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「結婚の自由をすべての人に」訴訟名古屋地裁判決の意義
5月30日の「結婚の自由をすべての人に」訴訟名古屋地裁判決の意義について、原告弁護団の方などが語ったことをお伝えします。
5/31のハフポストのレポートによると、名古屋地裁は、「結婚は、国がカップルの関係を公証(公に証明)して保護し、社会的な承認を得るための有力な手段。それにも関わらず、同性カップルは、そういった重要な人格的利益を享受することから一切排除されている」「結婚の意義は、単に子どもを産み育てることだけではなく、親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成すること。その実態において、同性カップルと異性カップルは何も変わらない」「法律婚制度から同性愛者を排除することは異性カップルと同性カップルの間に大きな格差を生じさせている。それに対する何の手当もないというのは合理性があるとは言い難く、もはや無視できない状況だ」「パートナーシップ制度が増加の一途を辿っているが、弊害が生じたという証拠はない。それを考えれば同性カップルが結婚制度を使えるようにしても国民が被る具体的な不利益は想定し難い」「同性カップルの結婚に反対する者もいる。しかし伝統的な家族間を重視する国民と共存する道を探ることはできるはずだ」「人格的利益を受けられない当事者の数は累計すると膨大な数になる」として、「法律婚の制度からは重大な人格的利益を得られるが、同性カップルは一切排除されている」「その状況が放置されていることは『婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳に基づいて作らなければいけない』と要請する憲法24条2項に違反している」と結論づけました。
判決後の記者会見で原告弁護団の水谷陽子弁護士は、判決の多くの部分で原告側の訴えが認められたと語りました。
「私たちは裁判で『同性カップルを婚姻制度から排除することは、“社会や国から認められていない存在である”いわば“二級市民である”というスティグマを与えている』と訴えてきました。裁判所が婚姻制度の利用が精神的心理的な効果をもたらすことを指摘したのは、その主張をきちんと受け止めたからこそです」
「ほかにも、同性カップルの生活実態は異性カップルと何も変わらず、法的保護を受けるに値すると訴えてきました。裁判所がそれをはっきり認めてくれたのは重要な点です」
さらに、国が「異性愛者も同性愛者も、異性とは結婚できる。だから同性カップルの結婚を認めないことは性的指向に基づく差別にはあたらない」というわけのわからない主張をしてきたことに対し、「同性愛者にとって同性との婚姻が認められないということは、婚姻が認められないと同義だ」「異性愛者に同性との婚姻のみを認めるとしても意味がないのと同じことである」「性的指向が向き合う者どうしの婚姻をもって初めて、本質を伴った婚姻といえる」とはっきり否定したことを「婚姻とは性的指向が向き合う者どうしで真摯な関係を営むということなんだ、という当たり前のことをきちんと指摘してくれました」と評価しました。
「(判決で裁判長は)国が主張していることを真っ向からぶった切るようなことを書いてくれた」
一方、憲法24条1項(「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し〜」)での違憲性が認められなかったことは残念だとしました。しかし、判決が「憲法24条1項は、同性カップルの結婚を禁止してはいない」と明言したことは、一部の、憲法24条が同性婚を禁止しているという説を唱える人たちに対して、「判決は禁止しているわけではないということをはっきり明言し、誤解を否定しました」と評価しました。
30日の判決や記者会見には、訴訟を支援してきた当事者や多くの支援者も集まったそうです。
原告の鷹見彰一さん(仮名)は、法廷で裁判長の「違憲」という言葉を聞いて涙ぐんだといい、記者会見で「自分だけではなく、みんなで一緒に闘ってきた裁判だ」と感謝の言葉を述べました。他地域での訴訟と違い、名古屋の原告は鷹見さんと大野利政さん(仮名)のカップルだけでした。鷹見さんは、裁判の非公開協議で裁判長から「原告は自分たちのためだけではなく、あらゆる人を代表して闘っているので、敬意を払う必要がある」という趣旨の発言があったことを明かし、「判決にその言葉を反映されていて嬉しかった」とも語りました(西村修裁判長、素晴らしい方ですね)
プライド月間が始まった6月1日、都内でも水谷弁護士や原告の鷹見さんが記者会見を開きました。
水谷弁護士は、今回の判決のポイントを改めて解説し、法制度の不備を正当化しえないし、同性婚を認めても社会に弊害はないという点を明言した判決だ、今後の立法の議論においてきちんと参照してほしい、と述べました。
上記と重複しない事柄について一点、お伝えすると、東京地裁判決と同様、(海外のシビルユニオンなど同性パートナー法を想定した)別制度の余地について書かれていた、しかし、海外では、別制度が構築されたとしても、その後、検証され、いずれも婚姻の平等(同性婚)になってきた、という示唆があり、これは別制度の政策に安易に流れることに釘を刺したものと見られる、と評価していました。
全体として、今回の判決は、国の主張を真っ向からぶった切るとともに、当事者が侵害されている利益の重大さを丁寧に検証してくれたものだったと語りました。「これまで当事者は、生活のなかで、法廷で、さらに国の言葉でも傷つくことがありました。そういう傷つきに裁判所がきちんと向き合い、一個ずつ拾ってくれた」「当事者に希望を与える言葉を裁判所が言ってくれた」とも。「この判決を生かし、早く立法していただきたい」
原告の鷹見さんは、支援してくれた皆さんへの感謝を述べたあと、「裁判が始まってからの4年間の間に、国もそうですが、身近な応援者の考えも変わったと感じます。会社では、初めは仲のいい同僚だけが応援してくれていたのですが、今は「よくよく考えると、私の子どもも当事者になるかもしれない。この国で、うちの子だって差別されるのかもしれないと思うと、ただ友人がやってるということじゃなくて」というふうに多くの人が言ってくれるようになりました。そのこともうれしかったです」と語りました。また、「愛知の裁判長は、たぶんアンチの人もいるなかで、攻撃されることもありえるのに、こういう判決を書いてくれて、うれしかった。意見陳述や証人尋問でも、丁寧にわかりやすく伝えてくれていました」とも。そして、「札幌の裁判長が言った通り、今まさに、悩んでいる方々を救ってほしい。国会での議論を早く」と訴えました。
一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんはYAHOO!への寄稿で、裁判を傍聴して「改めて裁判とは、いまを生きる一人ひとりの生活や命について考えるものなのだと実感した。「普通じゃない」「生産性がない」などと、これまで社会によって抑圧されてきた人々の尊厳を回復する、そうした意味を持つものなのだと」と語っています。
そして、判決の意義について「至極まっとうな判断」だと評価しました。(裁判所が憲法違反の判断を下すことはかなり稀であるにもかかわらず)同性カップルの関係を保護する枠組みが何もないことが個人の尊厳や法の下の平等などを定めた憲法に違反するという判断が下されたことを評価しながらも、しかし、「この事実に対して、まったく政治が向き合おうとしない現状に強い憤りを覚える」とも語りました。「国は最高裁の判断を待たずして、婚姻の平等(同性婚の法制化)を早急に実現するべきだ」
国は同性婚法の整備を早く、と訴える社説を書いてくれた新聞社もいくつもあります。
京都新聞は、「性的少数者の権利保護をなおざりにしている国に、対応を強く促す警鐘といえよう」「多様性を重んじる国際潮流にいつまで背を向けるのか」「国は速やかに法制化の議論を本格化させ、国会も権利擁護へ真摯(しんし)に踏み出すべきだ」と述べています。
沖縄タイムスは、「誰に対しても結婚の自由を認める道を開く意義ある判決だ」「人権や尊厳を尊重し、社会的に承認する重要性を示す判決といえる」と評価し、「政府と国会は判決を重く受け止め法制化を急ぐべきだ」と訴えています。「今回の判決では家族の多様化が進み、世界規模で同性カップルを保護する制度が実現していると強調。「伝統的な家族観を重視する国民との間でも共存する道を探ることはできるはずだ」と言及した。国に対応を促す強いメッセージである」「議長国の責任を果たすためには、首相はこの問題を解決するリーダーシップを発揮すべきだ」
中国新聞は、「婚姻の平等へ道を開こうと促す司法の強いメッセージだ」「少数者に寄り添う、まっとうな判断だ。少数者は差別を受けやすく、偏見の対象にもなりやすい。その救済は司法の責務との姿勢を感じ、うなずける」と評価し、「国は重く受け止め、一刻も早く法整備に着手すべきである」と訴えました。「国民の意識と与党案の乖離(かいり)は明らかだ。特に保守派の意向を優先する自民党は司法のメッセージを重く受け止めるべきだ」「G7広島サミットの首脳声明は「あらゆる人々が性自認や性的指向に関係なく、差別のない人生を享受できる社会を実現する」とうたう。まとめた議長国として実行する責任がある」
次は6月8日、福岡地裁で判決が出ます。2019年に全国5ヵ所で始まった裁判が、いちど判決が出揃うことになります(これとは別に、東京二次訴訟もあります。また、札幌の控訴審はすでに2年が経っているので、今年度内に初の控訴審判決が出るかもしれないそうです)
九州弁護団の森あい弁護士によると、九州は2019年2月14日の一斉訴訟の7ヶ月後、9月に始まった関係で、他の地域と訴状が少し異なっているそうです(憲法13条にも触れていたり、性的指向だけでなく性別に基づく差別も訴えていたり)。まだどういう判決になるかはわかりませんが、できるだけ福岡もいい判決が出ることを期待します。
参考記事:
名古屋の違憲判決は国の主張を「真っ向からぶった切った」今まで以上に踏み込んだその内容とは【結婚の平等裁判】(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/nagoya-not-recognizing-marriage-equality-unconstitutional_jp_647594d4e4b0a7554f405b39
歴史的なダブル違憲判決「婚姻の平等さらに前進」名古屋地裁判決を傍聴(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20230531-00351741
社説:同性婚訴訟 違憲是正へ法制化急げ(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1037003
[社説]同性婚否定は違憲 法整備は社会の要請だ(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1162782
同性婚否定「違憲」判決 一刻も早く国は法整備を(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/313701