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　最高裁大法廷は10月25日、戸籍上の性別を変更する際に現行法で生殖能力がないことを必須としている規定（不妊化要件）について、違憲であるとする初めての判断を示しました。裁判官15人、全員一致でした。国は性同一性障害特例法の要件の見直しを迫られます。これまで身体的、経済的な負担から性別適合手術を断念せざるをえず、法的性別変更ができなかった、あるいは法的性別変更のために望まない不妊手術を受けざるをえなかったという人権侵害が解消される道筋ができました（本当によかった！）

　この裁判は、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更するのに生殖能力をなくすとしている性同一性障害特例法の規定が憲法違反かどうかを争う家事審判の特別抗告審です。申立人の方は、性別適合手術を受けていませんが、長年のホルモン治療で生殖能力が減退し、生殖の可能性は極めて低いため、要件を満たすと主張していますが、一審の家裁は、生殖不能要件を満たしていないとして性別変更を認めず、不服を申し立てた高裁支部も同様に判断したため、申立人が最高裁に特別抗告したものです。
　先月末、法的性別変更の不妊化要件の撤廃を求める申立についての最高裁大法廷での審理が行なわれ、その際、家事審判としては初めて審問も行なわれたため、大法廷が2019年の「現時点では合憲」という判断を覆すのではないかと見られていました。 　

　最高裁大法廷は不妊化要件について、「『自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由』 を制約するもの」だとして、戸籍性の変更を求める当事者に対して「意思に反して生殖機能をなくす手術を受けるか、性別変更をすることを断念するかという過酷な二者択一を迫るものになっている」と指摘し、憲法に違反し無効だとの判断を示しました。最高裁が4年前に「現時点では合憲」との判断を示したときからの社会の状況の変化については、「性同一性障害を有する者に関する理解が広まりつつあり、環境整備に向けた取組みなども様々な領域で行なわれており、社会全体にとって予期せぬ急激な変化に当たるとまでは言い難い」と指摘しました。

　なお、今回の判断は、5つの要件のうち4つめの不妊化要件についての判断で、5つめの外観要件（変更する性別の性器に似た外観を備えていること）については高裁で審理が尽くされていないとして、最高裁は審理を高裁に差し戻しました。申立人はトランス女性であるため（トランス女性の場合、外観要件を満たすためには性別適合手術を受ける必要があるため）、申立人の性別変更を認めるかどうかは今後、高裁で判断されます。高裁での適切な判決が待たれます。　

　今月12日には、性別適合手術を受けなくても戸籍の性別を変更できるよう求めたトランス男性の申立てについて静岡家裁が「憲法違反で無効」だと判断し、申立人の性別変更を認めていました。
　
　この後、判決の詳細や、原告の方や弁護団などのコメントなどが報じられると思います。
　のちほど続報をお伝えします。



参考記事：
【速報】生殖能力なくす手術必要な規定は「違憲」最高裁大法廷　戸籍の性別変更要件めぐり　戸籍の性別変更希望するトランスジェンダーの人たちに新たな選択肢（TBS）
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/797792?display=1
【速報】性別変更に“生殖機能なくす要件”最高裁が「違憲」の初判断（日テレ）
https://news.ntv.co.jp/category/society/c8269ae6adae4ba59a70dd9df4465b26
【速報】性別変更の手術要件は「違憲」　性同一性障害の特例法巡り最高裁大法廷が初判断（テレ朝）
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000321402.html

性別変更に手術必要とする規定は「違憲」　最高裁決定（日経新聞）
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE17D8I0X11C23A0000000/
トランスジェンダー性別変更、生殖不能の手術要件は「違憲」　最高裁（朝日新聞）
https://digital.asahi.com/articles/ASRBP7T8YRBNUTIL009.html
「性別変更の条件に生殖不能手術」特例法は違憲　最高裁決定（毎日新聞）
https://mainichi.jp/articles/20231025/k00/00m/040/129000
性別変更の「手術要件」は違憲　 最高裁が初判断　生殖能力なくす性同一性障害特例法の規定（東京新聞）
https://www.tokyo-np.co.jp/article/285891