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犯罪被害者給付金訴訟最高裁判決を受けて新聞社説「法整備を急げ」
3月26日の犯罪被害者給付金同性パートナー支給訴訟最高裁判決について、全国紙やいくつかの地方紙で同性カップルの権利を守るための法整備を急ぐべきだと訴える社説が掲載されています。まとめてお伝えします。
◎朝日新聞「(社説)同性パートナー 保護に踏み出した司法」
「同性カップルの権利の保護を、一歩前に進めた司法判断といえる」と判決を評価しました。そして「好きになる人が同性か異性かは、自分で選択できるものではない。「パートナーを殺害された苦しみは同性でも異性でも変わらないのに、違う扱いをされるのはおかしいと思っていた」。判決後の会見で原告が伝えた当初の違和感は、同じ状況に置かれたらだれもがもつ感情ではないか」と、内山さんが(私たちが)いちばん言いたいことを伝えてくれました。さらに「被害者と同性という理由だけで不支給を決めた愛知県公安委員会は、自らの対応を顧みなければならない」「今回の判断の影響が直接及ぶのは犯罪被害者給付金の今後の運用だけだが、同様の表現で事実婚パートナーも対象にしている法制度は、遺族年金、労災の遺族補償年金をはじめ200以上あるという。それぞれの給付・サービスを担う行政機関は、同性パートナーをもれなく対象から除外する実務が、判決に照らしてこれからも許容されるのか、考え直す必要がある」と踏み込み、「公的サービスを必要とする人に公平に届ける観点からも、同性婚法制化の議論をこれ以上、先送りはできない」と結んでいます。
◎毎日新聞「同性カップルの権利 保護する法整備を早急に」
「愛する人を奪われた悲しみや苦しみは計り知れない。カップルのかたちによって、法的な扱いが変わる現状は理不尽だ」と書き出し、「同性同士というだけで対象外とするのは、制度の趣旨に反すると結論づけた。当然の判断である」と評価、さらに、そもそも「同性カップルが対象とされてこなかったのは、日本では同性婚が認められていないから」だとして、「事実婚として扱われるだけでは不十分だ。税や親権、相続などの面で不利益を受ける状況は変わらない。権利の保障を担保するには、法律で同性婚を認めることが不可欠である」と訴えています。
◎東京新聞「<社説>被害者給付金 性的少数者を守らねば」
「給付対象である「配偶者」を幅広く認めた点で評価する。性的少数者を経済的・精神的に守る制度であるべきだ」と判決を評価し、「犯給法にある「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」という文言は、厚生年金保険法や育児・介護休業法など約230件の法令にある」と指摘したうえで、「今回の判決は犯給法に限ったものだが、法令解釈の上で、その影響力は意外と広がるかもしれない。つまり同性カップルが事実婚と同様に法的保護の対象になる場合もあるだろう」「同性間の共同生活に対する理解は社会で相当に浸透している。少なくとも、司法は性的少数者に対する差別や偏見の解消に向けて動くべき時代である」と結んでいます。
◎東奥日報「権利守る法整備速やかに/同性パートナー巡る判決」
「性的指向や性自認は本人の考えや努力で変えられるものではなく、それゆえに不利益が生じるのは看過し難い。だが国会の動きは鈍い。性的少数者の権利を守るため、速やかに法整備に取り組むことが求められよう」としたうえで、世田谷区などの取組みを踏まえ「犯罪被害者の遺族らに給付する支援金や、災害で亡くなった人の遺族に支給する弔慰金の対象に同性パートナーを含めている自治体は少なくない。さらに同性パートナーを配偶者として扱い、扶養手当や休暇などを認める自治体や民間企業も増えつつある」と指摘、そして「そんな中で手をこまねいているのは国会だけだ。怠慢のそしりは免れないだろう」「問題はまだある。日弁連の調べでは、犯給法と同じ文言で公的な給付の対象などを規定する法令は厚生年金保険法や労働者災害補償保険法、公営住宅法など200以上に上る。同性同士を理由に不利益を被ることがないよう、適用の是正などの対応も必要だ」と結んでいます。
◎信濃毎日新聞「〈社説〉犯罪給付金訴訟 同性カップルの権利守る」
「「法の下の平等」の原則にのっとった当然の判決である」という胸がすくような書き出しで、「どの性別の人を愛するかという性的指向は、趣味や趣向でなく、自らの意思で変更できない。生まれながらに備わっている個人の性質である。最高裁の判決は、性的指向によって異なる取り扱いをすることは、法の下の平等原則に照らし、合理性を欠くという判断を示したといえる」と判決のポイントを伝え、結びに「最高裁は個別意見で今回の判決が他には影響しないとしたものの、同性カップルについて異なる取り扱いをすることは認められない。行政は同性カップルから申請があれば、異性カップルと同様に判断することが求められる」と訴えています。
3月14日の「結婚の自由をすべての人に」訴訟の札幌高裁の画期的な判決を受けた国会は早く同性婚の法制化を議論せよとの新聞社説に比べると、やや少ないかもしれませんが、上記で紹介した新聞社はいずれも判決の要点や意義を的確に評価し、犯給法にとどまらず、婚姻平等を含め、広く同性カップルの権利保障(異性婚との扱いの平等)が求められる、法整備が急がれると主張するもので、世論形成のうえでとても重要な役割を果たしてくれるものだと言えるでしょう。