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日本性別不合学会理事長が最高裁判決についてコメント、同様の事例があることも明らかに

 岡山大が全国の医療機関を対象に実施した調査で、男性から女性に性別変更する前に保存した自身の凍結精子で女性パートナーとの間に子どもをもうけた事例が国内の少なくとも2ヵ所で確認されたこと、同様の生殖医療を望む方たちが10の施設で確認されていることが共同通信でニュースになりました。調査を担った日本GI(性別不合)学会理事長で岡山大教授の中塚教幹也氏は「代理出産でなくても子どもをもうけることができ、今回の判決で多様な家族の在り方が進むだろう」とコメントしています。


 これまで多くの性別不合当事者を診てきただけでなく、長年GI学会の理事長も務めてきた中塚氏は、この調査についてもっと詳しく伝えながら、特例法や当事者をめぐる状況に触れながら、先日の最高裁判決の意義についてYahoo!に寄稿しています(なお、中塚氏は、TRP2022の「LGBTQと法整備」シンポジウムや同年のトランスジェンダー国会にも登壇しているほか、岡山レインボーフェスタの会場でもスピーチしてくださるなど、LGBTQコミュニティに様々な貢献をしてくださっている方です)
 中塚教授らはこの判決に先立つ2024年2~5月、全国の産婦人科登録施設1050施設の代表者への調査を行ない(有効回答数375)、「トランス女性が自身の凍結精子を用いて女性パートナーに子どもを産んでもらうこと」について「倫理的・社会的に問題ない」との回答が60.2%に上り、「自身の施設が実施する可能性がある」との回答も7.2%あったそうです。またその実態については、「希望する方が来院したことがある」が10施設、「実施したことがある」が2施設、「他院に紹介したことがある」が3施設という結果になったそうです。
「この結果を見ると、産婦人科の現場では、全く稀有な例というわけではなく、施設代表者の多くは日本社会としても対応する必要があると考えているようである。すでに、米国生殖医学会(ASRM)や欧州生殖医学会(ESHRE)は、人種や国籍はもちろん、性的指向、性自認、婚姻の状態(独身かどうか)によっても生殖医療の提供を制限すべきではないとしている。日本においても生殖医療の関連学会は、「多様な性のありかた」に伴う「多様な家族形成」に対応し、生殖医療の果たす役割について再考する時期に来ていると考えられる」と中塚氏は述べています。
 今回の最高裁判決の中で補足意見として「子なし要件」に関してトランスジェンダーが戸籍の性別変更後に未成年の子どもを育てている現実にも触れていますが、日本GI(性別不合)学会も、すでに2021年の理事長声明の中で、子なし要件があることで「性別変更のために、子どもがいなくなることを願う親」や「親が性別変更できないのは自分のせいだと悩む子ども」を作ってしまうことになり、家族関係に悪影響を及ぼし、子の福祉にも反する可能性を指摘し、削除を求めているそうです。
 また、LGBTQのなかには、「提供精子や卵子による生殖医療」や「里親」「特別養子縁組(※婚姻が必要)」で子どもを持つ選択肢もあり、トランスジェンダーやLGBTQフレンドリーな異性愛の人々も加わり、「選択的協働親(elective co-parenting)」としてグループで妊娠や子育てに関わる例も見られる、もちろん、いずれも未成年の子どもを育てていると指摘し、「LGBTQ当事者の持つ家庭(レインボーファミリー)で育つ子どもは、そうではない家庭の子どもと比較して、性的指向や性自認、発達や健康状態、学業成績などが異なるのではないかと心配する向きもあるが、多くの報告がそれを否定している。世界最年少で首相に就任し、新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻への対応でも注目されたサンナ・マリン第46代フィンランド首相など、レインボーファミリーで育った人々の活躍例は少なくない。しかし、偏見や差別が強く、法律や制度の不備がある国においても、これが当てはまるかどうかは不明である。日本社会はそうではないことを願うし、もし、そうだとすれば、子どもたちのために変わらなくてはならないであろう」と結んでいます(素晴らしいコメントですね)




参考記事:
性別変更前の精子利用、他にも 岡山大、医療機関に調査(共同通信)
https://www.47news.jp/11091944.html

トランス女性が自身の凍結精子で生まれた子どもの親になるための裁判.最高裁は親子と認める.(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2f6b802d36a702955e0a60a38909725d6c19f6d5

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