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「根本的に変質した」「理解阻害法案」への抗議集会が開催されました

 6月12日(月)19時〜、国会正門前で雨のなか、「LGBT差別増進法に抗議する緊急大集会 -これはLGBTQ+の命の問題です-」が開催されました。2日間で全国の56の団体が賛同し、会場に来られたスピーカーの方からは「根本的に変質した」「毒しかない」「ロシアのような」「理解阻害法案」だと怒りの声が上がり、会場からも「そうだ」と拍手が起こりました。リアルとオンラインを合わせて10000名を超える参加者が見守りました。
(傘をさしながら、PCではなくスマホでメモを取りながらの取材でしたので、スピーカーの方の発言を逐一、正確にお伝えできているわけではなく、抜粋したり、読みやすくしたりという編集をしております。ご了承ください)
(ポリタスTVが生中継の配信を行なっていました。いつまでアーカイブが観れるかわかりませんが、こちらに貼り付けておきますので、もしお時間ある方は、ぜひご覧ください)

 最初に、松岡宗嗣さんがスピーチしました。
「LGBT法が通ったね、よかったねと言われ、引き裂かれる思いがしました」
「どうにかして差別をなくそうとやってきて。本当は明確に差別を禁止する法律のほうがいいが、2年前、ないよりはと『差別は許されない』と謳った理解増進法案で合意して。しかし、9日に与党と維新・国民が出した法案は、理解を抑制するものでした。『全ての国民の安心に留意』との文言が入り、国が指針を作ると言う。多数派からの差別で苦しんでいるのに、当事者に配慮を求めている。私たちはただでさえ、何の保障もないのに、このうえ多数派の安全に留意しなければいけないのか。あらゆる領域で“多数派の安心”への留意が求められる。これは、私たちの生にとどめをかけるものです。マジョリティが安心できないと言えば取組みが阻止され、差別が増進されます。学校での教育については『家庭や地域住民の協力を』とされました。保護者の誰かが反対すれば学校での取組みが阻害されます」
「自民党の西田議員は、小学5・6年生向けの「男の子らしさ女の子らしさを勝手に決めつけない」とする教材を槍玉にあげて「小学生が混乱する」「行き過ぎ」だと言い、LGBT法案が「学校での教育を規制し、歯止めをかける道具」だと言い切っています。この法案は規制のための道具なんです。2000年代に、旧統一教会の影響も指摘されていますが、ジェンダーフリーや性教育へのバッシングがあり、今でも性教育がきちんと行なわれていません。同じことになります。なんとか現場で地道に理解を広げてきたのに…」
「法案が議論されるたびに骨抜きにされ、後退してきました。このような理解を阻害し、差別を増進する法案は、ない方がマシです。平等に扱われない絶望。差別的な発言やバッシングが増加し、当事者へのいじめやハラスメントも。唯一のつながりの場だったSNSにもいられない、家から出られない方もいます」
「私たちは少数です。だからアライに動いてほしい。みなさんに考えてほしい。傍観するのではなく立ち上がってください。大きな時代の流れを見れば、必ずLGBTQの人権が認められる方に動くと信じます。みんなで手を取り合って、なんとかあきらめずに進んでいきたいです」

 集会を主催した「LGBTQ+国会 議会運営委員会」の浅沼智也さんがスピーチしました。
「荒井秘書官差別発言を受けて、院内集会を開催したのが2月。差別禁止を求める要望書は結局、LGBTQ担当の森雅子首相補佐官は受取りを拒否し、内容証明で送りました。どれだけ人権が軽視されているのか」
「9日の衆院内閣委員会の直前に合体案ができた。もともとこの話は荒井首相秘書官の差別発言に端を発しています。今も政治家が差別発言をしています」
「2004年に施行された性同一性障害特例法も、2008年に「子がいないこと」という要件が「未成年の子が」と緩和されただけで、あとは動いていません。法案は通ってしまったらなかなか変わらないのです」
「すべての国民にシスジェンダーの安全に配慮しなさいという法案です。私たちマイノリティはいろいろな苦しみを味わい、我慢を強いられてきました。なぜこのようなことを言われなければいけないのでしょうか」
「いまトランスヘイトが吹き荒れていて、リアルに殺害予告も届いています。いつもトイレや風呂のことばかりあげつらい、当事者の困り事には耳も貸さない。入管法もそうでした。これは命の問題です
「私たちは声を上げ続けます。国会で闘ってくださっている野党のみなさんに感謝申し上げます」

 石川大我参議院議員がスピーチしました。
「今日は設営から手伝っています。2年前、五輪に向けて、ギリギリ許せる範囲ということで理解増進法案に合意しました。それも与党内の反発で実現しなかった。今年、荒井氏の差別発言を引き金に、G7までに法案を通そうという気運が高まりましたが、維新国民の案を丸呑みにして、理解増進ではない、差別する人たちを助ける法案ができてしまった。明日衆院を通過しても、なんとか参議院で留めたい。廃案にしたい」
LGBTQ理解増進法案は、差別する人たちに乗っ取られた。LGBTQを守るのではなく、差別しやすいように変えられた。毒饅頭ではなく、もはや毒でできた饅頭でしかない。とてもじゃないが食べられない。国会は人々の命を守るためにあるはずなのに、人権をないがしろにしています。死ねと言っているようなものです。このような法案は、廃案にするしかありませんん。いったん白紙に戻し、改めて差別禁止に向けた闘いを、みんなで一緒に。これは負けられない闘いです」
 続いて、共産党の宮本岳志議員と田村智子議員、社民党の大椿ゆうこ議員が登壇しました。みなさん、本当に熱く語ってくださいました。

 「東京都にパートナーシップ制度を求める会」共同代表の山本そよかさんがスピーチしました。
「東京都の人権尊重条例では、LGBTQ差別の禁止を謳っています。法的な効力も持つものですが、特に混乱もなく、差別禁止の取組みが全庁横断で行なわれるようになっています。差別にNOと言うことがどうしてこのように妨げられなければならないのでしょうか。いい加減にしてください」
「私はLGBTQ差別が原因で、子ども時代、死にたいくらいつらい思いをしました。いま国会で働く大人たちによって、私たちの尊厳が蹂みにじられています。私たちの安心と平等を実現してください」

 難民問題に取り組むFREEUSHIKUのゆうすけさんは、親しみの持てる関西弁で、熱く語りました。
 イランから来たゲイのシェイダさんは、イランに強制送還されたら死刑にされる運命にあったが、難民申請が却下されたので、裁判を闘い、しかし最高裁は「黙っていたらイランでも生きていける」と言い放つという残酷な判決で…シェイダさんは幸い、欧州のとある国に渡り、一命をとりとめた、彼はインタビューで「日本があんな国だと知っていたら絶対行かなかった」と答えているというお話は、シェイダさんを知らない若い世代にも響いていたと感じました。2019年に初めて同性愛者が難民認定され、ようやく法務省も変わったかと思われたが、変わらなかった、先日のウガンダから逃れてきたレズビアンの方の裁判では、「LGBTQの人はウガンダで有罪になったケースがない」「ウガンダでも理解が進んでる」と言われた、ふざけるなと、大勢が家から追い出されたり住民のリンチや性暴力に遭い、1000人以上がケニアに逃れていると語りました。
 家族に暴力を受け、タンザニアから逃れてきたゲイの人もいる。難民申請しても却下されたら、また裁判をしないといけない、収監された人への拷問もある。亡くなった方もいる、わざと落とす審査官に大量に振り分けられている問題もある、「ほんまひどい」とゆうすけさんは語り、最後にこう叫びました。「理解なんかいらんのじゃ、権利をくれ」

 KANE&KOTFEさんがスピーチしました。
 KOTFEさんが「元警察官です」と語りはじめたとき、それまで道路側を向いて立っていた警察官の方が振り返り、KOTFEさんのお話に耳を傾けたのが印象的でした。
 KOTFEさんさは「バイデン大統領はトランスジェンダーの子どもたちに、あなたは愛されてるし、社会の一員ですと語りました。トップのあるべき姿だと思います。いまの日本はどうか。この法案を作ったみなさんの家族や友人にも当事者の方がいると思う、トランスジェンダーの子どもかもしれない、そんな方たちの前で“多数派の安心に配慮しろ”と言うのですか? 当事者の子どもたちが未来に希望を持てる社会にしてください」と訴えました。
 昨年、神政連の冊子への抗議集会で、「この場で、こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが――生まれ変わっても、ゲイには生まれたくありません。もう二度と、こんなつらい経験はしたくありません。アイデンティティを否定され続ける人生です。そんな思いをする社会にしないでください。苦しんでる当事者を追い詰める社会にしないでください。お願いします」と悲痛な訴えをしたKANEさんは、「理解が進んできてるよねと言われたりしますが、いまでも当事者の子たちが悲しい現状を綴ったメッセージを送ってくるんです。理解抑制法案はやめてほしいです」と語りました。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告である西川麻美さんがスピーチしました。
「5つの都市の判決が出揃い、4つで違憲を勝ち取りました」(大きな拍手が起こりました)
「すべての判決で、同性カップルが家族になれないのはひどいと、国会で法律を作るべきだとされています。しかし、いまの状況は、理解増進法ですら、こんなです。国会のなかでどんどん改悪されて、特にトランスヘイトを煽る人たちの声に配慮して法案が変えられているのが恐ろしい。仲間としてトランスジェンダーへの差別は許せません。応援したいために今日は駆けつけました。無意味な差別をやめさせましょう」

 LGBT法連合会から、お二人がスピーチしました。
 新たに理事になったという時枝穂さんは、「LGBT法連合会はこれまで、当事者の困り事を国会議員の方たちに伝え、差別禁止法を求めて活動してきました。本来議員立法は全会一致の原則です。だから2年前に超党派で法案を作ったのです。しかし、当事者の声を聞かずに与党が原案を修正し、さらに維新・国民のひどい案を丸呑みして、可決委員会を通しました。これ自体、前代未聞です。当会の神谷は「崖から突き落とされた気持ち」だと述べています」「トランスヘイト、バッシングに憤りを覚えます。“心は女”と言えば…という言説にどれだけ傷ついてきたか。当事者を無視している。危機感を覚えます」「それでも、希望を捨てません。多くの方たちがこの国で人権擁護のために頑張ってきました。声を上げることをあきらめません」と語りました。
 事務局長の西山朗さんは、「LGBT法実現に向けて8年間、毎日やってきました。これまでにない絶望と怒りと悲しみを感じています。当事者がどれだけ苦しい現実を生きてきたかを顧みることなく、活動を抑えつける、暴力的な法案です」「自民党の古屋議員は「この法案はむしろ自治体による行き過ぎた条例を制限する抑止力が働く」と強調しています。自治体の取組みを抑制する危険な法案です」「阻止しなければなりません」と語りました。
 
 2年前の渋谷ハチ公前や、こうした集会でいつも素敵なスピーチをしてくれるKotetsu Nakazatoさんが登場しました。
「雨のなか、晩ごはんも食べずに駆けつけてくれたみんなに感謝。考えたんだけど、うちら、ここに来ることじゃなく、あったかい家でごはん食べたり、そういう未来がほしいよね。もしうちらの権利や暮らしが守られたら、何してる?って考えたとき、幸せを想像できずに生きてきたなって、贅沢だと思ってきた。ヤバい。ありえない。LGBTQがただ自分の好きなことをして暮らせるようになってほしい。この法案では未来が来ない。はっきりNOを突きつけたい。当たり前の暮らしを守るために。みなさん今日は帰ったら美味しいごはんを食べましょう!」

 今日は残念ながら会場に来られなかったものの、北丸雄二さんがメッセージを届けてくれました。
「LGBTQは何十年も差別に対する闘いをしてきました。トランプ政権以降、トランスジェンダーへのヘイトが巻き起こっている。日本ではその両方がこの数年で一足飛びに起きている、差別が何なのかしっかりしていない、流言飛語が飛び交っています。人間はそんな愚かじゃないのに。しかし、恥の上塗りをしたのが維新・国民です。ナチスのゲーリングは「何者かから国民が攻撃されると言い、平和主義者は愛国主義が不足し、国を危険にさらしていると非難すればいい。ほかに必要なことはない。この方法はどの国でも機能する」と言いました。彼らは「LGBTQから国民が攻撃されると言い…」と言っている。マイノリティを嘲笑う文化。多数派による差別が娯楽と化している。愚かな政治家がそれを法にしようとしている。世界で唯一ですよ。差別にお墨付きを与える法案は邪魔です。満腔の怒りを表明します」
 ほかにもたくさんのメッセージが寄せられましたが、時間の関係で、神道LGBTQ+連絡会など数名のメッセージが紹介されました。
  
 臨床心理士のみたらし加奈さんは、こう語りました。「昨年、初めての同性のパートナーと別れました。理由をよく聞かれますが、同性婚が実現するまで消化できないものがあります。なんとかなると思っていたのに、将来の見えなさが…。こうやって差別が差別と認められないことで、個人の問題が社会のことになってしまう人がたくさんいると思います。この法案で、本当にLGBTQの自死やメンタルヘルスの問題と向き合えるのでしょうか。無力感も感じます。すごく重い気持ちにもなります。トランスジェンダーへのヘイトもひどい。差別禁止が必要なのは明白です。この法案にNOと言います」

 台湾の同性婚に関するオーソリティである明治大の鈴木賢教授は、「当初、当事者として理解増進法は薬にも毒にもならないと感じていた」と語りました。しかし、今回の法案は「権利保護法ではない」「真水の入っていないものに書き換えられた」「維新・国民が全く性質を変えてしまった」「これは差別増進法だ。根本的に質が変わった」と指摘しました。「特に12条。すべての国民の安心に留意、と言っている。根拠なく不安を言えば、ストップをかけられる。“行き過ぎた権利”の主張を制限できる」「保護者の協力、心身の発達に応じてという文言。学校に統一教会の信者がいてクレームをすれば、学校での取組みが止まってしまう。小さな子への教育が抑制されてしまう」「この法案は、これまで行なわれてきた先進的な取組みを後退させるもの。当事者の権利に待ったをかけるもの。アンチへの口実を与えてしまうものです。当事者は、多数派の顔色を伺い、わきまえろと言われる」「このまま採択させてはいけない。人権を不当に奪われてしまう。私たちも人間なんです。人権に多数派の理解は必要ありません。有害無益な法案を断固廃案に!」

 昨年、神道政治連盟の差別的な冊子の配布に抗議する集会を開催した「Stand for LGBTQ+ Life」の小林さんがスピーチしました。「あれから1年経ってもデマが拡散され続け、議員自身が差別をしています。呆れます。私たちは共に家父長制と闘うべきなのに、分断されようとしています。トランスヘイトにNO!を」

 最後に、「LGBTQ+国会 議会運営委員会」の畑野とまとさんが、号泣しながら「亡くなった翔子ちゃんが(同性婚実現を求める)院内集会で、私にはもう時間がないと言っていました。私も60近いし、残された時間は長くありません」と語りました。「日本中トランスヘイト が吹き荒れて、公衆トイレにもヘイトビラが貼られ、何人も自殺しています。本当にこれでいいのでしょうか。女性の権利が脅かされると言う人たち、いったいどの口で言うのか、ジェンダーギャップ解消のために何をしてきたのか。女性をダシに、LGBTQへのヘイトを撒き散らしているだけじゃないですか。おかしいでしょ」「この法律は、本当にヤバいです。ロシアの同性愛プロパガンダ禁止法とそっくりです。私たちはトランスマーチを開催していますが、この法律ができたら、マジョリティへの脅威になるからやめろという声が上がり、公園の使用許可が下りなくなるかもしれない。TRPが代々木公園でできなくなるかもしれない。全国のプライドイベントが危機に瀕します。このヤバさを伝えてほしいです。すべての人が政治参加の権利を持てるのが民主主義です。この権利が危機に瀕しています。私たちはすべての差別に反対します」

 とまとさんがおっしゃっていることは杞憂ではないと思います。お隣の韓国では、プライドパレードを妨害しようとする勢力が、会場の公園の使用許可の取消しをさせたり、今年は会場自体を乗っ取っています。法律でお墨付きが得られたら、日本も同じような状況になりえます。
 ロシアではパレードだけでなく、公の場でのLGBTQの表明がすべて取り締まられます。いまだ政界に影響力を行使しているカルト教団などのアンチ勢力は、日本もそうなればいいと思って動いていることでしょう(上記で名前が出てきたような議員などの発言からもそういう思想の影響がうかがえます。なお、そうした宗教右派の問題から今回の法案の改悪の本質を探ろうとする「LGBTQ+『差別禁止』を拒むものは何か」というトークイベントが6月13日(火)20:00から配信されます)
 
 この法案の危険性をぜひ広く知っていただきたいです。
 そして、衆議院では強行採決されるかもしれませんが、参議院でなんとか成立を食い止めていただきたいと願うものです。


【追記】2023.6.13
 水曜の夜にも参議院議員会館前で抗議集会が開催されることになりました。LGBT差別増進法の衆議院通過に抗議するとともに、参議院で審議しないことを求めます(※参議院での審議の有無は14日昼に決まります)
 
LGBT差別増進法に抗議する緊急大集会-第2夜-
日時:2023年6月14日(水)19:00-
会場:参議院議員会館前

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