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島根の高校生が経産省トランス職員裁判の論説を読んで考えを変え、新聞コンクールで優秀賞を受賞しました

 日本新聞協会主催の「第14回いっしょに読もう!新聞コンクール」で、山陰中央新報の経産省トランスジェンダー職員のトイレ利用をめぐる最高裁判決についての論説を読み、「誰もが幸せになれる未来を目指し、社会を見直していくべきだ」と訴えた島根県立出雲高校2年の山上敦也さんが優秀賞に輝きました。

 
 「いっしょに読もう!新聞コンクール」は、興味を持った新聞記事について家族や友人と意見交換し、感想や意見を書いて応募した小中高の児童・生徒の文章について、小・中・高の部門別に最優秀賞1編、優秀賞10編、奨励賞120編を選び、表彰するコンクールです。
 今回、高校部門で優秀賞に輝いた1人が、島根県立出雲高校2年の山上敦也さん。山陰中央新報の昨年7月13日付の「論説 性自認とトイレ制限 意識改革を強く促した」を選び、お母さんとも話しながら、熟考を重ねた末、「誰もが幸せになれる未来を目指し、社会を見直していくべきだ」と訴える内容でした。

 昨年7月11日、経済産業省に勤めるトランス女性の職員が、職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だとして国を訴えた裁判で、最高裁第三小法廷(今崎幸彦裁判長)は「人事院の判断はほかの職員への配慮を過度に重視し、職員の不利益を軽視したもので著しく妥当性を欠いている」としてトイレの使用制限を認めた国の対応を違法だとする判決を言い渡しました。制限を適法とした二審・東京高裁判決を破棄し、職員の逆転勝訴が確定したかたちです(詳細はこちら) 
 この判決について山陰中央新報の論説は、「経産省は対応の見直しを迫られることになる」「トランスジェンダーを巡っては、性別適合手術を性別変更の要件としている性同一性障害特例法の規定について最高裁大法廷が憲法判断を示す見通しで、合憲とした判例が変更される可能性もある」「だが国会では、少数者の権利保護に向けた議論は遅々として進まない。トランスジェンダーの4割以上は職場で使いたいトイレを利用できないとされ、そのような厳しい現状に国会は正面から向き合う必要がある」と述べていました。
 お母さんに記事を薦められたこともあり、山上さんは、この記事を読んでみました。読んだ直後はトランスジェンダーと同じトイレを使うことに戸惑いを感じ、多数派の意見を尊重し、制限に問題はないとした人事院の判断にも「合理性はある」と思ったそうです。一方、お母さんに意見を聞いたところ「トイレ共用に抵抗はない」「少数派の人権を守るべき」と言われ、思索を巡らせ、変化を恐れ「自分が困っていない今」を守ろうとしている自分に気づいたといいます。その結果、誰がどのように困っているかに目を向ける視点が必要で、権利を考える時に数は関係ない、「他人が困っている今」を助けるべきだとの考えに至ったそうです。
 応募の文章にはこうした点も書き込み、「困っている人を助けるためにはどうすべきかを考えるべきなのだ。誰もが幸せになれる未来を目指して、社会を見直していくべきだと思う」と結びました。
  受賞に知らせに山上さんは、「一生懸命書いた。すごくうれしい」と喜びました。そして、「困っている人を助けるという思いは失わずに持っておきたい」「学校現場ではトイレ以外に制服の問題もある」「身近にある偏見や誤解と向き合い、困っている人を助ける意識を持ちたい」とも語りました。
 

 初めはマイノリティの困り事へのシンパシーや人権を守ることよりもマジョリティの(マイノリティを顧みない)立場に寄っていた山上さんが、お母さんの意見も聞いて、塾考を重ね、支援的な考えに変わったという過程が本当に素晴らしいです。人がアライに変わっていく素敵なストーリーとして、いろんな所で紹介されるのではないでしょうか。
 この山陰中央新報の論説があったからこそ、ということも言えますよね。近年、こうした地方紙がこぞってLGBTQの権利回復運動を支援する社説を掲載し、世間の方たちの意識の変化を促してくださっているのは、本当に心強く、素晴らしいことです。
  
 

参考記事:
新聞コン優秀賞に出雲高の山上さん ジェンダー問題への考えまとめる(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASRDY6QR7RDNPTIB001.html
性的少数者と同じトイレ使用に戸惑ったが…高校生の出した結論とは? 新聞コンクールで優秀賞 島根・出雲高2年の山上さん(山陰中央新報)
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/517184

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