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アフリカから逃れてきた男性が難民認定を求めています

 同性との交際が禁止されている北アフリカの出身国で迫害を受けたとして、日本政府による難民不認定処分の取消しなどを求めて提訴している30代男性の本人尋問が11月30日、大阪地裁(徳地淳裁判長)であり、男性は「人として生きる機会、生をまっとうするチャンスをいただきたい」と述べました。
 男性の代理人弁護士によると、男性の出身国はイスラム教国で、刑法で同性愛が禁じられ、逮捕者も出ています。法廷で男性は、同性との交際を知った家族によって監禁されたり車でひかれそうになったりしたと証言し、当局から拘束する可能性を伝えられたとも語りました。

 今年3月、大阪地裁はウガンダから日本に逃れてきたレズビアンの30代女性を難民と認定し(詳細はこちら)、出入国在留管理庁(入管庁)は難民認定手続きの透明化を目的とし、認定の判断のポイントを整理したガイドライン「難民該当性判断の手引」のなかで難民条約上の「迫害」について、LGBTQ(性的マイノリティ)やジェンダーに関連した迫害も難民に該当しうると明記しています。
 しかし、こちらの記事で明らかにされたように、入管庁による難民認定を再審査する難民審査参与員制度で、口頭意見陳述が認められず、書類だけで大量に審査している、臨時班に配分されベルトコンベヤー式の流れ作業で結論が下されたり、職員の恣意的判断が働きやすい現状があり、上記のウガンダから日本に逃れてきたレズビアン女性も、一度は「信ぴょう性がない」として不認定処分を受け、裁判を起こしたのです。参与員経験の長い明治学院大の阿部浩己教授は「入管庁は国境の門番としての意識が強く、難民保護の観点が乏しい。専門的訓練を受けた人から成る第三者機関が担う体制を整備しない限り適正に難民保護できない」と語っています。
 この北アフリカ出身の男性も同様の流れで不認定とされたのではないでしょうか。裁判で適正な判断がなされ、「人として生きる機会」を与えられることが望まれます。
 
 
 アフリカでは30ヵ国以上で同性間の性行為が違法とされており、同性愛者に対する摘発、迫害が相次いでいます。
 ウガンダでは今年5月、同性間の性行為を繰り返した人に対して死刑を科し、ただ同性愛者だと自認しただけでも“犯罪者”とされてしまう世界最悪の「反同性愛法」が成立し、国際社会から人権侵害だとして非難を浴びていました。8月にはこの法律の初めての適用となる事例として20歳の男性が訴追され、死刑にされる懸念が生まれています。
 また、ナイジェリアでも8月、同性結婚式に参加した約200人が逮捕されました。ナイジェリアでは2014年、同性カップルによる公の場での愛情表現を犯罪とみなし、同性間の結婚や事実婚に対して最高で禁錮14年を科す同性婚禁止法(別名「ゲイを投獄する法」)が成立しています(詳細はこちら)。近年で最大規模となるLGBTQの一斉逮捕事件を受けて人権団体アムネスティ・インターナショナル・ナイジェリアは「逮捕され、見せ物にされた拘束者を釈放し、この魔女狩りをただちにやめるよう」州警察に求めました。また、「汚職が横行する社会では、同性愛を禁じる法律が法執行者らによる嫌がらせや恐喝、脅迫にますます利用されるようになっている。これは容認できない」とも批判しました。
 
 
 「グローバルファンド」で政治・市民社会アドボカシー部長を務めるリンダ・マフさんは、ウガンダなどの同性愛者迫害を批判し、同性愛者差別や偏見が世界のエイズ対策にも悪影響を及ぼすと訴えています。
 ゲイの息子を持つ母親でもあるマフさんはまず、反同性愛法が「国中の多くの同性愛者の権利を侵害するもの」だとして深い失望を表明し、「反同性愛権利運動の高まりは、LGBTQI+コミュニティに対する暴力を扇動し、彼らの安全と尊厳を脅かすことにつながります」と語りました。そして、その影響はウガンダにとどまらず、偏見や差別に直面したり性的指向を理由に起訴されたりすることで、HIV検査や予防、治療サービスを受ける可能性が低くなる、と指摘しました。「HIVとの闘いにおけるある地域での後退は、世界のあらゆる場所での後退を意味します」
 マフさんは「世界各地で反同性愛法は、攻撃や処罰を恐れ、疎外されることへの懸念から、人々が重要な保健サービスへアクセスすることを妨げています。政府には人権とジェンダーの平等性を促進し、保護する責任があります」「私たち一人ひとりがあらゆる形態の差別に対して立ち上がり、人類を一つの家族として受けとめなければなりません」と語っています。(インタビューの詳細はこちら


 12月4日、ブリンケン米国務長官は、ウガンダとジンバブエ当局者に対するビザ制限の範囲を拡大すると発表しました。民主主義を阻害したり、国内で排除されている人々を抑圧したりした責任があると見なした人物も対象とします。
 制限対象の例として、ウガンダで5月に発効した世界で最も厳しいとされる「反同性愛法」に見られるLGBTQの排除政策や、ジンバブエにおける市民社会団体の排除などを挙げました。ブリンケン氏は「排除されたり、弱い立場に置かれた人々には、環境活動家、人権擁護者、ジャーナリスト、LGBTQ、市民社会団体などが含まれるが、それらに限定されるわけではない」と述べました。

 これを受けてウガンダ政府は6日、欧米諸国がアフリカに同性愛を受け入れるよう強要していると非難しました。
 ウガンダのヘンリー・オリエム・オケロ外務副大臣は「米国と欧州の一部の国々がアフリカ、特にウガンダに対して援助や融資と引き換えに、同性愛を受け入れるよう強要する間違った試みを行なっている」「議会と大統領の指示に従うまでで、援助がなくともわが国の開発計画は変わらない」「渡航や貿易関係について条件を課すことなく、わが国の開発課題を尊重してくれる国際パートナーや国は他にもある」と強気の発言をしています。
 米国のバイデン大統領やEU、国連のグテーレス事務総長なども反同性愛法を非難し、即時撤廃を求めたり、世界銀行も新たな措置が取られるまでウガンダへの新規融資をしない方針をとりましたが、こうした国際社会からの制裁を受けながらも、国内では「反同性愛法」は揺るぎない支持を得ています。その背景として、米『ワシントン・ポスト』紙(電子版)は、同法の施行をめぐって米キリスト教保守派が多額の資金を援助するウガンダの教会を通じ、同性愛や人工妊娠中絶反対の「思想の刷込み」を行なっていたと報じています。


 古今東西、同性愛者は一定の割合で存在してきたし(異性を愛する人も同性を愛する人も両性を愛する人も存在するのが自然の摂理であり)、それは趣味嗜好ではなく、本人の意志では変えられない性的な指向であって、ゲイであるバイセクシュアルであるということはアイデンティティであり、これを否認したり、愛し合う行為や表現する行為を違法とすることは人権侵害です。今年のG7首脳声明では「LGBTQIA+や女性の人権と基本的自由を損なう暴力を強く非難する」「全ての人々が性自認や性表現、性的指向に関係なく暴力や差別のない生活を享受できる社会を実現する」と謳われているわけですから、議長国である日本もこの声明にのっとり、国際社会のリーダーとしての役割を発揮し、アフリカでの同性愛者の迫害を食い止め、そのような国から逃れてきた当事者の方を保護していただきたいですね。
 


参考記事:
難民不認定の同性愛者証言(共同通信)
https://www.47news.jp/10202813p2.html

(with Planet)「反同性愛法」、脅かされる安全と健康(朝日新聞)
https://www.asahi.com/withplanet/article/15041723
「差別や偏見、世界のエイズ対策に影響」 “反同性愛法”の問題点は(朝日新聞)
https://www.asahi.com/withplanet/article/15041723

同性愛で死刑も…アフリカ30か国以上で犯罪、米キリスト教保守派の「思想の刷り込み」指摘も(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230901-OYT1T50174/
同性結婚式の参列者200人超を逮捕 ナイジェリア(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35208416.html

米がビザ制限拡大、ウガンダやジンバブエで民主主義阻む当局者ら(ロイター)
https://jp.reuters.com/world/us/TDWHA72W3ZPT5ITCZ5IXAP4XRA-2023-12-05/
欧米、アフリカに同性愛受け入れ「強要」 ウガンダ(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3495002

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