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遺族給付金をめぐって最高裁で弁論、26日の判決で一・二審が覆る可能性
同性パートナーも犯罪被害者給付制度※の対象となるかどうかについて最高裁が判断へというニュースでお伝えした通り、2014年に20年一緒に暮らしていたパートナーを殺害され、2016年に愛知県公安委員会に給付金を申請し、不支給とされた名古屋市の内山さんが「犯罪被害者給付金を同性パートナーが受け取れないのは不当だ」と訴えた訴訟の上告審として最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)が5日、当事者双方の意見を聞く弁論を開きました。最高裁の弁論は二審の結論を変える際に必要な手続きで、原告の訴えを退けた一、二審が見直される可能性があります。原告は「犯罪でパートナーを失うことの経済的、精神的損害は異性と同性で差はなく、同性の人を対象から外すことは法の目的に反する」と訴え、県側は「社会通念上、同性同士に内縁関係が成立すると考えるのは困難」などと主張し、結審しました。判決は3月26日に下されます。事実婚のパートナーに同性パートナーも含まれるのかどうか、最高裁が初めて判断を示すことになります。
※犯罪被害給付制度:故意に生命・身体を害される犯罪に遭った人やその遺族を支援するため、国が1981年に始めた制度。「遺族給付金」、1ヵ月以上の療養などを必要とする被害者への「重傷病給付金」、身体や精神に障害を負った被害者への「障害給付金」の3種類があります。申請者が犯罪を知った時から2年以内か、犯罪の発生から7年以内に申請する必要があり、各都道府県の公安委員会が支給の可否や額を決めます。遺族給付金の場合、死亡者の第一遺族=配偶者(事実婚や内縁関係を含む)と子、父母、孫、祖父母、きょうだいが対象で、年齢や収入、遺族との関係などによって320万~2964万円が支払われます。警察庁によると、2022年度は支給が368人(総額約14億8400万円)、不支給が35人でした。同性カップルの遺族給付金の申請については統計が取られていません。
【関連記事】
同性のパートナーを殺害された遺族の方が、犯罪被害遺族給付金の支給が認められず、裁判を起こしました
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2018/7/7.html
名古屋地裁、同性パートナーは犯罪被害遺族給付金支給の資格なしと判決
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2020/6/4.html
犯罪被害者給付金不支給訴訟で名古屋高裁が控訴を棄却、「社会的な意識が醸成されていなかった」
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2022/8/34.html
この裁判では、給付金の対象とされている「事実上の婚姻関係にあった人」に同性のパートナーが含まれるかどうかが争点となっており、一審の名古屋地裁は「社会通念」を理由として訴えを棄却し(厳しい批判の声が上がりました)、二審の名古屋高裁も「社会的な意識が醸成されていなかった」として訴えを退け、内山さんが上告していました。
この日の弁論で原告の内山靖英さんの代理人は、殺人事件の刑事裁判の判決が内山さんとパートナーを「夫婦同然」と認定したことを強調し、犯罪被害者給付制度は被害者や遺族の経済的、精神的損害の回復が目的であり、パートナーを失って生じる経済的な損失や精神的な損害の程度は異性と同性で違いはなく「同性の者を一律に対象から除外するのは法の目的に明確に反する」と述べ、同性を含まないとすれば「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反すると訴えました。
これに対し、県側は、犯給法※の規定は異性婚が前提の民法などを踏まえており「給付金の対象などは国民感情も含めた社会状況も踏まえて考えるべきで、現在の社会意識を前提にすれば同性どうしの内縁関係が成立すると考えるのは困難だ」と主張し、同性カップルを含むとの解釈は「現行法が想定していない事態を招く。婚姻法秩序を実質的に変え許されない」と述べました。
弁論の後、内山さんと代理人弁護士が東京都内で記者会見を開きました。内山さんは9年前にパートナーを殺害されて以来、声が出なくなっており、代理人弁護士が内山さんのコメントを代読しました。
「夫婦同然の家族を失った喪失感、殺害された恐怖感があり、今も悲しくて仕方ありません」「実名で訴訟を闘って間もなく6年。『つらい。もう疲れた』と思う日もありますが、これは全国の同性カップルにとっても、自分たちが平等に扱ってもらえるのかという、とても切実で大切な問題です。判決に期待したい気持ちと、また裏切られるかもしれないという気持ちの半々ですが、法律で守られるべきパートナー関係と認めてもらいたい」と訴えました。
弁護団によると、犯罪被害者給付金と同様の文言で事実婚パートナーを対象とする法令は230件あり、事実婚と認められず不利益を被っている同性カップルがほかにもいる可能性があるということです。
代理人の堀江哲史弁護士は26日に示される最高裁の判断について「同性パートナーシップ制度も広がってきていて、社会全体として同性パートナーシップへの認識が進んでいる。事実婚に同性カップルも含まれると判断されれば、他の法令でも同じ解釈の余地が生まれ、大きな影響を与え得る」と期待を示しました。
26日、最高裁が同性カップルも「事実上の婚姻関係にあった人」に含まれるという画期的な判断を示し、パートナーを失った悲しみで声が出なくなったばかりか、遺族給付金の支給を拒絶され、裁判で敗れ続け、幾重にも苦しみを味わい、打ちひしがれている内山さんに笑顔が戻り、救われることを心から祈ります。
参考記事:
犯罪被害者の同性パートナー 遺族給付金めぐり最高裁で弁論(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20240305/3000034498.html
同性パートナーを殺害された男性への遺族給付金めぐり 最高裁で弁論(日テレ)
https://www.youtube.com/watch?v=Fp2lbArX-a8
同性パートナー遺族給付金訴訟 最高裁弁論「パートナー失う損害は異性同士カップルと差はない」原告側訴え(TBS)
https://www.youtube.com/watch?v=9BhRnRD9EzI
同性パートナーへの遺族給付金巡り最高裁が弁論 不支給“妥当”判決見直しか(テレビ朝日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000339655.html
事件遺族給付金、同性間に資格は 最高裁で弁論、26日判決(共同通信)
https://nordot.app/1137671424970129958?c=302675738515047521
同性パートナー給付金、26日判決 「支給対象外」見直しか 最高裁(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024030501025
遺族給付は同性も対象か 最高裁で弁論、26日に判決(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0338N0T00C24A3000000/
同性パートナーは犯罪被害者給付金を受け取れるか 最高裁が初判断へ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240305/k00/00m/040/235000c
犯罪被害者遺族への給付金、同性パートナーは対象か 最高裁で弁論(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS355X2QS35UTIL005.html
「事実婚に同性カップル含まれる」VS「現行法が想定していない」 同性パートナー給付金訴訟で最高裁弁論(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/313310