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G7首脳声明にLGBTQの人権を侵害する暴力を非難すると明記

 G7広島サミットが昨日から開幕しています。
 今年3月、LGBTQ+の人権保護と政策提言を促進する新たなエンゲージメントグループ『P7(Pride7)』が設立され、3月30日にはG7を含む計10ヵ国から12団体が参加し、歴史的な「P7」サミットが開かれ、4月にはG7広島サミットの成果文書にLGBTQの課題を含めること、あらゆる政策分野において必要な法的、財政的、教育的措置を講じること、差別禁止法や婚姻の平等を保障する法律の制定など11項目への取組みを求めるコミュニケ(政策提言)がLGBT理解増進担当の森雅子首相補佐官に提出されました。
 この「Pride7(P7)」の構成団体であるLGBT法連合会、公益社団法人「結婚の自由をすべての人に -Marriage for All Japan-(以下MFAJ)」の方たちなどが広島に出向き、記者会見などを行なっています。20日13時、G7広島サミットに向けた「NGOスペース」である広島市青少年センターの入口付近で、成果文書にジェンダー平等やLGBTQの人権擁護も含めることを求め、スタンディング・パフォーマンスを行ないました。「No Rights, No Life(人権は命)」「My Body My Choice(私のからだは私のもの)」といった、一人ひとり異なる14種類のメッセージボードを掲げ、日本語と英語で読み上げを行ないました。P7日本実行委員の松中権さんは、「トランスジェンダーの命だって大切だ!(Transgender Lives Matter!)」と訴えました。

 そして共同通信の19:20のニュースによると、本日、G7首脳は「LGBTQIA+や女性の人権と基本的自由を損なう暴力を強く非難する」「全ての人々が性自認や性表現、性的指向に関係なく暴力や差別のない生活を享受できる社会を実現する」と首脳声明に明記しました。政治や経済、教育などの分野で、LGBTQIA+や女性の参画を確保し、一貫してジェンダー平等に努力するとも言及しました(原文はこちら。英語、PDFです)(Toshiさんという方が日本語に翻訳してくださっています)
 昨年のエルマウサミットでのコミュニケ(首脳声明)には「我々は、女性と男性、トランスジェンダー及びノンバイナリーの人々の間の平等を実現することに持続的に焦点を当て、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全なコミットメントを再確認する」と書かれていましたが、今回は「LGBTQの人権と基本的自由を侵害する暴力を非難する」というより強い論調となり、昨年よりさらに踏み込んだ声明になっています。
 
 議長国の日本では、超党派原案から後退し「骨抜き」になったLGBT理解増進法案の与党修正案がG7前日に駆け込みで国会に提出されたところです(野党は「後退は認められない」として超党派原案を提出しています)が、驚くべきことに、日本維新の会と国民民主党は19日、公衆浴場や更衣室での振る舞いに懸念が寄せられていることを挙げて、シスジェンダーへの配慮規定などを盛り込んだ独自案を検討することを明らかにしました。性的マイノリティを差別から守るための法律であるはずなのに“心は女性だと言って男が女装して女湯に入ってくる”というようなネット上のデマ(トランスヘイト)に乗っかって、マジョリティに配慮せよと法的義務を課すという、とんでもない考えです。与党修正案よりもひどい、LGBTQ差別法案になってしまう、と非難の声が上がっています。
 18日には、県内の高齢者介護施設にジェンダーレストイレとジェンダーレス更衣室が設置され、施設長が「埼玉県知事からお褒めのお電話を頂いている」と、抗議した男性・女性職員らに対して使用を迫り、複数の職員が退職に追い込まれたというデマが拡散された件について、大野元裕知事が全くの捏造だと怒りの会見を開くという出来事もありました。
 G7サミット議長国である日本は、首脳声明に基づき、LGBTQIA+の人権と基本的自由を暴力や差別から守るべく、こうしたネット上のデマにも毅然とした対応をしていただきたい、理解増進ではなく差別禁止の法整備を進めていただきたい(少なくとも超党派原案を国会で通していただきたい)、そうでなければG7首脳声明とあまりにもかけ離れた「二枚舌」ということになってしまいます。
 
 
 
参考記事:
LGBTの人権侵害非難、声明に ジェンダー平等に努力と言及(共同通信)
https://nordot.app/1032589813460173812?c=768367547562557440

【詳報】招待国交えた会合開始 ジェンダー平等での首相発言に注目(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR5K4GNLR5KDIFI005.html

LGBT法、独自案協議 シスジェンダーに配慮 維・国(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023051900853
LGBT法案巡り維国共同で法案作成着手へ 国民・榛葉幹事長「全ての人の尊厳と人権を守る法案を」(スポニチアネックス)
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2023/05/20/kiji/20230520s00042000044000c.html

埼玉のデマ拡散中「ジェンダーレストイレを迫られ退職」…事実確認してウソと判明 問い合わせ多く県庁迷惑(埼玉新聞)
https://www.saitama-np.co.jp/articles/27413/postDetail

※細かいことですが、朝日新聞の詳報のなかで「イタリアは2016年に同性婚が合法化された」との記述がありますが、これはシビルユニオン(異性婚と同等の権利を付与する準同性婚)のことです。イタリアは同性婚に強固に反対するカトリックの牙城であり、同性カップルの権利保障が難航してきたという歴史があります(詳細はこちら

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