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今年のエミー賞のクィア的な名場面
今年のエミー賞は日本人で初めて真田広之さんが主演男優賞に選ばれ、『SHOGUN 将軍』が歴代最多の計18冠を獲得という話題で持ちきりですね。映画評論家の町山智浩さんが述べているように、この作品が企画された2017年頃は『ゴースト・イン・ザ・シェル』の草薙素子を白人女性が演じたことなどが問題視されていた時期で、真田さんは(以前はステレオタイプに描かれたり白人に置き換えられたりしがちだった)日本人の表象を公正に描き、リプレゼンテーションを高めたヒーローだと言えます。
同じようにテレビ番組や映画におけるクィアのリプレゼンテーションを高め、LGBTQ+が公正に描かれることを求めて活動してきたGLAADが、今年のエミー賞で活躍したLGBTQ+の俳優や、LGBTQ+を題材にした作品の受賞についてまとめた記事を掲載しています。
まず、2020年のエミー賞でコメディシリーズ7部門を完全制覇という快挙を達成したドラマ『シッツ・クリーク』のユージーン&ダン・レヴィ父子が、今回のエミー賞の総合司会をつとめました。
ダン・レヴィがParamount+の『フェロー・トラベラーズ』のジョナサン・ベイリーとマット・ボマーを称えて「ストレートでなくてもゲイの役でエミー賞にノミネートされることを証明したね」と語ったのは忘れがたい瞬間でした。
そこにAppleTV+で冠番組『旅嫌いユージン・レビィのトラベルガイド』を持っているユージーンが付け加えて「PRIDEを持って目に見えるかたちでLGBTQ+コミュニティと提携してきたAppleTV+に参加できたことを誇りに思う」と述べたのに対し、ダンが大げさに「『+』が意味しているのはそういうことじゃないよ、Paramount+やDisney+、ESPN+の「+」はLGBTQ+コミュニティとは関係ないんだ」と述べて観客を笑わせる場面もありました。
LGBTQの受賞としては、ジョディ・フォスターが、これまでエミー賞5冠に輝き、犯罪ドラマ史上屈指の傑作と絶賛される『トゥルー・ディテクティブ』のシーズン4『True Detective: Night Country』でリミテッド部門主演女優賞に輝きました。ジョディ・フォスターのエミー受賞は初めてです。
『ル・ポールのドラァグ・レース』の8年連続受賞を打ち破ったのが、殺人ミステリーをテーマにしたゲームショー型のリアリティ番組『The Traitors』で司会を務めるアラン・カミング(バイセクシュアルの俳優。『チョコレート・ドーナツ』に主演)です。アランはトランスジェンダーのフラッグをあしらったメダルを胸に着けて登場しました。
もう一つの大きな受賞は、Netflixで大ヒットした『Baby Reindeer(私のトナカイちゃん)』でした。リミテッド部門の最高賞である作品賞に輝いたほか、クリエイターかつ主演のリチャード・ガッド(バイセクシュアルのコメディアンです)が主演男優賞と脚本賞を受賞。体の大きなストーカー女性を演じたジェシカ・ガニング(レズビアンの俳優です。『パレードへようこそ』にも出演しています)が助演女優賞を受賞しています。
リチャード・ガッドは受賞スピーチで、苦しんでいる人々を励まして「自分自身が信じることをするんだ、そうすれば収まるべきところに収まるさ」と語りました。
この作品にはトランスジェンダーのテリーというキャラクターも登場していて、当事者であるナヴァ・マウがその役を演じ、助演女優賞にノミネートされています。彼女はレッドカーペットでインタビューに応じました。2014年にトランスジェンダー俳優として初めてエミー賞の演技部門にノミネートされたラヴァーン・コックスと数秒間ぎゅーっと強くハグしたあと、目に涙をためたラヴァーンが「あなたのことを誇りに思う」「10年前、私はトランスジェンダーであることをカムアウトしている人として初めてエミー賞にノミネートされた。それから10年。私で最後じゃなかった。あなたは4人目であり、この部門では初めて(のノミネート)です」と語り、ナヴァは「私たちコミュニティがこれまで闘ってきたのは、心からの物語、人間的な部分に焦点を当てた物語を語るためです。だって、それが私たちトランスジェンダーですから。私たちは、まず第一に人間なんです。だからこそ『私のトナカイちゃん』は祝福されるべきだと思っています。これはLGBTQについてのドラマです。トランスジェンダーの登場人物がいます。誇りに思っています。私たちトランスジェンダーが、ありのままの姿でスクリーンに出演し続けられることを願っています」と語り、続けて「ラヴァーンが人生を変えてくれたきっかけでした」とも語りました。
『Hacks』も次世代のクィア・ドラマと称される作品で、ノンバイナリーの俳優カール・クレモンズ・ホプキンズなども出演してきましたが、今回、主演女優のジーン・スマートがコメディ部門の主演女優賞に輝きました。
それから、U-NEXTの記事でライターの清水久美子さんも「最も筆者の心を打った」と熱く語っていたのが、グレッグ・バーランティが理事会賞を受賞したことです。
グレッグ・バーランティは人気ティーン・ドラマ『ドーソンズ・クリーク』で初めて同性のキスを描き、『ブラザーズ&シスターズ」で初めて同性婚を描き、『スーパーガール』で初めてトランスのスーパーヒーローを描きました。すべてプライムタイムのドラマです。
マット・ボマーと、『ドーソンズ・クリーク』のジョシュア・ジャクソンから賞を受け取ったグレッグは、「他のクィアの子たちとつながることが難しかった幼少期を過ごしたが、そうかもしれないと思う子に『ダイナスティ』や『ダラス』が好きか、『ゴールデンガールズ』の4人の名前が言えるかどうか尋ねることで確認していた」と語りました。「エイズが猛威を振るい、大勢の仲間が亡くなって、路上で彼らのためにプロテストした」とも。
グレッグ・バーランティは当時の友人たちをモデルにウェストハリウッドに住むゲイたちの生活を描いた名作映画『ブロークン・ハーツ・クラブ』(2000年)の脚本と監督を、『Love, サイモン 17歳の告白』の監督を、『僕の巡査』では製作を務めています。米国のテレビ界において最もクィアのリプレゼンテーションの向上に貢献してきた人物の一人であるグレッグが今回、このような名誉ある賞を受賞したこと、本当に素晴らしいですね。拍手!
参考記事:
Emmys 2024: Jodie Foster Wins First Emmy; Greg Berlanti Honored; ‘Baby Reindeer’, ‘Hacks’, ‘The Traitors’ Mark Big LGBTQ Wins(GLAAD)
https://glaad.org/emmys-2024-jodie-foster-wins-first-emmy-greg-berlanti-honored-baby-reindeer-hacks-the-traitors-mark-big-lgbtq-wins/
10年を挟んだトランスジェンダー俳優の快挙に涙──ナヴァ・マウとラバーン・コックスがエミー賞で抱擁(VOGUE JAPAN)
https://www.vogue.co.jp/article/laverne-cox-nava-mau-emmys-2024-red-carpet-hug-transgender-representation
「もっと大きな夢を持っていい」助演女優賞にノミネートされたナヴァ・マウ、レッドカーペットで語る【エミー賞】(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/josephlongo/laverne-cox-nava-mau-red-carpet-2024-emmys-1
今年は『SHOGUN 将軍』祭りだった第76回エミー賞。その他の受賞作や候補作も要チェック!(U-NEXT SQUARE)
https://square.unext.jp/article/emmyawards-2024