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「骨抜き」のLGBT法は許されないとの声が上がり、明日緊急院内集会開催へ

「骨抜き」のLGBT法は許されないとの声が上がり、明日緊急院内集会開催へ

 12日の自民党のLGBT理解増進法案をめぐる会議で、「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」と、「性自認」を「性同一性」などと修正する「与党案」が了承され、今週、国会に提出されようとしています。法案に反発する議員が多い安倍派の幹部は「もう十分に『骨抜き』になった」と発言、また、宮澤博行衆院議員は「行き過ぎた人権の主張、もしくは性的マジョリティー(多数派)に対する人権侵害、これだけは阻止していかないといけないと思います」と発言しました。
 もともと(五輪を見据え)差別解消法の成立に向けて超党派LGBT議連で何年も話し合いが進められていたのが、自民党からLGBT理解増進法案が提出され、2年前、「差別は許されない」との文言を入れることで与野党合意を見た法案が(こうして議論の過程でも差別的な発言が次々に述べられながら)「骨抜き」にされ、過去の自民案に「先祖返り」しているということで、さまざま批判の声が上がっています。
 

 『沖縄タイムス』は社説で「骨抜き」は許されないと批判しました。
「根拠の薄い反論に忖度した内向きの法案だ。これまでの議論をないがしろにした修正案であり、法の趣旨を後退させる」
「言い回しを変更する修正案は、法をゆがめ骨抜きにする。国民に誤った認識を与えるような修正をすべきでない」
「2年余りも議論を停滞させた上、党の論理を優先して与野党の合意案を後退させることがあってはならない」
「差別解消をはっきりとうたった法の制定こそ急ぐべきだ」

 『信濃毎日新聞』も、社説で「人権を軽視し差別を残す」と厳しく追及しています。
「法案を骨抜きにして差別の容認にもつながりかねない」
「大きな問題は、認識不足に伴う差別的発言が、論議の過程で党内から相次いだことだ」「性自認に基づく「差別は許されない」としたまま成立すれば、「性自認を女性と偽った男性が女性用風呂に入る」などの言説が典型だ。修正前の内容で成立しても、この行為が犯罪であることは変わらない。誤解を広めて危機感をあおっており、看過できない」「法案の「性自認」を「性同一性」に修正したのも同様だ。本来は同じ意味なのに「性自認は自分の認識だけで臨機応変に変更できる」という誤った言説に基づいており、差別につながりかねない」
「修正案は性的少数者を軽視し、「差別する側」への理解を求める内容になっていないか。差別禁止の項目を排除し、同性婚阻止につなげたいとの思惑も垣間見える」
「岸田文雄首相に議長として声明をとりまとめる資格はない。法案を修正前に戻すだけでなく、差別禁止を盛り込むべきだ」

 キャスターの松原耕二氏は14日の『サンデーモーニング』(TBS)で「自民党の右派と呼ばれる人たちがなぜここまで反対するのかと。根っこにあるのは右派の人たちは困ってるんじゃないか。LGBTを認めると夫婦別姓、未婚の母を認めないといけない。家を大事にしてきた伝統的な日本のよい風景が失われるんじゃないか。天皇制も万世一系、男性の天皇制じゃなくて女系天皇、女性天皇と最終的にそこまで行くんじゃないかと。そういう懸念が根っこにあるんじゃないかと思う」「自民党の支持層である岩盤保守層となる人達。彼らの配慮で進まないんだとしたら、これは本当に保守と言えるのか」と指摘しました。「G7の中でも孤立せざるを得ないような状況なワケですよ。この国にとって本当にマイナスになっていく。これは考えておいたほうがいいと思いますね」

 プレジデントオンラインの取材に対して松岡宗嗣さんは、法律で差別を禁止することに反対する政治家がいるのはなぜか?との質問に対し、伝統的な家族観を推進する神道政治連盟や日本会議、旧統一教会などの右派勢力に支持されている政治家の一部が、「差別を禁止すると同性婚を認めざるを得なくなる」と考え、強硬に反対していると説明しています。「父親が頂点に立ち、“女・子ども”はそこに付き従っていくという家父長制をベースにした家族観が根強く、それに反するものは排除したい。そのため夫婦別姓や同性婚に反対しているのだと思います」
 ある自民党の政治家も「反対しているのは、日本会議と神道政治連盟に支援された一部の議員で、全体の中ではほんの一握り。みんな比例で当選しているから、支持団体の意向に沿わないと選挙で勝つことが難しくなるのだろう」と話しているそうです。
 
 世論調査でもLGBTQを差別から守るための法案や同性婚への賛成が多数を占め、経団連も、連合も、地方議会なども賛成し、15ヵ国の大使が共同で法整備を求め、G7広島サミット首脳声明に「LGBTQの権利を保護し人権状況改善に取り組む」旨を明記することが決まっているにもかかわらず、自民党内で法案の「差別禁止」明記に猛反対が起き、「LGBTQの権利擁護=共産主義」などという妄言や差別発言が垂れ流されつつ、「法案は「骨抜き」にされ、理解増進と言いながら性自認に関する誤った認識を広める内容になってしまっている状況に対して、LGBTQコミュニティからも怒りの声が上がり、明日16日火曜日に抗議の緊急院内集会が開催されることになりました。
 YouTubeLiveでも配信されますので(アーカイブも残りますので)、当日会場に来られない方もぜひご覧ください。詳細は公式Twitterアカウントでご確認ください。
 
「今年2月3日の荒井勝喜首相秘書官(当時)の同・両性愛差別発言が契機となり、LGBT理解増進法の成立への積極姿勢が与党から示されました。「G7広島サミットまでには成立を」という声もありました。私たちは全国各地のLGBTQ+当事者団体とともに”理解増進法ではなく差別禁止法を”の声を国会議員に届けるべく、2月14日に院内集会を開催しました。めざす法案の内容には意見の隔たりがありましたが、早期成立に向けた意気込みについては積 極的に評価していました。
 あれから3ヶ月。自⺠党「性的マイノリティに関する特命委員会」で取りまとめられようとしている、LGBT理解増進法の修正案はそれ自体がLGBTQ+当事者に対して差別的眼差しを向ける内容です。超党派の議員連盟での合意点は、基本理念や目的規定に「差別は許されない」旨を明記するものでした。ところが、「不当な差別はあってはならない」という書き振りに後退し、“正当な差別”の存在を是認するものとなりました。この明記さえためらう意見も出されています。また、既に国際疾病分類(ICD-11)から削除されている性同一性 障害(GID)の枠組みでのみトランスジェンダーに対応することを想定し、「性自認」の語 が削除され「性同一性」に代えられています。ここには、昨今苛烈になっているトランスジェンダー差別言説の影響が明確に顕れています。「差別を許さない」ことに躊躇し、差別言説の影響を受けて「修正」された法案など要りません。国際社会に向けた「やってる感」を 演出するだけでG7広島サミットをやり過ごそうとするのは到底許されません。
 私たちは人間です。人権の回復のために、差別に対峙する法を望むため今回緊急院内集会を開催することにしました」

LGBTQ+緊急国会 〜LGBT法案の後退に抗議します〜
日時:2023年5月16日(火)17:30〜19:30
場所:衆議院第二議員会館 多目的会議室
内容:
1.LGBT理解増進法案の修正点に対する問題提起〈基調提起〉
2.LGBTQ+当事者たちの声(登壇者は調整中)
主催:LGBTQ+国会 議会運営委員会
※手話通訳(日本語)がつきます
※参加をご希望の方、17時に衆議院第二議員会館入口にお越しください。担当者が通行証をお渡しします




参考記事:
LGBT法案「十分骨抜きになった」 G7前の提出優先した自民(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR5D73N7R5DUTFK00X.html

「LGBT法案」保守派に配慮の“政治の議論”と当事者現場の落差【報道特集】(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/484463

[社説]LGBT法自民案 「骨抜き」は許されない(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1151446

〈社説〉LGBT法案修正 人権を軽視し差別を残す(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023051400013

松原耕二氏が自民党のLGBT理解増進案を批判「この国にとって本当にマイナス」(東スポ)
https://nordot.app/1030292039797982138?c=516798125649773665

国内世論もG7も支持しているのに…ごく一部の強硬反対派のためにLGBT法案が通らない自民党の深い闇(プレジデントオンライン)
https://president.jp/articles/-/69461

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