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 　性的マイノリティへの理解を促す「LGBT理解増進法案」をめぐって自民党内で合同会議が開かれ、執行部は「性自認を理由とする差別は許されない」を「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」に修正する案を示しましたが、「差別」を明記することに反対する意見が相次ぎ、結論が出ず、継続審議となりました。週内にも党内合意を得て国会提出をめざすようですが、LGBT議連会長の岩屋議員はG7サミットまでの成立は難しいと見ています。

　
　5月8日午後、自民党内閣第1部会と性的マイノリティに関する特命委員会の合同会議が開かれました。出席者によると、法案の「差別は許されない」という文言が「不当な差別はあってはならない」に変わり、「性自認」という言葉は「性同一性」に修正されたということです（編注：「性自認」も「性同一性」もGender Identityの訳語です。「性自認」ではなく「性同一性」という言葉なら法案を認めるというのもおかしな話です）。2年前に超党派LGBT議連が取りまとめ、与野党合意を見たLGBT理解増進法案ですが、「差別は許されない」という一文が入ることでギリギリ、法ができる意味がある（差別解消につながる）として野党も合意した経緯があり、推進派の議員からはこれで他の党の理解が得られるのかという懸念の声も上がったそうです。「そもそも超党派の議員連盟の法案をベースに議論するべきではない」といった意見も上がり、引き続き議論することになりました。出席議員によると、会議では反対論が大多数を占めたそうです（合同会議で発言した18人中14人が反対）
　超党派LGBT議連の現在の会長である自民党の岩屋毅議員は、「人権に関わる問題なので、できるだけ大多数の国会のマジョリティ、賛成を得て決める。できれば全会一致で決めることが事柄の性質として大事」「なかなかサミットまでっていうのは厳しい。日程的には厳しくなってきてるのかなと」と会合後に語りました。
　また、西田昌司参院議員は記者団に「差別一般を法律で規制するのは日本の現状に合わず、悪用されかねない」と述べたそうです（またしても問題発言。他の様々な法や条例で差別禁止が明記されていますが、今までに一体どんな“悪用”があったのか…誰が何のために“悪用”するというのか…）

　19日開幕のG7広島サミットまでに法案を成立させるには、今週中には自民党として了承しないと間に合わないというのが大方の見方です。こちらの記事でもお伝えした通り、そもそも差別というのはもともと不当なもので、あたかも“不当ではない差別”があるかのように書き換え、ある種の差別を容認しようとするのは大問題だと非難の声が上がっており、野党の反発は必至です。理解を求めるための国会審議などを考慮すると、サミット前の成立は見通せない状況です。
　　
　
　時事通信は本日の記事で、「超党派でまとめたLGBT理解増進法案は、自民党保守派の反対で提出のめどすら立たない。岸田文雄首相の指導力も見えず、価値観を共有するはずのG7で議長国日本の立ち遅れが目を引きかねない状況だ」と厳しく批判しています。
　
　松岡宗嗣さんはTwitterで、「G7サミットには間に合わないのがほぼ確定。これが議長国」「ただでさえ骨抜きの法案がさらに後退。昨年のG7首脳宣言「差別からの保護」や、今年のG7外相宣言「世界を主導」も全部嘘でしたと説明するのだろうか。記事では「人権に関わる問題なので、できるだけ大多数の国会のマジョリティ、賛成を得て決める」とあるが、人権は多数派の許可で決めるものじゃない」と述べています。

　Twitter上では、多くの批判も上がっていますが、「与野党合意案を修正なしに5月19日までに成立させましょう。議員立法での成立ですので、まだ充分に可能です」という前向きな声もあります。あきらめず、声を上げていくことが大事なのではないでしょうか。
　
　

参考記事：
“LGBT”の理解増進へ 自民 議員立法めぐり議論（NHK）
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230508/k10014060901000.html
G7サミット前成立には「時間切れ寸前」 LGBT理解増進法案、自民党内で修正案審議続く（TBS）
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/474706?display=1
LGBT法案　自民で割れる　広島サミット前の成立“困難”に（テレビ朝日）
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000298383.html
LGBT法、サミット前成立困難　修正案提示に自民異論相次ぐ（共同通信）
https://nordot.app/1028261612429836288?c=302675738515047521
LGBT法案、自民が修正案　「差別」→「不当な差別」（日経新聞）
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0887T0Y3A500C2000000/
LGBT法案、自民がG7前に国会提出へ　保守派に配慮の文言修正（朝日新聞）
https://digital.asahi.com/articles/ASR5872GSR58UTFK00J.html
ＬＧＢＴ法案　自民が修正案、差別禁止の表現後退　サミット前の成立困難（北海道新聞）
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/842603/
LGBT理解増進法案、広島サミット前の成立は困難？自民党内の議論この日もまとまらず（日刊スポーツ）
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202305080001361.html

ＬＧＢＴ擁護、問われる日本　サミット前の法整備厳しく（時事通信）
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023050700082&g=pol