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最高裁の戸倉三郎長官、LGBTQ関連の訴訟について裁判官に「広い視野」「知見」を要求
最高裁の戸倉三郎長官が3日の憲法記念日を前に記者会見し、同性婚訴訟など性的マイノリティの不利益解消を求める訴えが各地で相次いでいることに関し、「国民の価値観や意識の多様化が進んでおり、裁判所は、より適切な紛争解決を追求する使命を帯びている。裁判官一人一人が広い視野を持ち、時代、時代で問題になる社会の動きに知見を深めていくことが求められている」と述べました。
「結婚の自由をすべての人に」訴訟は全国の5地裁に計6件起こされ、高裁判決1件を含む7件の判決が出ており、うち6件で違憲判決となっています。戸倉長官は「問題になっている社会の動きに、裁判官一人一人が主体的かつ自律的に知見を高めることが必要。司法行政としても環境を整える努力が必要だ」と語りました。
昨年の憲法記念日の会見では、性的マイノリティの権利や多様性をめぐる裁判について「広い視野と深い洞察力で納得性の高い判断をする資質、能力が求められている。多様な利害や価値観の対立の本質を柔軟に受け止めることが必要だ」と述べられていました。
最高裁は昨年7月、トランス女性の経産省職員の訴えに関して、一審・二審の判決を覆し、職場のトイレ使用制限は不当だとの画期的な判断を示し、また、10月には大法廷で性同一性障害特例法の不妊化要件を違憲だとする判決を下すなど、画期的な裁定が相次いでいます。
今年3月に同性パートナーも犯罪被害者等給付金支給法の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に含まれるとの画期的な判決を下したことも記憶に新しいところです。
最高裁がこうして人権の観点から(以前の差別的な社会通念を排して)LGBTQの権利を認める裁定を次々に下していることに加え、戸倉長官が改めてLGBTQ関連の訴訟について「裁判官一人一人が広い視野を持ち、時代、時代で問題になる社会の動きに知見を深めていくことが求められている」と述べたことは、他の地裁、家裁、高裁にも好い影響を与えることでしょう。
最高裁自体も、例えば性同一性障害特例法の不妊化要件について2019年の段階では「現時点では合憲」と判断していましたが、社会の変化を受けて、4年後に違憲だと認めたように、裁判官が「時代、時代で問題になる社会の動きに知見を深めて」いった結果、判断も変化したと言えます。そういう意味では、70年代から性的マイノリティの社会的地位向上や権利回復のために活動してきた方たちや、身近なところから変えたり、パレードに参加したりしてきた一人ひとりの方たちの社会変革の努力が実を結んだのだとも言えるでしょう。
今月末には、性別変更後に凍結精子によって生まれた子の認知をめぐる裁判について最高裁が弁論を開くことになっており、親子関係を認めなかった高裁の判断が覆される可能性があるとみられています。 今後の他の訴訟でも、いい判決が期待できるのではないでしょうか。
【参考記事】
最高裁長官、憲法記念日前に会見 国民の意識多様化「広い視野で」(共同通信)
https://news.goo.ne.jp/article/kyodo_nor/nation/kyodo_nor-2024050201001715.html
最高裁の戸倉三郎長官、ジェンダー平等めぐる訴訟に「より適切な紛争解決を追求」 国民の価値観多様化にも言及(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/324899