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石川大我議員の質問に総理が「トランスジェンダーへの誤解に基づく誹謗中傷は許されない」と答弁

 NHKの国会中継をご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、3月15日10時51分頃から参院予算委員会で石川大我参議院議員が質問を行ない、トランスヘイトや同性婚について政府の見解を問いました。


 石川議員は質問の冒頭、「昨日、札幌高裁で歴史的な判決が出ました。このあと取り上げたいと思います」と述べました。様々な質問の最後に、「LGBTQ当事者支援についてお伺いしたい」として、トランスヘイトの問題や、同性婚法制化について政府の見解を問い、特にSNS上でのトランスジェンダーに対する誹謗中傷や差別について、岸田総理から「誤解に基づく誹謗中傷など、性的指向やジェンダーアイデンティティによる不当な差別は許されないはあってはならない」「ジェンダーを理由に特定の方々の行動を一律に制限することはあってはならない」などの答弁を引き出しました。
 以下、質疑応答の内容をお伝えします。(――は石川議員の質問です)

――まず、トランスジェンダーの人権についてです。昨今、トランスジェンダー女性への差別偏見がひどくなっています。基礎的なことの確認ですが、総理、ジェンダーアイデンティティは本人の意思で変えられないという認識でよろしいでしょうか?

岸田総理:選択したり変更できるものではないと認識しています

――ありがとうございます。世の中には、性自認が男の人でも自分は女だと言ったら女性と扱われるというデマや、単にその場で言えば女性として扱われると言う方もいますが、そのようなものではないという認識でよいでしょうか?

岸田総理:LGBT理解増進法においてジェンダーアイデンティティとは「自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識」と定義されています。その性質は、本人のその時々の主張を指すものではなく、自分の性別についてのある程度の一貫性を指すもんであるとの認識です。

――その認識を前提にして。今発言力がある方の中には、“トランスジェンダーは多様な男性の一類型”であると言う方もいますが、誤りです。“トランスジェンダーは存在しない”とか“性同一性障害なんて科学的にありえない”といったSNS上での主張や自治体での質問なども出ていますが、これは正確じゃないですよね。

岸田総理:多様であって人それぞれ異なるものであると認識しています。当事者とお会いし、お話した際には、家族に理解されず、誰にも相談できない、心が許せる人間関係が作れず孤独である、性的マイノリティの方は自殺におけるハイリスク層であるというお話を聞き、切実な思いを改めて受け止めました。SNSでの投稿や自治体の質問での誤解に基づく誹謗中傷など、性的指向やジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別は許されないものであり、自己のアイデンティティで否定されることはあってはならないと考えます。

――信じがたい例として、トランスジェンダーはトイレの盗撮など性犯罪者と見分けがつかないから、トランスジェンダーの行動を制限する立法をすべきだとの主張もあります。これは、ある国で、日本人のふりをした犯罪があったら日本人が入国を許されなくなるというような理屈がまかりとおるようなものです。総理はそのような主張と一線を画していると思いますが?

岸田総理:トランスジェンダーと自称し、トイレに侵入するような犯罪行為については、現行法令に従い、適切に対応すると承知しています。そのうえで、合理的な理由なく、ジェンダーを理由に特定の方々の行動を一律に制限することはあってはならないと考えます。

――昨年12月、子ども基本法に基づいて閣議決定された子ども大綱には、「性的指向及びジェンダーアイデンティティによって差別的取り扱いを受けることはあってはならない」と記されました。犯罪者と見分けがつかないといった主張は当事者の子ども達をも苦しめるものです。3月3日に岸和田でLGBTQのパレードに参加した際、トランスジェンダーの当事者の方から「ヘイトが怖くて、外に出られない」「私たちは幽霊ではない」という声を聞きました。政府は毅然とした対応をとってほしいです。日本は「性的マイノリティの人権と基本的自由に対するあらゆる暴力と侵害を強く非難する」とのG7首脳コミュニケを議長国として取りまとめ、賛成しているはずです。改めて、存在しないとか、犯罪者と見分けがつかないなどのトランスヘイトの主張に毅然と対処していただきたい。決意を聞かせてください。

岸田総理:ご指摘のような行動によって、子ども達が心を痛めることはあってはならない。子ども大綱においても、子ども若者が性的指向やジェンダーアイデンティティによって差別的取り扱いを受けることがないようにすると記載したところです。いわゆるトランスジェンダーに対する誤解に基づく誹謗中傷など、性的指向やジェンダーアイデンティティによる不当な差別はあってならないと認識しています。政府としては引き続き、多様性が尊重され、マジョリティもマイノリティもすべての人が人権や尊厳を大切にし、安心して暮らせる社会、自分らしい人生を送れる社会の実現を目指し、しっかり取組みを進めてまいります。

――性同一性障害特例法について確認を。特例法の要件の一部について昨年、違憲との最高裁判断があり、トランス男性は性別変更が可能になりました。それに伴い、戸籍性が男性のトランス女性の方でも、女性としての特徴に由来する疾患に罹患する場合が出てきますが、事前のヒアリングでお伺いをしているのですが、これが保険適用される、治療をしたりレセプトが受けられるということを確認させていただきたいです。厚労省から、保険適用されますよという通達を出していただきたいです。

武見厚労大臣:医療は医療の担い手と受ける者との信頼関係が適切に構築されることが必要だと考えます。司法では、正当な理由がない限り、診療を拒んではならないと規定されています。厚労相としては、性別を理由に診療を行わないことには正当性がないと、トランスジェンダーにも適切な医療を受けられると、都道府県においても病院での立入り検査や研修などを行ない、不当な取扱いを受けることがないよう、お願いしています。理解増進法の趣旨を徹底します。

――ぜひ通達をお願いしたいです。最後に、同性婚についてです。昨日、札幌高裁で明確な違憲判決が出ました。憲法24条1項についても、同性カップルが異性カップルと同じ程度に保障されるべきであるとの判決でした。原告の方たちは「社会の中でいないものとされてきた、この国で家族としてふうふとして生きていっていいと励まされる判決だった」「泣いてしまいました。積極的に同性婚を進めようという意思を感じました。国会の皆様には賢明な判断をお願いしたい」と語りました。いい加減、同性婚法を導入すべきではないでしょうか。世界では36カ国が認めています。それか、原告のみなさんにメッセージをお願いしたいです。

岸田総理:まず、東京地裁の判決は、民法等の諸規定が違憲状態である旨の判断であり、札幌高裁の判決は、諸規定が違憲である旨判断されたと承知しています。政府は、憲法上、当事者双方の性別が同一である場合の婚姻は想定されてない、憲法に違反するものではないと考えています。現段階では、確定前の判決であり、裁判所に同種訴訟が継続していることから、引き続き、この判断も注視してまいりたい。

――文科大臣、ぜひ賛同を。

盛山文科大臣:すべての人がお互いに尊重しあう共生社会を目指した取り組みを進めることが大事。理解増進法の成立を踏まえ、基本指針の策定にも取り組み、学校現場で適切な対応を行なってまいります。

――もう時間が来ましたのでこれで。引き続き、当事者のみなさんと共に歩んでいく所存です。



 同性婚についてはこれまで通りの答弁に終始し、進展は見られませんでしたが、トランスジェンダーの権利については、政府が、トランスジェンダーへの誤解に基づく誹謗中傷、差別、ジェンダーを理由とした行動の一律の制限などは認めないとの態度を明確にし、医療におけるトランスジェンダー差別の禁止も明確にされました。昨日の違憲判決に続き、LGBTQコミュニティにとっての重要な前進、歴史的な一歩だったと言えるのではないでしょうか。
 石川議員が質問のなかで岸和田のパレードの参加者の声を紹介したこと、きっと主催者・参加者のみなさんにとっては大きな喜びや励ましにつながったはずです。マイノリティの人権問題にずっと携わってきた当事者の議員であり、全国のパレードにも多数参加してきた方だからこそ、このようなお話ができたのだと思います。
 

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