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【住民票続柄】逗子市と葉山町も9月から交付
長崎県大村市が全国で初めて男性カップルに続柄欄に「夫(未届)」と記載した住民票を交付したことを受け、栃木県鹿沼市、神奈川県横須賀市、香川県三豊市も同様の記載を行なう対応を始め、東京都世田谷区、杉並区、中野区なども検討を表明しています。これらに続き、新たに神奈川県の逗子市と葉山町が来月2日から交付を始めることを発表しました。
神奈川県の逗子市と葉山町は27日、同性カップルの住民票に異性間の事実婚と同じ続柄欄の表記を記載し、交付する方針を同時に明らかにしました。県内では横須賀市がすでに7月から「夫または妻(未届)」との記載を認めており、両市町が2例目となります。
なお、長崎新聞によると、大村市で「夫(未届)」と記載した住民票を交付された松浦慶太さんと藤山裕太郎さんは23日夜、市内で開かれた市民団体の勉強会に登壇し、「全国を変えるだけのポテンシャルがある市だ」と語りました。
お二人が5月、「夫(未届)」と記載した住民票の交付を実現して以降、同様の対応が全国に広がっています(一覧はこちら)。総務省は7月に「実務上の支障の恐れがある」などとコメントしましたが、大村市長は「われわれの問いに明確に答えていない」とし、再度質問状を送付しています(詳細はこちら)
松浦さんは希望通りの住民票を交付されるに至った経緯などを説明し、「住民がとても親切で同僚の理解もあり、こんなすてきなことが起きるとは。大村に来て想像の何倍も幸せです」と喜びをあらわにしました。一方、7月に一部の市議が市の手続きに注意を促す決議案を議会に提出しようとしたことについて「決議が出たら次の人たちは(同様の対応が)できなくなる。もったいないと思った」と語りました。
藤山さんは家族にカミングアウトした際、「つらかったやろ」と言いながら温かく受け入れてくれたと語り、「(今は)ありのままの自分でいられる」と笑顔を見せました。松浦さんはアライという言葉を紹介し、「社会の多数派は当事者ではないが、当事者ではないからこそ変えられることが多い」と語りました。
長崎放送は、お二人のこれまでの歩みを追ったシリーズを放送してきましたが、最終回となる18日の「「兄は昔から女っ気がなかった」カミングアウトに泣いた弟」は、涙なしでは観られない番組でした。
藤山裕太郎さんの弟・雄大さんは去年5月にカミングアウトを受けました。「つきあっている人がいるって言ってたんだけど、男の人なんよね…」と言われて、雄大さんは「なるほどね、いいんじゃない」とできるだけふつうに応じました。しかしその後、すでに結婚していること、結婚式も挙げたこと、家族に迷惑をかけたくなくて言い出せなかったことを聞いて、「もっと早く話を聞いていたら、みんなで結婚式に駆け付けたのに」と、悔し涙を流したそうです。
「家族に心配をかけまいと、男性を愛した事実を隠した兄。その優しさが、兄自身を苦しめていた。家族仲が良かった分だけ言い出せず、兄が苦しみ続けてきたことを思うと胸が締め付けられた。自分が想像していたより、何倍も何十倍も、兄の苦しみは深いことを初めて知った」
ただ愛する人と一緒に暮らし、結婚を家族にも祝福され、幸せに暮らしたい――異性愛者なら何も迷うことなくできることが、こんなにハードルが高くなってしまうのは、世間の偏見や差別(ホモフォビア)ゆえのことです。同性カップルのパートナーシップも結婚と同じだよ、と制度的にも認められたら、次世代の当事者がこんなに苦しむことはなくなることでしょう。お二人は住民票の続柄について勇気ある一歩を踏み出し、全国初の快挙を成し遂げ、こうして(一部のアンチの人のいやがらせにも直面しながら)まっすぐに平等を訴えています。その根底には「ただ愛する人と一緒に暮らし、結婚を家族にも祝福され、幸せに暮らしたい」という願いがあると思います。
国も早く、憲法で保障された権利である結婚を、全ての人に認めてほしいです。
【追記】2024.9.2
西日本新聞が「【社説】同性の事実婚 当事者に寄り添う行政を」という社説を掲載しました。大村市の対応について「同性婚が法的に認められていない中で、住民の尊厳を最大限重んじる対応と言えよう。地方の自治体から始まったこの流れを、性的少数者の不利益解消につなげたい」と評価する内容で、いかに同性カップルが不利益を被っているかを説明しながら、「今回の対応は、停滞する同性婚の法整備の議論に一石を投じた。同性婚が認められれば、同性が故の不利益は解消される。政府と国会は法制化に向け早急に議論すべきだ」と結んでいます。
参考記事:
逗子市、住民票の同性カップル続柄を事実婚表記 9月から交付へ(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/member/node/1105540
葉山町、住民票の同性カップル続柄を事実婚表記 9月2日から交付(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/member/node/1105784
長崎県大村市は「全国変え得る」 同性カップル住民票 当事者が思い語る(長崎新聞)
https://nordot.app/1200258343200932355?c=39546741839462401
「兄は昔から女っ気がなかった」カミングアウトに泣いた弟《LGBTQカップル住民票問題》【第4回/第4回】(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1364255