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「結婚の自由をすべての人に」東京二次訴訟で原告の福田理恵さん「埋もれている少数派の小さい声を聞いてほしい」

 「結婚の自由をすべての人に」東京二次訴訟の8回目の口頭弁論(飛澤知行裁判長)が5月25日、東京地裁で開かれ、原告の福田理恵さんが意見陳述をして「裁判所には埋もれている少数派の小さい声を聞いてほしい」と訴えました。
 福田さんは20代で信頼していた親族にカミングアウトした際に「異常だと思う。家族にいてほしくない」と言われ、深く傷ついた経験があります。その後も、職場でLGBTQをからかう言葉を聞いて、心が切り裂かれるような痛みを感じてきました。そんな状況でも、世界の国々では徐々に結婚の平等が実現してきたことに支えられて生きてきたといい、法廷で「各国で結婚が法制化されていったことに、私もいつか結婚できるかもしれないという希望とともに、私も生きていていいんだと大きく励まされた」と語りました。「同性同士の結婚を法制化することで、LGBTの人たちも日本の社会の一員であることを承認するメッセージとなり、若い世代やこれから生まれてくるLGBTの人たちが日本で生きていく希望になると思っています」
 福田さんが社会の変化を目の当たりにしてきた一方で、変わらないと感じているのが国です。札幌地裁の違憲判決や、東京地裁の判決の後も、国は同性婚を認めるための法改正をする姿勢を示していません。今年2月には首相秘書官による「見るのも嫌だ」などという差別発言もありました。福田さんは法廷で「差別される側を守るのではなく、差別する側を擁護する行政や議員からの言葉に、憤りと深い哀しみを感じています」と述べました。「法律上の同性カップルに婚姻制度による保護がないことは、人権侵害の問題なのです。そのような問題を、差別意識のある一部の大きな声が影響力を持つ政治の場で、世論の実態を反映する公平な議論はできるのでしょうか」
 福田さんは記者団の取材に対し、法廷では国が変わらないからこそ裁判所には人権を守る判決を出してほしいと訴えたと語りました。「政治が世論を本当に反映しているのであれば、もうすでに結婚できる世の中になっているはず。でも実際はそうではなく、逆に議員や行政からの差別発言がある状態です」「差別をするような人たちが政治の場で大きな声を持っているのであれば、人権の最後の砦である裁判所が判決を出すべきだというメッセージを伝えました」
 昨年11月の東京一次訴訟判決で東京地裁は「同性愛者が結婚するための法律がないことは、人格的生存に対する重大な脅威、障害」と述べました。その一方で「社会の中では、結婚は異性カップルがするものという社会通念がある」「違憲状態を解消するために、婚姻とは別の制度を設けてもよい」という判断も示しました。25日の口頭弁論では、弁護団がそういった判断を批判しました。上杉崇子弁護士は記者団に「一次訴訟の判決では全く不十分だと思っています」と述べました。 福田さんも「別の制度を作れば、『セクシュアルマイノリティは別の存在だ、区別してもいいんだ』という差別を容認してしまう社会になってしまうと思います。今ある同じ婚姻制度の中に、私たちも入れてくださいというのが私たちの思いです」と語りました。


 全国5ヵ所で行なわれている「結婚の自由をすべての人に」訴訟のうちの愛知訴訟は、今月30日に名古屋地裁で判決が言い渡されます。原告の方は、4件目の地裁判決を前に「どちらかの人生が終わる時(一緒に過ごせて)『よかったね』とお別れしたいが、かなわないかもしれない。裁判官にはそこを真摯に受け止めてほしい」と語っています。
 愛知県内で暮らす30代の大野利政さんと鷹見彰一さん(いずれも仮名)は2016年秋、マッチングアプリを通じて出会いました。動物や植物が好きで、旅行という共通の趣味もあったが、それ以外は正反対。家事が得意で気配りができる鷹見さんと、いざという時に決断でき頼りがいのある大野さんは、互いを補い合う関係が「しっくりきた」と振り返ります。2017年5月には、ディズニーランドのシンデレラ城の前で、大野さんからプロポーズ。それは鷹見さんの憧れのシチュエーションでした。結婚式を挙げたい気持ちもあったものの、法律上は婚姻関係を認められていないことに違和感を覚え、正装での写真撮影にとどめました。翌年にはマンションを購入し、互いに相手を後見人とし、相続などについての取決めを記した「公正証書」を約15万円かけて作成しました。「病院や役所の手続きで(関係を証明する)必要が生じた時、せめてもの『武器』になればと思った」といいます。同性パートナーシップを証明する制度が各地に広がり、パートナーを生命保険の受取人に指定したりもできるようになりましたが、企業によって対応が異なるため、「選択肢は限られてしまう」といいます。「契約の度にカミングアウトしなければいけないし、それは命がかかった場面でも同じ」と鷹見さん。どちらかが入院しても病状の説明を受けたり、手術に同意したりするのは、原則として家族に限られる。同性カップルは法的な家族ではないため、緊急時の面会を拒まれる場合もあります。パートナーが救急搬送された時、「公正証書を見せて関係性を説明していれば、その間に亡くなってしまう可能性もある」と指摘しました。
 2019年、「結婚の自由をすべての人に」訴訟に加わった際、「性別に関係なく『好きな人といたい』と堂々と言えたら」と鷹見さんは語りましたが、法廷に立つのをやめたくなることもあったそうです。2022年6月の大阪地裁判決が現行制度を合憲とした際には、「(自分は)存在しちゃいけなかったのかな。生まれる国を間違えたのかな」と思い詰め、涙しました。そんな鷹見さんの姿に「こんな思いをさせてまで続けるのが正しいのか」と大野さんの気持ちも揺らいだといいます。そこで立ち止まらなかったのは、周囲の支えがあったから。親戚や会社の同僚も、当初はどこか他人事のような反応でしたが、法廷での意見陳述を聞くにつれて「自分の子がそうなったら」と考えてくれるようになったそうです。
 鷹見さんは判決を前に「時代に合わせて早く制度を変えてほしい」と願い、大野さんは「結果に一喜一憂するのではなく、できるだけ多くの人に判決内容に関心を持ってもらうことがいちばん大切だ」と語っています。
 
 6月8日には福岡地裁でも判決が下されます。
 26日、熊本市在住の原告、こうぞうさんとゆうたさんが県庁で会見し、「同性婚の法制化を促す判決を出してほしい」と訴えました。
 こうぞうさんは、「政治が動かないなかで、判決には大きな意味がある。(これまでに判決が出た)他の地裁よりも一歩踏み込んだ、明確な違憲判断が出ると信じている」と語りました。パートナーのゆうたさんは、「本来は裁判をしなくても(だれでも結婚という選択ができ)、安心して暮らせる社会を願っている。一刻も早く国に動いてほしいという心持ちだ」と語りました。

 5月30日と6月8日、相次いで下される地裁判決に注目し、行方を見守りましょう。 
 

 なお、この訴訟とも関連すると思われますが、2014年2月に設立され、早くから同性婚実現を求める活動を展開してきた「NPO法人EMA(いーま)日本」の代表を務める寺田和弘さんが幻冬社plusの「結婚って何?」特集に寄稿し、活動を始めたきっかけと、現状の壁、今後の展望などを語っていました。
「首相補佐官が同性愛者を見下す「失言」をする社会で、どれだけたくさんの子どもたちが、孤独の中に苦しみ続けていることか。そんな失言の背景にも、法律自体が同性愛者を差別していることが背景にあります」
「結婚は、多くの人たちにとって人生のハイライトであり、周囲からも祝福される最も幸福な瞬間の一つです。だからこそ私は、思春期の頃、大人になっても自分が結婚できないと気づいて絶望しました」「周囲からも祝福される幸福な人生のハイライトである結婚ができないと思春期に気づいた人たちは孤独の淵に追いやられてしまいます。このことに皆さんが気づいてほしいと思います」
 
 

参考記事:
同性婚訴訟で「社会はもう変わっています」原告が意見陳述 元首相秘書官「見るのも嫌」発言にも言及 東京地裁(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/252378
差別する人たちが大きな声を持っている――。結婚の平等裁判、少数派の人権の砦になるよう訴える(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-equality-tokyo-2-8_jp_646d9ee1e4b0005c605cd847

同性婚訴訟 都度都度カミングアウト必要、命かかる場面でも 最期、会えないかも 30日名古屋地裁判決(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230526/ddm/012/040/133000c

「同性婚の法制化促す判決を」 6月8日の福岡地裁判決前に熊本市の原告が会見(熊本日日新聞)
https://kumanichi.com/articles/1057118

なぜ同性婚が必要か(幻冬社plus)
https://www.gentosha.jp/article/23437/

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