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収容中のトランス女性がホルモン療法できないのは人権侵害だと神奈川県弁護士会が勧告
トランスジェンダー女性の入所者にホルモン療法を行なわなかったのは人権侵害に当たるとして、神奈川県弁護士会は26日、横浜拘置支所(横浜市港南区)に専門的知見を踏まえて判断するよう勧告したことを発表しました。勧告は13日付です。
神奈川県弁護士会によると、人権救済を申し立てたのは40代のトランス女性です。幼少期から性別違和を覚え、1995年5月頃から女性ホルモン剤を注射するホルモン治療を行なっているほか、生殖腺を摘出しています。2021年2月に都筑署に逮捕され、6月に横浜拘置支所に移送されました。そこから8月頃まで、ホルモン治療を受けさせてほしいと頼んでも受けることができず、理由を尋ねても「不開示」と言われ、教えてもらえなかったといいます。ホルモン療法を受けられなかった影響で下腹部の痛みや息苦しさなどの症状が出たといいます。
刑事施設に収容されたトランスジェンダーの処遇については、政府が2016年、質問主意書に対する答弁書で「医師がホルモン療法を必要と認める場合は国の責務として行なわれる」という見解を示しています。これを踏まえ、勧告では性同一性障害の専門性を有する主治医に確認しなかった拘置支所の対応を問題視し、「性自認が尊重される権利などを侵害した」と結論づけています。
同支所は同弁護士会の照会に対し、ホルモン療法の必要性について主治医へ確認はしていないと回答。医師による診断はあったものの、性別不合の専門性がある医師だったかについては明確に答えませんでした。
また、同支所は取材に対し、「性同一性障害者等の処遇にあたっては、個々の事情に応じて適切な配慮を行なっているところであり、今後とも適切な処遇に努めてまいります」とコメントしています。
神奈川県弁護士会はあわせて、横浜刑務所が2020年7月、医師の判断を仰がずに収容者の薬を取り上げたことについて、医療を受ける権利を不当に侵害したと認定し、警告したとも発表しました。
今年に入って、トランス女性の受刑者に丸刈りを強要した刑務支所の対応は人権侵害だと広島弁護士会が勧告、トランス女性の受刑者に丸刈りを強制するのは人権侵害だと大阪弁護士会が勧告、HIV感染の受刑者が治療中断でエイズを発症したことを受けて大阪弁護士会が適切な情報の引き継ぎを大阪府警に要望、といった刑事施設でのトランスジェンダーやHIV陽性者への処遇をめぐる問題が相次いで報道されています。たとえ受刑者であっても望む性別で暮らし、治療を受ける権利が等しくあるわけですから(特にHIVのことは命に関わるわけですから)、刑務官の方などにもLGBTQやHIVについての基本的な事柄を理解され、適切な対応が行なわれるようになることが求められます。
参考記事:
収容中のトランス女性、ホルモン療法できず 弁護士会「人権侵害」(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASS6V3QV2S6VULOB00GM.html
「トランス女性」にホルモン療法せず 神奈川県弁護士会が人権侵害と横浜拘置支所に勧告(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/336202