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75を超えるアンチLGBTQの州法が成立…ヒューマン・ライツ・キャンペーンが初の「非常事態宣言」へ
米国最大規模の人権団体で、同性婚実現にも多大な貢献を果たしてきた「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)」が6月6日、1980年の設立以来初めて「非常事態宣言」を発しました。HRCの報告書「LGBTQ+ Americans Under Attack」によると、全米各地で525を超えるアンチLGBTQの州法案が提出され、そのうち75超の法案が成立してしまいました。
米国でLGBTQへのバックラッシュが本格化しています。
HRCは「2023年になって州議会を駆け巡る前例のない危険なLGBTQ+への攻撃が急増している。2023年だけで75以上の反LGBTQ+法案が成立し、昨年の倍以上となり、これまで最悪だった昨年の記録を更新した」と危機感を示します。同団体のケリー・ロビンソン会長は、LGBTQ米国人が現在、非常事態の下で暮らしているとの認識を示し、実体のある危険な脅威が増大していると指摘、これがLGBTQへの暴力につながり、安全な州を求めて家族が移転を強いられることも多いと述べました。アンチLGBTQの風潮が広がり、一人ひとりが危険にさらされているとも訴えました。
昨年はフロリダ州で「ゲイと言ってはいけない法」が成立し、ディズニーが州と闘っているのをはじめ、リナ・サワヤマのようなアーティスト、バイデン大統領なども抗議の声を上げ、カミラ・カベロのようにフロリダのLGBTQの子どもたちへの支援活動を始める方もいました。
今年はテネシー州で公の場でドラァグ・ショーをすることを禁じる州法が成立するという衝撃的なニュースがありましたが、それだけでなく、未成年のトランスジェンダーへの性別適合治療を禁止する州法、トランスジェンダーの生徒のスポーツ参加の規制など、トランスジェンダーに関する差別的な州法が多数提出され、成立してしまっています。
米国のディスカウントストア大手の「ターゲット」では、6月のプライド月間に合わせてLGBTQ関連商品を発売したところ、一部の店舗で従業員が怒った利用客に詰め寄られたり、展示が荒らされるなどして、商品の撤去を余儀なくされるという事態になったそうです。同社は「10年以上にわたり、プライド月間を祝う商品を提供してきた。2023年のコレクションを発売して以来、私たちは脅威にさらされ、チームメンバーの安全と幸福感が働く場で影響を受けている」との声明を発表しました。
4月には、最もLGBTQコミュニティを強力に支援してきた企業の一つであるバドライトが、トランス女性のディラン・マルベイニーをPRに起用し、保守派の人々から不買運動が起こり、親会社アンハイザー・ブッシュの複数の工場に爆破予告まで届く騒ぎとなりました。
プライド月間に当たる今月、ロサンゼルスの小学校では子どもへのLGBTQ教育に反対する保護者が学校前で抗議し、警察が出動する事態になっています。
一方で、LGBTQ差別を法律で禁止する州も20以上あります。アマゾンやアップル、イケアなど324社はHRCが展開する「反LGBTQ州法案に反対するビジネス声明」に署名しています。
HRCは「私たちのコミュニティは危険にさらされていますが、私たちは戦いを止めない。今、そしてこれからも戦い続ける」と宣言しました。
HRCは同時に、LGBTQの旅行者やアンチLGBTQの州の居住者などを支援するため、健康や安全、人権に関する情報や各州の法律をまとめたデジタル・ガイドブックを公開しました。先月は、アンチLGBTQ法が次々と導入されてプライド月間のいくつかのイベントが中止となったフロリダ州への旅行者に向けた警戒情報を更新していました。
参考記事:
全米最大規模のLGBTQ人権団体 初の非常事態宣言 “反LGBTQ法の成立急増”で(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/category/international/4d17c31697854fdd8dd90fd520396b2c
米州「反LGBTQ法」増加、権利団体が非常事態宣言(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71686080X00C23A6EAF000/
性的少数者に初の「非常事態」宣言 米権利団体(CNN)
https://www.cnn.co.jp/usa/35204899.html
米で反LGBTQ法が75本に、人権団体が「緊急事態宣言」(オルタナ)
https://www.alterna.co.jp/84630/
米でLGBT向け商品に反発 「プライド月間」前、撤去の店も(共同通信)
https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202305/0016403669.shtml