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香港のトランス男性活動家に晴れて新しい身分証が交付されました

 香港のトランス男性活動家であるヘンリー・ツェは4月29日、7年に及んだ法廷闘争を経て、ついに性別欄に「男性」と明記された新しい身分証明証を手にしました。
 トランスジェンダーカラーのシャツを着たヘンリー・ツェは、入境管理局前に集まった記者団に対し、「私が手にしたこのカードは、自分にとっても、ついに新しいIDを入手できるようになった人たちにとっても大きな意味がある」「実態に合わない身分証明書が引き起こすきまり悪さや日々の問題がついに解消される」と喜びを語りました。

 
 ヘンリー・ツェは長年、男性として生活してきました。英国ではパスポートの性別表記を男性に変え、男性として問題なく暮らすことができました。しかし、2017年に香港に戻り、同じようにパスポートの性別表記の変更を申請したところ、性別適合手術を終えていないことを理由に断られました。香港政府は法的性別変更の条件として、genital surgey(性器の切除や再建手術)を課していました。
 彼は「Transgender Equality Hong Kong」を創設し、手術は個人の選択であり、性別移行の一部でしかないと訴え、香港政府を相手取って訴訟を起こしました。彼ともう二人のトランス男性が法廷で手術の強制は違憲であり個人の権利を脅かすものだと訴えましたが、2018年に敗訴。ヘンリーとまた別のQと名乗るトランス男性が一緒に控訴しましたが、控訴裁は2022年1月、香港政府の政策を支持しました。しかし二人はあきらめず、上告し、昨年2月、香港終審法院は彼らの訴えを認める画期的な判決を言い渡しました。首席判事のアンドリュー・チェンは、手術の強制は違憲だと述べたのです。
 ヘンリーは裁判を振り返り、「この裁判のマラソンは信じられないほど困難だった」と語っています。

 しかし、香港政府が判決に従って政策を変更するまでに1年以上の時間がかかりました。
 政府が発表した新しい法的枠組みでも、ID上の性別を女性から男性に変更するためには乳房切除の手術を受ける必要があります。男性から女性に変更する場合は依然として性別適合手術を受けなければなりません。
 香港の入境管理局は、政策を決定するにあたり、判決を慎重に検討しなければならなかったと説明し、法的・医学的に複雑な見解も含まれていたとしています。
 香港終審法院の判決以来、入境管理局に寄せられた性別変更の申請は108件に上っているといいます。このうちおよそ3分の1は承認済みで、残りは処理中だそうです。

 判決が出た後、香港政府の対応を待つ間も、ヘンリーの日常は困難続きでした。航空機に搭乗した際は航空会社の係員に性別を問いただされて、危うく乗り遅れかけ、本土に到着すると中国の入管当局に拘束されました。
 3月下旬には、香港政府が対応を不当に遅らせていると主張して別の訴えを起こしました。政府が新しい政策を発表したのはその2週間後でした。
 
 2023年5月、ヘンリー・ツェは『Time』誌の「次世代のリーダー」に選ばれています。
 
 
 
参考記事:
香港政府、トランスジェンダー活動家に「男性」の身分証交付 7年の法廷闘争の末(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35218465.html

Hong Kong trans activist gets new ID card after ‘incredibly difficult’ 7-year legal battle(Hong Kong Free Press)
https://hongkongfp.com/2024/04/29/hong-kong-trans-activist-gets-new-id-card-after-incredibly-difficult-7-year-legal-battle/

He Won a Landmark Trans Rights Case in Hong Kong—But His Work Is Just Beginning(TIME)
https://time.com/collection/next-generation-leaders/6278548/henry-edward-tse/

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