、誰もが安心して暮らすことのできる社会の実現に向けて「県パートナーシップ制度」を導入しました。県男女共生課の中村英康課長は「この制度を知ってもらい、市町村や民間事業者のサービスにも広がることを期待しています」と話しました。
8月30日のニュースでもお伝えしたように、「県パートナーシップ制度」は戸籍上同性のカップルだけでなく、事実婚の異性のカップルも対象です。証明書に法的な効力はないものの、県営住宅への入居申込みや、県立病院で病状の説明を受けること、犯罪被害者の遺族見舞金の支給、住宅確保給付金、生活保護制度、DV(家庭内暴力)相談の利用などが配偶者と同様に認められるようになります。
届出はオンラインと郵送で受け付け、2週間程度で証明書が交付されます。
県内では伊達市、南相馬市、福島市、本宮市4つの市で同様の制度が始まっていて、今後は証明書を相互利用できるよう連携を進めていくということです。
福島民友新聞は「パートナーシップ/不利益と差別の解消に期待」という社説を掲載し、「新制度により、性的少数者など、社会的に少数派の人々が被っている不利益や差別の解消につながることに期待したい」と述べました。そのうえで、「骨子案に関する意見公募では、医療機関での面会や手術の同意など、家族であることが条件となる場面で使えなければ実効性が乏しいとの声が寄せられた。証明書があっても、家族として認めるかどうかは医療機関の判断となる。勤務先での扶養手当、忌引などの休暇の適用についても同様の懸念があるだろう」と指摘し、「カップルとして認められるのが行政のサービスに関することだけでは、不便解消の効果は小さい。県の制度導入を機に、医療機関を含めた事業所などは、性的少数者や事実婚のカップルへの対応を改めて検討してもらいたい」と訴えました。「県や市町村には、引き続き性的少数者などを含め、全ての人々の人権や生活を守る大切さを浸透させていくことが求められる」
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新潟県でも「県パートナーシップ制度」が9月2日に始まりました。新潟日報社の調べでは、初日は17時までに県庁での届出を予約する電話が1組あり、受け付けたそうです。県の平田美由紀男女平等・共同参画統括監は「県の導入により、県内全域で制度を利用できるようになった。パートナー関係の説明に負担を感じている人たちがいれば、活用してほしい」と呼びかけました。
県の制度では、電子申請、郵送、持参のいずれかで届出を行なうことができ、受け付けてから10日ほどでパートナーシップ証明書に当たる受領証を発行します。受領証があると、公営住宅の入居申込み、県立病院での病状説明や面会、手術の同意等、県税に係る納税証明請求書の使者としての申請、住居確保給付金制度、心身障害者扶養共済制度などを家族として利用できるようになるほか、県内市町村で受けられるようになる行政サービスもあります(県の公式サイトに順次掲載)
新潟日報によると、新潟県では同じ9月2日、胎内市でも市独自のパートナーシップ制度を始めたそうです(市のホームページにはまだ掲載されていないようです)。県内では7市が導入済みとなりました。
地元企業も県の制度に呼応し、第四北越銀行が同日、同性パートナーや事実婚の場合も住宅ローン審査時の収入合算などの対象とする制度を始めました。生計を同一としていることの確認に県の証明書を利用できます。担当者は「以前から個別の相談には応じていたが、制度化で不安や迷いを抱かず、ローンの利用を検討してもらえるようになる」と話していました。
県内では大光銀行が2018年から、新潟信用金庫も2021年から同様の対応を始めていました。
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滋賀県でも9月から「パートナーシップ宣誓制度」が始まり、1組目のカップルが県庁で宣誓書受領証(パートナーシップ証明書)を受け取りました。宣誓第1号となったのは、いずれも大津市で暮らす50代の方で、戸籍上女性のトランス男性と女性のカップルです。お二人は「非常にうれしく思う。(制度を)ずっと待っていた」と笑顔で喜びを語りました。これまで26年間、いっしょに暮らしてきたお二人は「(パートナーに代わって)病院へ薬をもらいに行っても、『本人か家族以外には出せない』と断られてつらかった」「これからは、いちばん大事なときに、そばにいてほしい人にいてもらえる」と語りました。
県によると、さらに3組が宣誓を予定しているそうです。
滋賀県では、宣誓によって、県営住宅への入居などが認められるようになります。宣誓を選択しないカップルも(もともと親族に限定していないため)県立総合病院での手術同意・面会や養育里親の認定登録などのサービスを受けられるそうです。また、県内市町村で受けられるようになる行政サービスもあります(県の公式サイトに順次掲載されます)
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福島県、新潟県、滋賀県のほか、山口県でも「パートナーシップ宣誓制度」が導入されました。滋賀県と同様、宣誓受領証があると県営住宅入居申込みなどが認められますし、県内市町村で受けられるようになる行政サービスもあります。
都道府県単位で同性パートナーシップ証明制度を導入した自治体は、これで29都府県となりました。
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岡山県で「パートナーシップ宣誓制度」を導入している13の市町のうち、岡山市・総社市・笠岡市・瀬戸内市・備前市・赤磐市・井原市・真庭市・美作市・早島町・和気町の11の市町が10月1日から連携協定を結ぶことがわかりました。これにより、宣誓を行なったカップルが他の市町に引っ越した場合も、新たに宣誓を行なう必要がなくなり、カップルの負担が軽減されます。
協定に参加する各自治体は、手続き面に加え精神面でもカップルの負担軽減が期待できるとしていて、今後制度を導入するほかの自治体にも参加を働きかけていくことにしています。
県内では今後も、津山市が10月から制度を導入予定で、玉野市は来年度の導入に向けて準備を進めているところです。
これまでに制度を利用したカップルは、岡山市で34組、倉敷市で17組、総社市で5組、真庭市で3組、笠岡市と浅口市でそれぞれ2組、美作市と和気町でそれぞれ1組の合わせて65組だそうです。
「パートナーシップ宣誓制度」をめぐる自治体間の連携について、性の多様性を研究している岡山大学の中塚幹也教授は「当事者の望みはあくまで法律で同性婚が認められることだ」と指摘したうえで「国が同性婚を認めないなか、自治体が今、困っている人のためにできることの一つとしてパートナーシップ制度を取り入れており、連携する自治体が増えていくことで当事者が社会から認められていると感じ心の支えになる」と語っています。また、同じ中国地方の鳥取県・島根県・山口県では県単位での制度も導入されており、中塚教授は「岡山でも県全体で制度を導入しようという動きにつながっていく可能性はある。自治体間の連携の広がりを見て県がどう判断するかだ」としています。
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それから、四国の愛媛県では、2023年末に「ファミリーシップ制度」導入の検討を表明した松山市で制度(案)が公表され、パブリックコメント(意見公募)が始まりました。10月1日まで受け付けます。松山市在住のみなさん、ご意見があれば送ってみてはいかがでしょうか。
参考記事:
福島県 「パートナーシップ制度」の運用はじまる(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20240902/6050027289.html
福島県がパートナーシップ制度開始(福島放送)
https://www.kfb.co.jp/news/fukushima/index.php?id=202409020734
<福島県>県が9月2日から「パートナーシップ制度」の申請を受け付け開始(福島テレビ)
https://www.fukushima-tv.co.jp/localnews/2024/08/2024083100000004.html
パートナーシップ制度 福島県が導入 9月2日から申請受け付け開始(テレビユー福島)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tuf/1399279
パートナーシップ制度 福島県でも9月2日から導入(福島中央テレビ)
https://news.ntv.co.jp/n/fct/category/society/fc190289912f374afbabd389e398e39127
【8月28日付社説】パートナーシップ/不利益と差別の解消に期待(福島民友新聞)
https://www.minyu-net.com/news/detail/2024082808241826083
新潟県「パートナーシップ制度」スタート!性的少数者カップルの関係を公的証明、初日は届け出予約1組(新潟日報)
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/469661
「ずっと待っていた」 パートナーシップ宣誓制度 県、第1号に受領証(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240903/ddl/k25/040/196000c
県のパートナーシップ制度、第1号のカップルが宣誓(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS9245LNS92PTJB004M.html
滋賀県がパートナーシップ制度開始、県庁で1組目が宣誓 「ずっと待っていた」(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/952673
「パートナーシップ宣誓制度」導入の県内11自治体が連携協定(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/okayama/20240904/4020021328.html