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来年の国勢調査で配偶者としての集計を求める集会が開催

 「Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」(以下、MFAJ)が7月30日、来年実施の国勢調査に向けて「同性パートナーを配偶者として集計すること」を求めるオンライン集会を開きました。これまでの国勢調査で同性カップルは、世帯主との続き柄を「配偶者」と回答しても、誤記(エラー)として扱われたり(2015年)、「他の親族」という分類に上書き修正される(2020年)という憂き目にあってきましたが、犯罪被害者遺族給付金訴訟最高裁判決で同性カップルも事実婚相当だと認められ、住民票でも事実婚度と同じ続柄の表記を認める自治体が増えているなか、今度こそ(事実婚と同様)配偶者としてカウントしてほしい、という要望です。当事者や有識者のほか、東京都品川区の森沢区長や超党派LGBT議連の事務局長を務める議員なども要望に賛同しました。
 
 
 国勢調査データは、人口、世帯、住宅、就労状況等、人々の暮らしぶりの基礎となる情報で、政策決定の基礎情報として使用されるのはもちろん、学術研究や自治体、民間企業にも貸し出され、選挙区別国会議員定数算定などにも使用される、国の基幹統計となる非常に重要なデータであり、公共的な共有の財産です。しかし、そのような重要なデータであるにも関わらず、同性カップルの存在は反映されていません。そのことは、国勢調査の「データによる正確な状況の把握」という目的にも反しますし、統計法第六十条(「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」への処罰規定)にも違反するのではないでしょうか?
 国勢調査は国内に住むすべての人・世帯を対象に実施されている全数調査で、住民票などの届け出とは無関係に、世帯の実態を調査するもの。そして、時代とともに、より情勢に合った形で行われるよう、毎回有識者会議で検討が行われ、修正が加えられています。1920年に初めての国勢調査が行なわれた際は、法律ではまだ定められていなかったにも関わらず、事実婚や内縁関係のカップルも婚姻として回答することができました。法制度に先立って調査が実施されたのです。では、なぜ同性カップルは調査から排除されるのでしょうか?

 世界に目を向けてみると、カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどは2000年代から、英米仏なども2010年頃から同性カップルを国勢調査で集計・公表しています。世界銀行と国連開発計画は、SDGsと紐づけた「LGBTI Inclusion Index」という指標を示していますが、5つの指標のうち「政治・市民参加」のトップに「統計調査でLGBTIQを排除していないか(性的指向、性自認、性別の多様性を包括しているか)」という項目が設定されています。経済協力開発機構(OECD)が2019年に発表した「図表で見る社会2019(Society at a Glance 2019)」では、LGBTに焦点を当てた特別章が設けられ、「LGBTの存在と、彼らが被る不利益を国の統計で可視化することは、LGBTの人々の社会的包摂の前提条件である」とされています。
 
 日本でも2010年の国勢調査の際、世田谷区の上川あや区議が、同性カップルが配偶者として回答すると“ 誤記”と見なされ「その他」に書き換えられることを明らかにし、コミュニティ内に問題意識が広がりました。松浦大悟参院議員(当時)は国会で、外国で同性婚した日本人同性カップルについて国勢調査でどう扱われるのかと質問。また、共生ネットが総務省統計局に同性カップルの集計・発表を要望するなどしました。
 2015年の国勢調査の際も、いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン、EMA日本、共生ネット、パートナー法ネット、LOUD、レインボー金沢の6団体で同性カップルを集計・公表するよう要望を行ないましたが、聞き入れられませんでした。ちなみに2015年からWebでも回答できるようになり、システム的には同性カップルも「世帯主」と「配偶者」で回答できますが、そうした回答は統計局内で修正され、修正前のデータも提供されませんでした。
 2015年以降、自治体の同性パートナーシップ証明制度が全国に広がりを見せ、名乗り出るのは勇気が要るかもしれないような地方の町も含めて数千組もの同性カップルが、家族と認められたいという思いで、パートナーシップ宣誓や登録の申請をしています。
 同性パートナーの存在は「誤記」でも「その他」でもなく、パートナーであり家族であるときちんと認めてほしいと思う方は全国にたくさんいらっしゃるはずです(もちろん、すべての同性カップル世帯にそのように回答することを強要するわけではありません。それぞれの家庭の事情があるでしょうし、回答しても大丈夫だと思える方はしましょう、ということです)
 
 2020年にはMFAJと8団体が共同で「レインボー国勢調査プロジェクト」を発⾜させ、(コロナ禍のまっ最中であったため、集会などが思うようにできなかったものの)総務大臣に要望書を提出するなどしました。国会では源馬謙太郎議員がこの問題について質問し、「世帯主」と「世帯主の配偶者」の性別が同一であった場合は「世帯主の配偶者」を「他の親族(叔父、叔母、甥、姪など)」として集計するとの答弁を引き出しました(「誤記」や「その他」よりはマシになったものの、なぜ事実婚のカップルと同様に「配偶者」とされず、「叔父」や「叔母」の分類にされるのか、との疑問はぬぐえません)
 
 7月30日の集会に登壇した(「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」を主催してきた)カラフルブランケッツ理事長の井上ひとみさんは「法整備をしてから検討する、という意見もありますが、法整備のためにも、正確に実態を把握する必要があると感じます」と要望しました。
 井上ひとみさんとパートナーの瓜本淳子さんは2011年から一緒に暮らし、2015年には結婚式を挙げました。2018年には大阪市でパートナーシップ宣誓を行ない、家族にも認められ、婚姻した夫婦と変わらない生活を送っています。2020年の国勢調査では、井上さんを世帯主、瓜本さんを配偶者として回答したそうです。配偶者と書いても「他の親族」として集計されてしまうことについて井上さんは「配偶者じゃないと言われて本当に心外。なんで勝手に変えるのか」と厳しい表情で訴え、「異性であれば事実婚でも配偶者になるわけですから、同性カップルもそのまま集計してよいと思います」と訴えました。
 
 早稲田大学社会科学総合学術院の釜野さおり教授は、同性パートナーを配偶者として集計することについて「男性どうし、女性どうしのカップルの比率や格差、国籍の組み合わせや年齢層、子どもがいるかどうか、居住地、求職の有無などの実情を把握できる」と指摘し、そのうえで「医療や福祉、防災や行政サービスのために必要なデータであり、ビジネスの面でも、結婚式場や住宅ローン、生命保険など、様々な分野に活かすことができる」と強調しました。「まずは(本人たちが)書いた通りに集計する試みをやってみて、今後、総務省に審議会を立ち上げ、その統計をどう扱うかを議論すべきで、記入されたものをうやむやにするのはもう終わりにすべきです」
 また、国勢調査には守秘義務があり、アウティングは禁止されているとしたうえで、同性カップルは「今後さかのぼって集計される可能性もありますので、無回答とせずに回答したほうがいいです」と語りました。

 集会に参加した東京都品川区の森沢恭子区長は「実態を把握するのが目的であれば、同性カップルをカウントしないのは疑問。カウントできるように声を上げていけたら」と述べました。

 同じく集会に参加した「LGBTに関する課題を考える議員連盟」事務局長の谷合正明参院議員(公明)は、議連としても6月下旬に林芳正官房長官に要望したことを報告。「記載が(「他の親族」に)書き換えられるのは、尊厳を守る点からもいかがなものか」と述べました。
 
 
 
参考記事:
同性カップルを人口統計から除外しないで…国勢調査で「配偶者」と集計すべきと訴え(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/category/society/6ae4a780d1f7423c957e404485303de9

同性パートナーはなぜか「他の家族」扱い…前回国勢調査の集計 森沢恭子品川区長「配偶者としてカウントを」(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/344022

同性パートナーを「他の親族」に修正される国勢調査。LGBTQ当事者は訴える「配偶者にカウントすべき」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_66a986c9e4b0a3cd43f78cde

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