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パラリンピック開会式にクィアのシンガーが出演
パリパラリンピックの開会式が28日、コンコルド広場で開催されました。こちらもゲイの芸術監督トマ・ジョリーが演出を手がけましたが、トマは「『コンコルド』はフランス語で融和という意味。(共生社会の実現へ)社会の変革の場になることを願いたい」と語っていて、その言葉通り、融和と共生社会がメインテーマとして表現され、美しくも感動的なセレモニーになりました。ショーでは数人の歌手がパフォーマンスしましたが、そのうちのChristine and the QueensとLucky Love(Luc Bruyère)がクィアのシンガーだということはあまり報じられていないと思います。
コンコルド広場のメインステージでのショーの出だしは、まるで『マトリック』のように黒づくめでサングラスをかけた100人超のダンサーたちと、赤、白、青の衣装を着た車椅子だったり杖をついていたりする数十人のダンサーたちが対照的に、相容れないような集団として表現されました。
選手が入場する前、フランスの現代音楽シーンを代表するクリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズが登場し、エディット・ピアフの「水に流して」を熱唱しました。クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズはパンセクシュアルでジェンダークィア(ノンバイナリー)の歌手です。
選手が入場している間、トリコロールの長い長い裾を引きずったDJがプレイしているのもオシャレでした。大トリのフランス選手団が入場した際は曲が「おおシャンゼリゼ」に切り替わり、みんなで大合唱してたのも素敵でした。
2つめのショーで、障がいを持つパフォーマーのグループの一員として登場し、歌い始めたのは、ゲイで、生まれつき左腕が欠けているシンガーソング・ライターのLucky Love(Luc Bruyère)でした。彼は持ち歌の「Masculinity」を「My Ability」に替えて歌いました。『ル・モンド』誌のインタビューで彼は「女性のアスリートも誰もが包摂されるように歌詞を書き換えたんだ」「いちばん大事なのは、このセレモニーで誰も排除されてると感じないようにすることだったんだ」と語っています。
3つめのショーでは、対立していたマジョリティとマイノリティの集団が一緒になって、新しいスポーツを作ろうとするパフォーマンスが繰り広げられ、とても感動的でした。
聖火リレーの場面では、コンコルド広場のメインステージで(生涯独身を貫き、ゲイだったのではないかとも言われている)ラヴェルの「ボレロ」が使われ、(さすがにモーリス・ベジャールの振付ではありませんでしたが)トーチを持った大勢のダンサーが踊る姿がとても印象的でした。そして聖火ランナーがチュイルリー公園へと入っていき、2人の男女に聖火を手渡し、聖火台へとゆっくり進んで行く時には(人類が生んだ最も美しい音楽の一つではないかと思われる)ラヴェルの『ダフニスとクロエ』第2組曲の「夜明け」が使われ、本当に美しく、感動的でした。
最後に「セレブレーション」と題して、再びクリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズがメインステージに登場して「Born to be alive」を歌い、花火が上がり、開会式は華やかに幕を閉じました。
さすがは「芸術の都」バリ、さすがはゲイの芸術監督だと思わせるような、美しくも感動的な、実に素晴らしい開会式でした。
参考記事:
障害者、健常者が一緒に躍動 芸術監督「変革の場に」(共同通信)
https://nordot.app/1200809823737561296?c=302675738515047521
Christine and the Queens, out gay flagbearers bring joyous queer vibes to Paralympics Opening Ceremony(Outsports)
https://www.outsports.com/2024/8/28/24100801/paralympics-opening-ceremony-christine-and-the-queens-paris-2024-team-lgbtq/