NEWS
「LGBT差別増進法案」が衆院本会議で可決されたことを受け、LGBT法連合会が警鐘を鳴らす声明を発表しました
6月13日午後、衆議院本会議において「LGBT理解増進法(差別増進法)」が可決されました。LGBT法連合会は、「当事者コミュニティに深刻な被害をもたらしうる」として、この法案の成立に反対し、「廃案とすることもやむ無しの姿勢をもって、全力でこの危機に取り組むことを表明する」との声明を発表しました。
以下に声明文をお伝えします。
「理解増進法」の衆議院可決に警鐘を鳴らす声明
2023年6月13日、衆議院本会議において、いわゆる「理解増進法」が本会議で可決された。この法案は、私たちの求めてきた法案とは真逆の内容であり、当事者にさらなる生きづらさを強いるものである内容となっていることを、強く非難する。この法案は、当事者にとっての「暗黒時代」の到来につながるものとして、最大限の警鐘を鳴らし、今が緊急事態であること、このままの法案が成立することは、当事者コミュニティにとって、深刻な被害をもたらし得るものであることを、この声明をもって表明する。
法案は、日本維新の会と国民民主党が提出した法案をベースにしながら、自由民主党と公明党との協議を経て、教育に関わる条文の文言修正と、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意するものとする」とする条文に「この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする」との条文を加えたものである。この「留意」は、もともとの「多数派への配慮」規定に対して、当会などの批判を受け、規定ぶりを「修正」したものと受け止めている。しかしすでに識者から指摘のある通り、実質的に多数派に配慮する規定として機能すると解される。今回の修正で更に指針を設ける規定が加えられたことにより、この留意事項や指針が、この法律が規定する国、地方自治体、事業者、学校の教育啓発や相談体制の整備などすべてに適用されるそうである。
かねてから与党議員のブログでは、当初の「理解増進法」与党案を使って自治体の先進的条例を制限する抑止力とする、ということが表明されていた。加えて、別の与党議員は「理解増進法」の4党修正案を使い、先進的な教育実践を「規制」するためにこの法案を使うと表明している。この法案については、法学者らから大きな懸念が示されており、当事者の差別や困難をなくす取り組み自体を「規制」する動きに対して、正統性や法的根拠を与えるものとなる。これは断じて看過することはできない。このまま可決されることは、決して許されないと表明する。
当会は、そもそも差別禁止法の制定を求めてきたのであり、理解増進に留まる法案については、一昨年に「辛うじて評価のできる内容」としていた。しかし、今回可決された法案は、当事者の方向を全く向いておらず、むしろ、差別をする側、困難を与える側の方向を向いて配慮をする、全く逆の法案である。日本においてLGBTに関する法の制定を心待ちにしてきた多くの当事者を裏切るものであり、国際社会や、日本社会の多くの支援の輪の広がりに対して、敵対的な位置付けの法案であると言わざるを得ない。
以上から、当会は、このままの内容で法案を通そうとる国会におけるあらゆる動きに対して、①成立に反対し、②参議院における審議を行わないよう強く要望し、③廃案とすることもやむ無しの姿勢をもって、全力でこの危機に取り組むことを表明する。