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【同性パートナーシップ証明制度】鳥取・島根両県、岩手県宮古市、和歌山県新宮市で制度の運用がスタートしました
「パートナーシップ宣誓制度」や「ファミリーシップ宣誓制度」が導入された自治体や、制度導入に向けた各地の動きをまとめました。今回は南から順にお伝えします。
鳥取県では、10月1日に「とっとり安心ファミリーシップ制度」が導入されました。性的マイノリティのカップルのパートナーシップだけでなく、その子どや親の関係も証明し、家族に準じて行政サービスを受けられるようになる制度です。認定されると、県営住宅への入居や、県立病院で病状や治療方針の説明を受けることが可能になるほか、障害者と同居している場合、自動車税の減免なども受けられるということです。パートナーが同性である県職員の慶長休暇や手当の支給なども認められます。
プライバシーに配慮するため、当事者が窓口を訪れなくても郵送や電子申請で県に届け出るだけで手続きできます。
県人権・同和対策課は「制度を設けることで、性的マイノリティーのカップルとその家族が行政サービスを利用しやすくなるメリットが生まれる」と話しています。
なお、制度スタートを前に9月29日、「とっとり安心ファミリーシップ制度支援窓口」が県庁に設置されました。平井知事は、「安心して地域社会で暮らせるように、鳥取県らしくみんなで支えあっていけるように、県や市町村が一体となって、この取り組みを前に進めていきたい」と語りました。
今回、県として制度が導入されたのに合わせ、県内の全19市町村が同制度への連携を決めたそうで(素晴らしい)、連携する市町村の提供する行政サービス(市営住宅への入居など)も受けることができます。ただし、対応準備中の町村もあり、4市と日南、伯耆、江府の3町は10月1日からですが、その他の12町村は適用対象の精査など態勢を整え次第、始めるそうです。
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お隣の島根県でも10月1日から「パートナーシップ宣誓制度」が始まりました。県内の公営住宅に入居できるようになるほか、公立病院での手術の同意などが可能となります。
鳥取県と並び、都道府県単位での導入は全国で15例目、中国地方では初めてです。
県は、制度導入に合わせ、同性パートナーを持つ県職員にも扶養手当を給付することを決定し、9月29日に通知を出しました。同性カップルの一方が職員で、市町村や民生委員など第三者による証明があれば、婚姻関係と同様と認められるそうです。
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和歌山県新宮市でも、10月から「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」がスタートしました。県内では那智勝浦町でもファミリーシップ制度が認められており、10月からは橋本市でも導入されます。
性的指向や性自認にかかわらず(したがって、事実婚のカップルも利用できます)、パートナーシップ宣誓(また、子や親などのファミリーシップ宣誓)を行ない、受領証(証明書)を交付されたカップルは、市営住宅に家族として入居できるようになるほか、市立病院で面会する際などに家族と同様の扱いが受けられるようになるほか、住民票の続柄を「縁故者」と記載することが認められます。それ以外の行政サービスについても今後増える可能性があります。
10月以降、市役所で制度の概要を詳しく解説したガイドブックや申請書などを配布するほか、市の公式サイトからもダウンロードできます。
新宮市人権政策課の上西侑里香主任は、「みなさまが自分らしく安心して暮らせるよう、市が応援していきたい」と話しています。
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千葉市は2日、市パートナーシップ宣誓制度の宣誓者が災害などで死亡した場合、法律婚の夫婦と同様、残されたパートナーに給付金を支給する方針を示しました。実施時期や支給額などは今後検討するそうです。
同性パートナーへの災害弔慰金の支給は、東京都世田谷区が2022年4月に初めて実現しました。
(なお、千葉市は全国で初めて、事実婚の異性カップルにも「パートナーシップ宣誓制度」を適用した自治体です)
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東京都江東区では来年4月から同性パートナーシップ証明制度が導入される予定ですが、9月議会で高野はやと議員(江東新時代の会/立憲民主党)が3点、質問を行ない、東京都で初めて、事実婚まで対象としたファミリーシップ制度の導入が検討されていることが明らかになりました。
1) 東京都ですでに導入されている「都パートナーシップ宣誓制度」との違いについて、申請方法、証明書発行後のサービス利用など、区の制度が条例なのか要綱なのかも含め、現在の検討状況を教えてください。
区の回答:「本区では、対象となるパートナーのお二人に申請場所で自書による宣誓書の提出を予定」「行政サービスの利用のほか、病院、住居の賃貸契約等において利便性の向上を目指している」「制度導入時に本区の証明書等を都の事業等において活用できるよう、都と協定について協議していく」「制度の根拠規定については、本区の条例を根拠規定にする制度設計を進めている」
2) 異性の事実婚カップルへの制度の適用を考えているか。
区の回答:「本区の制度は、「同性パートナーに限定しない制度であり、性別等にかかわらず、LGBT等のパートナーの二人や現行法下では婚姻していない事実婚のパートナーの二人」を対象として支援する制度を検討している」
3) 「こどもまんなか江東区」のパートナーシップ制度、ファミリーシップ制度について。同性カップルや事実婚カップルも子どもを育てているが、共同親権が認められない、これから多様な社会へ対応していくなかで、血縁関係はないが、家族の絆で結ばれた人たちを家族として認めるべきと考えます。
区の回答:「本区では、子や親を含め、家族として証明するファミリーシップ宣誓制度を提案している。単に子の氏名を記載するだけでなく、パートナーのお二人とその子を家族として宣誓したことを区が証明する制度である」「婚姻に類似した関係にあるパートナーの二人の方を中心に、暮しやすい環境づくりを目指すための制度であり、血縁関係はないが、家族の絆で結ばれた人たちを家族として認めることについては、区民の皆様のご意見を伺いながら、課題や問題点を整理していく」「なお、現在審議会で検討されている事実婚まで対象としたファミリーシップ制度が実現した場合は、東京都で初めての制度となる」
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福島県いわき市の高校生らが2日、パートナーシップ制度の導入などを求める署名を市に提出しました。いわき市の高校生が中心となって作った団体は、性別に関係なく、暮らしやすい社会の実現などを目指して活動しています。
いわき市に対し、同性パートナーシップ証明制度の導入などを求め、約5000人分の署名を提出しました。団体の代表を務める割谷洋恵さんは「関心を持ってくれてる方が多いので、もっとさらにその関心の輪を広げていければなって思いました」と語りました。
ほかにも、市内全ての高校で、性別にとらわれずにスカートやスラックスなどを選べる制服選択制の導入も求めました。「着たくない制服を着ることはすごく心が苦しい思いをされている方が多いので、制服も自由に選択的にすることによって、いわき市で生きやすくできるのではないかと思って制服に着目しました」
署名を受け取った下山田副市長は「理解促進も含めて一生懸命取り組んでいきたい」と答えました。
福島県で初めて、伊達市で来年1月から制度導入が予定されており、福島市でも制度導入に向けて検討がなされているなか、福島民友新聞が9月27日、「パートナーシップ/制度創設がゴールではない」とする社説を掲載しました。
福島大の前川直哉准教授(社会学)の「LGBTに限らず、若者は多様性の尊重を大切にする傾向がある」「導入が進んでいない福島県は、LGBTをはじめとする多様な生き方に不寛容というメッセージを発していることになる。人口流出などにもつながる問題だ」とのコメントを紹介しながら、「本県も導入を視野に入れるべきだ」「課題となるのは、どう民間への広がりを持たせていくかだ。例えば、パートナーやその子どもが病気となるなどした場合、その看護などのための休暇を認めるかどうかは勤務先の規定や判断による。広域的な制度がない現在の状況では、制度のない自治体に住む従業員との公平性の確保などの問題が生じる可能性がある」「行政が権利を認めるだけではなく、事業所や住民にもLGBTへの理解や配慮を求める取り組みが不可欠だ」と述べています。
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仙台市の制度導入への動きについて、河北新報で詳しい記事が出ました。
同紙によると、郡和子市長は2017年の就任時から実現の可能性を模索してきましたが、表明まで6年を要しました。その最大の理由は、市長と市議会の立ち位置の違いだったとされています(詳細は記事をご覧ください)。6月にLGBT理解増進法が成立して「真っ向から反対できない状況になった」ことや、若い世代を中心にLGBTQの権利擁護への理解が進んだことも背景に、今夏の市議選が終わったあと、9月議会で制度創設の表明をすることにしていたそうです。
10月に開催予定の市男女共同参画推進審議会で検討が本格化します。市議会で市長に繰り返し創設を迫った樋口典子氏(立憲民主党仙台)は「親や子を含めた家族関係を証明するファミリーシップ制度など、できるだけ多くの人を対象にする制度が求められる」と訴えています。
地元の当事者の声も紹介されています。市内の会社員・森脇礼奈さんは「やっとか、って。仙台で制度ができるのを待っていた」と、パートナーの女性も「仙台では難しいのかと思っていたけれど、ついにという感じ」「公的に関係が認められれば、家族や親類に本気度がより伝わる」と語りました。県内沿岸部で同性パートナーと暮らす自営業の女性は、災害や病気などの際に互いが「家族」とみなされない不安を抱えてきたといい、「仙台が動けば他の市町村が取り組みやすくなる」「当事者の声を聞き、早急に、丁寧に、多様な家族の形をカバーする心の通った制度を作ってほしい」と語りました。県南に住むゲイの団体職員・吉田純さん(仮名)も「田舎にも隠して生きる当事者はたくさんいる。少数者に光を当てる制度があるだけで、少し生きやすくなる人もいる」と語り、制度の広がりを求めました。また、9月24日に仙台で「セクシュアルマイノリティと子育て・家族・結婚」をテーマに講演を行なった「にじいろかぞく」共同代表の小野春さんは、「制度に相続や共同親権などの法的効力はなく十分ではないが、社会的認知の部分を少し手当てする。病気など何かあった時の生活を支える安全ネットみたいなものだ」と語りました。
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岩手県宮古市は9月28日、「宮古市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を開始しました。現在の婚姻制度を利用できない人や利用が容易でない人の生活上の困難、生きづらさの軽減を図り、多様性を認め合う社会の実現を目指します。
岩手県では、一関市、盛岡市に次ぐ3例目の制度導入となります。
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北海道小樽市は来年1月に導入する「市パートナーシップ宣誓制度」案をまとめ、9月21日の市議会厚生委で報告しました。今後、市民向けのパブリックコメント(意見公募)や市男女共同参画推進市民会議などでの協議を経て、12月中旬までに導入のための要綱を策定するそうです。
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「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」によると、10月1日現在で導入自治体数は350、導入自治体の人口の合計は95,135,937人(2023年1月1日時点の住民基本台帳による)で、日本の総人口に対する導入自治体の人口カバー率は75.9%に達しました。
これだけの自治体が、戸籍上同性であるカップルのパートナーシップも婚姻相当であると認め、証明書を発行する制度を導入しているわけですから、(また、司法も同性婚法の議論を国会に求めているわけですから)国も早く同性婚法の議論を始めていただきたいですね。ちなみに「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」は今年3月、婚姻平等を実現するための民法改正案を発表しています。
参考記事:
鳥取県「とっとり安心ファミリーシップ制度」10月から導入(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tottori/20230926/4040016184.html
同性カップルへの行政サービス対象拡大へ 新制度スタート前に専門相談窓口を開設(山陰中央テレビ)
https://www.fnn.jp/articles/-/593830
同性パートナーに扶養手当 島根県、職員婚姻関係で(共同通信)
https://nordot.app/1080431265886307269?c=768367547562557440
<LGBTQカップル証明制度>県、全市町村と連携へ(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/tottori/news/20230929-OYTNT50085/
県庁に支援窓口の看板設置 とっとり安心ファミリーシップ制度(日本海新聞)
https://www.nnn.co.jp/articles/-/148586
島根・鳥取両県がパートナーシップ宣誓制度導入(中国新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/367876
新宮市 パートナーシップ制度など2つの制度10月から導入へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/wakayama/20230927/2040015913.html
新宮市、公的に家族と証明 性的少数者らに「宣誓書」 来月1日から(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230928/ddl/k30/040/252000c
「パートナー」死亡時に給付金 宣誓者、法律婚と同じ扱いへ 千葉市(千葉日報)
https://www.chibanippo.co.jp/news/politics/1113401
高校生がパートナーシップ制度の導入など求める(KFB福島放送)
https://www.kfb.co.jp/news/fukushima/index.php?id=202310038073
高校生など「パートナーシップ制度」導入求め署名提出「制服選択制」も要望 福島・いわき市(テレビユー福島)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/755866
【9月27日付社説】パートナーシップ/制度創設がゴールではない(福島民友新聞)
https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20230927-808110.php
仙台市がパートナーシップ制度創設へ LGBT法成立が追い風に(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20230930khn000012.html
宮古市でパートナーシップ制度始まる 岩手で3例目(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20230928khn000037.html
小樽市がパートナーシップ制度案 18歳以上対象、宣誓者にカード(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/912772/