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　クリスマスを前に、素敵なニュースが届きました。
　カトリック教会の教皇フランシスコは18日、司祭が同性カップルに祝福を与えることを許可することを宣言しました。LGBTQのカトリック教徒にとって、大きな前進となります。

　
　ローマ教皇庁（ヴァチカン）が発表した「宣言」では、司祭は特定の状況において、同性カップルや“変則的”なカップルにも祝福を与えることが許されると述べられました。カトリック教会における祝福は、通常は司祭によって行なわれ、対象となる人や人々を温かく見守ってくださいと神に祈ったり嘆願したりするものです。
　ただし、こうした祝福が通常の教会儀式の一部として行なわれたり、シビルユニオンや結婚式と結びつけてはならないとしています。また、婚姻を男女間のものとする教義は維持するとしています。
　教皇は18日にこのヴァチカン文書を承認。ヴァチカンは、この宣言は「神はすべての人を受け入れる」というしるしだと述べました。　
　教理省長官を務めるビクトル・マヌエル・フェルナンデス大司教は、この宣言は「婚姻に関する教会の伝統的な義を固持するもの」でカトリック教会での同性カップルの地位を認めるものではないとしながらも、カトリック教会の魅力を「広げる」という教皇の「司祭としてのビジョン」のなか、新たなガイドラインによって、なお罪深いとされている関係にも祝福が与えられるようになると語りました。
　宣言は、祝福を受ける人々は「事前に道徳的な完全性を要求されるべきではない」としています。


　カトリック教会では長年、同性愛はタブーであり、同性婚を認めず、アメリカなどで同性婚合法化の動きがあると、それを阻止するロビー活動を行ない、カトリック教徒らに反対するよう働きかけを行なってきました。そのため、同性愛者であると自認する信者の苦悩は甚大で、信者が教会を離れる一因ともなってきました。
　歴代のローマ教皇は一貫して同性婚に厳しく反対してきましたが、フランシスコ教皇は2013年に就任した直後、同性愛の聖職者についてどう考えるかを聞かれて「誰かがゲイで、そして彼が神を求めているのであれば、それは私がどうこう言うべきことではありません」と答え、2014年には同性愛者を受け容れるべきだとの見解を公に示しました。2018年には、信者は子どもが性的マイノリティだからといってそれを理由に絶縁することは許されず、愛する家族の中にとどめなくてはならないと強調しました。
　2020年10月には「同性愛者は神の子であり、家族を持つ権利を持っている」として、シビルユニオンの制定によって保護されるべきだと語っています（詳細はこちら）。同性カップルの権利の法的保障を支持したのはフランシスコ教皇が初めてで、歴史的な出来事です。しかし、教会内部では反発の声も強く、教皇庁は半年後、カトリック教会は同性婚を祝福することはできないとの公式見解を示しています。教義および道徳の保持と促進を担う教理省は、神が“罪”を祝福することは不可能だと説明しました（この「祝福」は、司祭が同性カップルに祝福を与えるということで、したがって、今回の宣言は、2021年の教皇庁の見解が大きく変わったと受け取れるものだと思われます）
　フランシスコ教皇はその後も、同性愛者の権利を擁護する発言を続け、LGBTQコミュニティへの支援的な姿勢を示してきました。今年2月には南スーダンで、同性間の性行為を犯罪とする法律を宗教・道徳上の罪であり「不正義」だとして非難しました。また“同性愛の傾向”がある人も神の子であり、教会に歓迎されるべきだと述べました。
　今年8月には、女性の司祭叙階や同性愛者の婚姻といった秘跡が認められていない状況について、教会が一部の人に対して秘跡を受ける権利を否定するのは矛盾ではないかとある記者が指摘したことを受けて、「教会は全ての人に開かれているが、教会の中での生活を監督する法律が存在する。それによると（同性愛者は）一部の秘跡を受けることができない。締め出すのではなく、各自がそれぞれの方法を通じ教会の中で神と対面するのだ」と述べ、教会がLGBTQコミュニティを含め全ての人に対して開かれている（排除されない）と宣言しました。また、教会法は同性間の婚姻や同性愛者カップルへの祝福を許していないものの、同性カップルの年金や健康保険受給、遺産相続などの権利を認める民法は支持するという教皇自身の立場を明確にしています。
　そして10月には、「祝福を求められた時、それは神に助けを求める嘆願、よりよく生きるための嘆願を表す」「個人や複数人に祝福を求められた場合、誤った結婚の概念を伝えないかたちでどのような祝福が可能か、司祭は慎重かつ適切に見極めなくてはならない」「教会法がすべての事柄を対象にすべきではないし、そうすることもできない」（祝福の要請はケース・バイ・ケースで考慮されるべきだ）として、同性カップルを祝福することに前向きな姿勢を示していました。また、教会は常に「優しさと忍耐、思いやりと温かさと励まし」の気持ちをもって人と接するべきだとも述べていました。
　
　韓国の中央日報は今回の司祭が同性カップルに祝福を与えることの承認を「破格の決定」だとし、「こうした変化はローマ教皇フランシスコだから可能だったと評価される」と評しています。
　また、LGBTQコミュニティをケアしている米イエズス会のジェームズ・マーティン神父は「カトリック教会の司牧活動に重要な進展。神が愛する関係に存在することを願う多くの同性カップル信者の深い希望を認めたもの」とXでコメントしたそうです。
　
　
　なお、英国では今年2月、英国教会※の幹部による投票によって、同性カップルへの祝福の祈りを認めることになりました。
これにより、同性カップルは法的な結婚式の後、英国教会の教会に行き、奉納、感謝、神の祝福の祈りを含む礼拝を受けることができるようになるそうです。

※16世紀にローマ教会（カトリック）から独立し、信仰や教会の制度、礼拝の伝統においてはローマ・カトリック的なものを多く引き継ぎながら、英国の自律した教会となりました。英国聖公会（アングリカン・チャーチ）とも言います


　
参考記事：
ローマ教皇、同性カップルへの祝福認めると宣言（BBC）
https://www.bbc.com/japanese/67757415
「同性カップル祝福」承認…慣習破った教皇フランシスコの破格の歩み（中央日報日本語版）
https://japanese.joins.com/JArticle/312856

ローマ教皇「教会は全ての人にオープン」、同性愛など巡り規則も（ロイター）
https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2ZI030/

ローマ教皇、同性カップルへの祝福を容認する発言（BBC）
https://www.bbc.com/japanese/66991524

ローマ教皇、同性愛禁止する法律を非難　英国国教会の指導者らも教皇を支持（BBC）
https://www.bbc.com/japanese/64533906