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【同性パートナーシップ証明制度】旭川市周辺の8町、上越市、兵庫県、徳島県、大分市が導入へ、大分県も検討
16日にLGBT理解増進法が成立したことで、(今後策定される指針の内容にもよりますが)先行してLGBTQを支援してきた地方自治体の取組みを萎縮させたり、“安心できない”と言ってカルト教団信者などが自治体に取組みをやめるよう要請を乱発したり、様々な影響を及ぼすのではないかとの懸念の声がコミュニティから上がっていますが(石川県ではすでに県の条例案の文言がLGBT理解増進法与党修正案と全く同じ表現に…という事例が発生しています。詳細はこちら)、そんな懸念・心配を吹き飛ばすかのような勢いで、全国から制度導入の目覚ましいニュースが次々に届いています。
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北海道旭川市周辺の8つの町、東神楽町、美瑛町、東川町、鷹栖町、当麻町、比布町、上川町、愛別町が一斉に「パートナーシップ宣誓制度」を導入することがわかりました。旭川市は来年1月からの導入を目指していますが、生活圏の重なる東神楽町が「性的少数者にとって住みづらい社会をなくしたい」と旭川市や周辺の町に同時制定を呼びかけ、旭川市と歩調を合わせる形で来年に導入することが実現しました。旭川市の担当者は「圏域全体で理解があるという雰囲気をつくることができれば、都市部に流れてしまいがちな当事者にとっても、地元に残ろうと思える選択肢ができるのではないか」と話しています。
道内の自治体で町が制度を導入するのは初めてです。また、全国的に見ても、このように地域の自治体が一斉に導入するケースは初めてです。
制度の導入とともに8つの町と旭川市は連携協定を結ぶ考えで、カップルのプライバシーに配慮して居住地以外の自治体でも制度を申請できるようにするほか、自治体の間で引っ越しをする際に事前に申請すれば改めて手続きをせずに引っ越し先でも公的サービスを受けられるようにするということです。
8つの町と旭川市は7月以降、住民から意見を募るパブリックコメントを実施するなど、来年の制度導入に向けて手続きを進めることにしています。
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福島市では、6月15日に開かれた市議会で、「誰もが人権を尊重され、自分らしく生きられる福島市を実現するために、一日も早く取り組みを進めてほしい」として制度の創設を求める陳情が採択されました。新日本婦人の会・福島支部の鈴木眞紀子事務局長は「ほっとしました」「いろいろな事情や状況を抱えた方がたくさんいますので、そういう人たちが安心してこの福島市で生活ができるように、今回の陳情したものについて進めていってほしいと思っています」と語りました。
福島県では伊達市と富岡町で検討が進められていますが、導入済みの自治体はゼロで、県も具体的な検討に至っていませんでした。内堀雅雄知事は12日の定例記者会見で「住民サービスを提供する市町村の意向を聞きながら考えを進めていきたい」と述べるにとどめました。
2019年の県民意識調査では「性的少数者にとって生活しづらい社会だと思うか」との質問に対して「そう思う」(「どちらかと言えば」を含む)と答えた人の割合が73%に上っており、県は学校への出前授業などを通じて理解促進に努めてきたものの、関係者からは「機運はまだ高まっていない」との声が聞かれていました。一方、県男女共生センターに2022年度に寄せられた性的マイノリティ関連の相談は85件で、2020年度の35件から倍以上に増えていました。
福島テレビは16日、都道府県として初めて制度を導入した隣の茨城県で「パートナーシップ宣誓制度」の登録をしたレズビアンの滑川友理さんへのインタビューを放送しました。「選択したものでない、自分で変えられないことを『気持ちが悪い』とか『将来そんなんじゃお先真っ暗だぞ』とか『親不孝が』とか。自分には価値がないんだっていうので、毎日毎日消えたい死にたい、そればっかりの学生生活後半だったかなというふうに振り返ると思います」「私のパートナーが、自身の家族にカミングアウトしていなかったんですよね。パートナーシップ宣誓をしてから、それを根拠に家族に涙ながらカミングアウトしたと。何より二人の関係を証明するものがあるっていうのは、うれしく思っています」
これを機に、県で制度導入への機運が高まっていくことが期待されます。
福島市では、11月4日にパレードが開催される予定です。
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埼玉県さいたま市は16日、ファミリーシップ制度の要綱改正案を市議会市民生活委員会に報告しました。ファミリーシップ申請したカップルに対して、子どもへの意思確認を年1回求める規定を見直し、当初の届け時のみとする内容です。8月1日から実施する方針。当事者の家族から「差別的」だと指摘を受け、市は見直しを進めていました。
市人権政策・男女共同参画課によると、2020年4月、市は県内で初めて「パートナーシップ宣誓制度」を導入し、2022年11月にはファミリーシップ制度を施行、申請したカップルに対して、子どもの意思確認を当初と毎年1回の届け出時に求めると規定しました。他の自治体ではこのような規定がなく、当事者の家族から「差別的な内容で、改正を検討してほしい」と批判の声が上がっていました。市議会でも当事者の意見を把握するよう求められていました。
同課は今年2月、4月、「パートナーシップ宣誓制度」利用者にアンケートを実施し、子どもの意思確認を当初のみとする案について、カップル42組84人に調査用紙を送付。回答した23人のうち74%の17人が「賛成」と回答しました。3月に専門家の意見を聴き、「制度の効果は小さいのに、毎年届け出を求めるのは負担が大き過ぎる」と指摘されていました。
同課の担当者は委員会で、「当事者の声を真摯に受け止め、こども基本法の理念に基づき、子どもへの説明と子どもの意思の尊重が大切と伝え、届け出は当初のみと見直したい」と述べました。
同課の担当者と意見交換し、制度の改正を求めた同市の野尻真智子さんは取材に対し、「気持ちを寄せて、要綱を変えてくれたことは本当にありがたい」としながら、「当初のみでも確認することに差別を感じる。もやもやは残っている」と話しました。
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新潟県上越市の中川幹太市長が、「パートナーシップ宣誓制度」を今年度中に創設する考えを示しました。14日に開かれた市議会で、山田忠晴市議(公明)の一般質問に答えたものです。
中川市長は「性の多様性に寛容な社会の実現に向け、活発な議論が行なわれている。性的指向や性自認にかかわらず、市民一人一人がかけがえのない存在として尊重され、安全で安心して暮らせるまちの実現を目指し、導入したい」と述べました。同時に性的マイノリティへの理解を促進するための市民啓発にも取り組みます。
具体的な導入日は未定で、制度利用者に対して市が提供する住民サービスの内容も検討中です。市総合政策部は「市営住宅の入居や保育園の受け入れなどについて、調整を進めていく」としています。
新潟県では新潟市が2020年、三条市が2022年、長岡市が今年、同様の制度を導入しています。
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愛知県では20日、至学館大(愛知県大府市)の学生たちが「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」の導入を求め、県庁で大村秀章知事に要望書を提出しました。「自分らしい生き方に寄り添う制度。市町村にも導入を呼びかけてほしい」と訴えました。
要望したのは、同大健康科学部の越智久美子准教授のゼミに通う3年生12人です。ゼミ生の中にもLGBTQの方が在籍していて、学生たちも制度などについて学んできたそうです。
「社会に出て厳しい壁にぶち当たり、苦しい思いをしている教え子たちを身近に見てきた。より生きやすく、より自分の幸せを自らつかんでいける社会になってほしい」と越智准教授は語ります。5月から制度を導入していない県内の自治体に対して要望する活動を展開してきたそうです。
この日、県庁を訪れた小川真凛さんは「同級生に女の子どうしのカップルもいて、私にとって同性カップルは『ごく普通』の感覚。こうした制度がもっと当たり前に広がっていってほしい」と、中根開斗さんは「今年ゼミに入って制度について知った。自分たちが発信していくことで少しずつ世の中が変わっていったら」と語りました。
学生たちと懇談した大村知事は「現在、制度の先行事例の調査研究を進めている。皆さんの要望はしっかりと受け止めさせていただく」と述べました。
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兵庫県の斎藤元彦知事は、性的マイノリティの人たちが安心して暮らせる環境づくりを県内でもさらに進める必要があるとして、早ければ来年度にも「パートナーシップ宣誓制度」の導入を目指す考えを示しました。兵庫県内では、14の市や町で導入されていますが、斎藤知事は「公に認められたという当事者の安心感につながり、性的マイノリティの人たちへの理解も進む」と語り、県が導入することで性的マイノリティへの理解を県内でもさらに進めたいとしています。当事者団体や有識者らの意見も踏まえ、「丁寧に考え方を整理する」とのことです。
兵庫県では2016年、全国で4例目の宝塚市が制度導入のさきがけとなり、2021年には尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市、三田市、猪名川町の阪神間7市1町が連携協定を結び、その後も明石市や姫路市、たつの市、高砂市、丹波市、丹波篠山市で導入され、加古川市が7月から導入予定で、神戸市も年内導入を目標に掲げています。三木市、播磨町、宍粟市などでも検討が進められています。それでも、まだ半分の自治体が未着手でした。県として導入が実現すれば、日本海側や淡路島も含め、かなり広い地域の方たちが同性パートナーシップ証明を受けられるようになります。
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徳島県の後藤田徳島県知事は21日、県としての「パートナーシップ宣誓制度」の創設について、来年4月の導入に向けて、今年度中に要綱を策定する意向を明らかにしました。県議会で仁木啓人議員(新しい県政を創る会)の質問に答えたものです。知事は「利用できる行政サービスについて協議調整を行ない、他県の制度内容などを研究し、検討を進めたうえで、来年度当初の施行に向け今年度中にパートナーシップ宣誓制度実施要綱を策定いたします」と述べました。
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大分市は19日、「パートナーシップ宣誓制度」を導入すると発表しました。9月の施行を目指します。県内では臼杵市、竹田市などに続いて6例目です。九州の県庁所在地でまだ導入していないのは大分市だけでした。
担当の市男女共同参画センターは「一人一人の生きづらさや不安の解消につなげるのが目的。市民の理解を促進し、互いに尊重し合える地域社会の実現を目指したい」と話しています。
「地元の役所で手続きをするのは周囲の目が気になる」という方もいて、県の窓口で手続きができるよう望む意見も出ているそうです。
また、大分県も、「パートナーシップ宣誓制度」の導入を検討するそうです。
20日の県議会で、大分市が制度導入を発表したことについて佐藤樹一郎知事は「非常に意義があることだ」と評価、家族に限定されている公営住宅の入居の申し込みや、家族の同意が必要な手術や治療方針の決定ができるようになることなどの効果を挙げ、「市町村の状況を見ながら、県としても検討していく」と述べました。
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全国の自治体での制度導入がこれだけ進むなんて、2015年時点では誰も想像できなかったと思います。人口カバー率は7割くらいになるのではないでしょうか。もはや「社会通念がない」などとは言えない状況で、いよいよ、国も、司法も、同性婚を認めざるをえないだろうという情勢になってきたのではないでしょうか。
参考記事:
旭川市周辺の8町がパートナーシップ制度を来年から導入へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230616/7000058436.html
旭川市と周辺8町、パートナー制度導入へ 複数の自治体連携は道内初(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/862958/
LGBTってご存じですか? 福島県で初・パートナーシップ制度創設の動き 福島市議会が初採択(福島テレビ)
https://www.fukushima-tv.co.jp/localnews/2023/06/2023061600000014.html
《LGBT》先行の茨城県 パートナーシップ制度に登録 レズビアン公表した女性 よりよく暮らせる社会を(福島テレビ)
https://www.fnn.jp/articles/-/543722
LGBT法が成立 福島県内進まぬ制度設計、伊達市と富岡町が検討中(福島民友新聞)
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20230617-785367.php
子の意思確認「当初のみ」に さいたま市ファミリーシップ制度で見直し 「もやもや残る」当事者も(埼玉新聞)
https://www.saitama-np.co.jp/articles/31924/postDetail
新潟上越市、性的少数者のパートナーシップ制度を2023年度内に創設へ(新潟日報)
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/233465
パートナーシップ宣誓制度 本年度中に導入方針 中川上越市長 一般質問で言及 住民サービス検討(上越タイムス)
https://nordot.app/1041655401838428664?c=750238449062281216
「パートナー制度を」 至学館大生ら、知事に要望/愛知(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230621/ddl/k23/040/119000c
兵庫県 同性カップルなど「パートナーシップ宣誓制度」導入へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20230614/2020022187.html
性的少数者カップルを公認「パートナーシップ制度」兵庫県が導入へ 知事が表明「早ければ来年度」(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202306/0016473459.shtml
パートナーシップ制度の要綱策定へ【徳島】(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/nnn/99uuehz0fk6mujkv9b
大分市がパートナーシップ宣誓制度導入へ 県内自治体で6例目、9月施行目指す(大分合同新聞)
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2023/06/19/JDC2023061902453
「パートナーシップ宣誓制度」大分市が導入へ 知事が評価(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/20230620/5070015990.html
パートナーシップ宣誓制度、佐藤知事「状況見ながら大分県も検討」(大分合同新聞)
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2023/06/20/JDC2023062001831