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HIV感染の受刑者が治療中断でエイズを発症、大阪弁護士会が適切な情報の引き継ぎを大阪府警に要望

 HIV感染していた男性を警察署の留置施設から大阪拘置所に移送する際、引継書にHIV感染について記載せず、治療が中断し、エイズを発症した事例があったとして、大阪弁護士会は29日、治療の遅れが原因で症状が悪化するような疾病などが被留置者にある場合、引継書に漏れなく記載するよう大阪府警に要望を行なったと発表しました。


 大阪弁護士会によりますと、人権救済の申立てを行った現在受刑中の50代の男性は、2020年7月に逮捕され、阿倍野警察署の留置施設に収容されていました。留置施設の担当者は、男性がHIVに感染していることを知っていて、警察医とともに医療機関で診察や治療を受けるよう複数回促しましたが、「手錠をしたまま病院に行きたくない」などと言って拒否し続け、服薬治療を中断したということです。2020年11月、男性が大阪拘置所へ移送される際、阿倍野署は「被留置者移送時等の引継書」で申立人の健康状態を伝えたということですが、引継書にはHIVに感染していることや通院拒否により治療が中断していることは記載されていませんでした。そのため、治療が中断されたままになっていました。2021年9月、男性は刑事裁判で実刑判決が確定して大阪刑務所へ移送され、入所時の健康診断の際、HIVに感染し逮捕前は医療機関に通院していたことを申告したということです。しかし、2021年12月、エイズ発症の指標の一つとされている「ニューモシスチス肺炎」が発症していることが判明し、医療機関に入院しました。HIV治療の中断が原因だそうで、その後、治療が再開され、現在は回復しているそうです。
 
 大阪弁護士会は、「HIV感染症は命に関わる疾病であり、生命を守るために医療を受ける権利が憲法13条によって保証されることを鑑みれば、引継書に記載がなかったことは極めて重大な問題だ」と指摘。HIVに感染していることが阿倍野署から大阪拘置所に引き継がれていれば、より早く治療が再開された可能性があるとし、大阪府警に対し、被留置者の健康維持のために重大な疾病や今後の健康状態に関わる過去の既往歴は漏れなく記載し、その内容を複数人で慎重に確認するなどチェック体制を強化するよう要望しました。
 29日午前10時から開かれた会見では、大阪弁護士会の人権擁護委員会は「直ちに人権侵害があったとは認定しなかったが、捜査の中で通院していたことを把握していたにもかかわらず、結果的にエイズが発症してしまった。今後、このようなことが起こると人権侵害にあたる可能性が高いということで要望を出した」と説明しました。

 
 2023年9月には、八王子医療刑務所(現・東日本成人矯正医療センター)※でのHIV検査が遅れ、エイズを発症したとして、横浜刑務所などで服役した元受刑者の50代男性が国に計6600万円の損害賠償を求めた訴訟で和解が成立しています(実質的な勝訴です。詳細はこちら
 八王子医療刑務所といい、今回の大阪府警の対応といい、HIV感染症が命に関わる疾病であるという認識が欠けているのではないかと言わざるをえない事態です。八王子医療刑務所といい、今回の大阪府警の対応といい、HIV感染症が命に関わる疾病であるという認識が欠けているのではないかと言わざるをえない事態です。警察や刑務所で働く人たちにHIV/エイズが命に関わる問題であるということを認識していただけるような周知・啓発が必要でしょう。

※医療刑務所:精神や身体に疾患がある受刑者、一般の刑務所では収容できない専門的な医療行為を必要とする受刑者を収容し、治療を行なう施設。主に精神疾患のある受刑者を収容する施設ですが、全国に4ヵ所あるうち八王子医療刑務所と大阪医療刑務所は身体に疾病がある受刑者も収容対象としています


参考記事:
【速報】逮捕された男のHIV感染 警察署から拘置所に引き継がれずエイズ発症 大阪府警に是正を要望 大阪弁護士会(読売テレビ)
https://news.ntv.co.jp/n/ytv/category/society/ytc048f084928f4fdfa0b0e8d3bef849cb
HIV感染の受刑者 治療中断で「エイズ」発症 弁護士会が「適切な情報の引き継ぎ」警察に求める(関テレ)
https://nordot.app/1168377670560235866?c=768367547562557440

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