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TRP、NRP、九州・山口の16団体が法案への声明を発表しました
15日、参院内閣委員会でLGBT理解増進法案の審議が行なわれました。参考人として出席した松岡宗嗣さんは、「もはや理解”抑制”法となってしまっている」とし、多数派への配慮指針や、教育における「家庭や地域住民その他の関係者の協力」という箇所への懸念などを述べ、同じく参考人として出席したLGBT法連合会の神谷悠一さんは、「12条は法律の効果を180度変えてしまう」「いじめや差別の原因となる無理解の解消でなく、無理解を援護し、差別構造を温存するために使われかねない。国民間の無用な分断を生む」と述べてくださいましたが(審議の記録映像がこちらにありますが、心臓に悪い部分もあるため、おすすめしません…)、与党や維新などの賛成対数で可決されてしまいました。本日、参院本会議で採択され、成立するとみられています。
この「差別増進法案」に抗議する集会の第3夜が昨夜、新宿駅前で開かれ、約250名が参加、映画監督の東海林毅さんが「法案がひどい言葉になってしまった」と語るなどしました。以下に配信の映像をご紹介します。
LGBTQコミュニティからは、LGBT法連合会に続き、各地の団体が声明を発表しています。
東京レインボープライドは16日、「「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」との一文が入ったことは、各所で言われている通り、LGBTQに対する理解の増進ではなく理解の抑制に繋がりかねず、当団体としても重大な懸念を感じています」「LGBTQの存在が国民の安全を脅かすかのような誤った認識の議論が繰り広げられていることは憂慮すべき事態です。この法案に対する強い懸念を表明すると共に、LGBTQ当事者の人権が守られ、差別が解消される社会の実現を望みます」との声明を発表しました。
名古屋レインボープライドは6月13日に発表した声明で、「この法案は、差別をする側、困難を与える側の方向を向いて配慮されたもの」「LGBTQに対する生きやすさのための法の制定とは全く逆の法案」になると批判し、「たくさんの当事者にさらなる生きづらさを強いるものであるこの法案に断固反対します」「骨抜き、逃げ法案ではなく、差別偏見をなくす法案を心から望みます」としています。
九州レインボープライドを開催するNPO法人カラフルチェンジラボが呼びかけ、LGBTの家族と友人をつなぐ会in福岡、NPO法人Rainbow Soup、NPO法人Proud Futures、gid.jp九州支部、LGBTとともに生きる弁護士の会、福岡コミュニティセンターHACO、OVER THE RAINBOW、GID Link、SOiGIEs(そいぎーず)佐賀、Take it! 虹、くまにじ、ココカラ!SOGIE(LGBT)サポートチーム、LGBT交流会「レインボービュー宮崎」、レインボーポート向日葵、レインボー山口という九州・山口の16団体が賛同した廃案を求める声明では、「当事者や支援者と出会いづらい、地方に居住するLGBTQ当事者の生活は本当に苦しいものになるでしょう。LGBTQへの理解がさらに後退し、当事者は、ますます息をひそめ、偏見に耐えなければならない日々を送ることとなります。加えて、LGBTQ当事者が支え合い、助け合うコミュニティの存在、それ自体を脅かすことにもなりかねません。理解を増進するはずの法律が、理解を抑制したり、むしろ差別や偏見を固定化し蔓延する法律となってしまうことが懸念されます」「広く当事者の声を聞くこともなく法案を通すのは到底看過できません。もっと多くの議論をしていただき、当事者の人権を守れる内容にしていただきたく存じます。今回の参議院本会議での審議に反対をし、廃案を求めます」と述べられていました。
一昨日お伝えしたように、ウーマンアクションネットワーク(WAN)も抗議声明を発表してくれました。
連合の芳野友子会長も記者会見で「後退した内容で国会審議が進んでしまったことは極めて遺憾だ」と表明していました。
メディアでもこの法案の問題点が批判されています。
朝日新聞は社説で、「数年にわたった議論をなきものにする無節操ぶり」「性自認や性的指向を理由とする深刻な差別、いじめへの問題意識は社会で共有されつつあるが、最も後れをとっているのが国会ではないか」と指摘しています。
神奈川新聞は「LGBT法案 差別直視し議論し直せ」との社説を掲載しました。
西日本新聞も「法の目的である理解増進にマイナスだ」「当事者を置き去りにするのは本末転倒である」「性的少数者の権利保護、暮らしやすい社会づくりへ政治がやるべきことは山積している」としています。
北海道新聞も「差別の解消という法案本来の理念は大きく揺らぎ、当事者は「だれを守る法なのか」と不安を募らせる」「性的少数者が「安心を脅かす存在」であるかのような表現に危機感を抱く」と述べています。
『日経ビジネス』は松中権さんへのインタビュー記事を掲載し、富山のチューリップテレビはLGBT法連合会の林夏生さんへのインタビューを放送し、この法案の問題点や当事者が抱く懸念を伝えてくれました。
先週の金曜日、本当は衆議院内閣委員会で超党派原案を含む3案が審議されるはずだったのに、直前に与党が維新案を丸呑みして「根本的に変質」させてしまった「差別増進法案」を強行採決してしまい、LGBTQコミュニティの反対や、様々な団体の抗議、メディア上での批判に耳も貸さず、当事者の声を聞こうともせず、今日にも強引に採択され、法案が成立してしまいそうです。たった1週間で。
こんなひどいプライド月間は初めてです。絶望や、怒りや、悲しみの声が渦巻いています。
しかし、14日の集会で北丸雄二さんが「LGBTQコミュニティは何度も何度も負けてきた、でも、決してあきらめずに闘い続けてきた、日本だって10年前には考えられなかったことが達成されている、ちょっとずつ良くなっている、僕らは10代の頃はたった一人だったけど、今はこんなに大勢の仲間がいる」と語ったように、いまはバックラッシュに負けてしまったように感じるかもしれませんが、日本が民主主義国である限り、長い目で見れば必ずよくなっていく、権利回復や平等が達成されていくと信じて、コミュニティの結束を強めながら、進んでいきましょう。
【追記】2023.6.16
さっぽろレインボープライドが呼びかけ、北海道の17の団体や個人が賛同し、「北海道LGBTQアライアンス」として連名で声明を発表しました。
「当事者の差別や困難をなくす様々な取り組みを「帰省」する動きが出たきた場合、その動きに時に正当性や法的根拠を与えかねないもの」「明確な問題がある」「到底受け入れられるものではなく、当事者の人権を脅かしかねないもの」「私たちは、今回可決された内容でのLGBT理解増進法に抗議します。早急にその改正がなされることを、私たちは求めます」という、毅然とした、力強い声明です。
また、ピンクドット沖縄も『LGBT理解促進法案の提出に危機感』と題した声明を発表し、「当事者や支援団体から見ると多数派の意見が加わるたびに修正、後退され、むしろ理解を阻害されかねない内容に書き換わっている点が多々あり、断じて看過することはできません」「(「結婚の自由をすべての人に」訴訟の)1審にて多数派が認めないという理由で少数派の人権が認められないということは許されないという地裁の見解があるのにも関わらず、このような多数派に配慮されすぎた修正案は、理解促進の根幹を揺るがし、差別を助長する危険性を孕んでいるのです」「われわれ啓発支援団体は当事者に寄り添い、誰もが自分らしく生きやすい社会を目指す上でこの法案に強く反対を表明するとともに今後も同性婚の実現に向け引き続き地方公共団体や議会、当事者支援団体、教育機関、企業等と連携を取り組んでまいります」と述べました。
【追記】2023.6.18
金沢レインボープライドからも「LGBT理解増進法に対する重大な懸念と反対の意思表明」が出されました。
【追記】2023.6.23
TRPから改めて、「「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」施行にあたっての声明」が出されました。
参考記事:
LGBT修正法案「差別を生む」 当事者、性的少数者危険視と抗議(共同通信)
https://www.47news.jp/9462157.html
LGBT法案「後退で遺憾」 連合会長(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023061501102
(社説)LGBT法案 だれを守る法なのか(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15661330.html
LGBT法案 差別直視し議論し直せ(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/special/discourse/editorial/article-997222.html
【社説】LGBT法修正 当事者は置き去りなのか(西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1098407/
保守派配慮のLGBT法案、理念骨抜き 当事者「差別構造を温存」(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/862384
「今のLGBT法案は廃案に!」松中権氏が語る当事者たちの懸念(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00474/061500014/
「むしろブレーキをかけるおそれがある」LGBT法案成立は “後退” 専門家は危機感(チューリップテレビ)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/545282